TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第九話:カタストロフ - Pandora’s box opens - ― 2013/03/09
わあああああああああああああああ―――っっっ!!!
兵部うううううう―――ッッ!!!
・・・今週はこれだけで終わろうと思ってたんですが、それでは私しか楽しくない気がするので解説もやります(笑)。原作者号泣回です。今回もまた素晴らしい出来ですね。
原作といってもスピンオフ作品なので、実際には私は「原案・協力」に近い。かなり無責任に作業の外にいつつ、砂かぶり席からアニメファンの一人として、たいへん贅沢な形で作品を楽しませてもらってます。お客さんとして無邪気に号泣できるってことは、作家として背負った責任や関わった分量が少ないってことでして、ちゃんと「中の人」をやってたらそういうことはできないのですよ。
監督やスタッフさんたちが作品に費やしているエネルギーを見てると、OPで最初にどーんと名前が出ちゃうのは申し訳ないレベル。関われたことがめちゃめちゃ嬉しいし、この作品の素材に選んでもらえたことを大変誇らしく思ってます。
さて、構成がタイトなので、シナリオ会議ではキャラの動きや位置関係にはずいぶんみんなで悩んだと記憶してますが、まあこのシリーズでは割と毎回そんな感じ。最終的には兵頭さんが、見事なバランスの脚本に仕上げてくださいました。
超能力犯罪組織パンドラってのは、<家出した子供たちが作った、自分たちの王国>です。そこに大人が乗り込んできて、全てを取り上げる・・・子供たちの全能感が幼い幻であったことが明らかになってしまう。
つまり今回描かれているのは「空き地に作った秘密基地を工事のブルドーザーが粉砕し、みんなで持ち寄った宝物が泥に散乱する」とか、「駆け落ちしようとした子供が見つかって、二人での生活を夢見て買ったままごとのような生活道具を蹴飛ばされて連れ戻される」とか、「コミケに役人と警察が乗り込んで来て本を片っ端から押収し、『健全ジャンルには手を出さないって約束だったじゃないですか!!』『それは君の決めることではない』つって警棒で殴る」とか、そういうことですね。
沈むカタストロフィ号や海底に消える女王の玉座は何度見ても泣けます。子供たちが見ていた夢の輝きと、そのはかなさが愛おしくて哀しくてたまらんのです。
心が折れてただの子供に戻りそうになりながらも、敵わない敵に最後まで挑み、届かない夢に手を伸ばしながら力尽きる兵部ってのがもうね。
「これが・・・僕らの・・・力だああッ!!」って叫び声に込められた、大人によって輝きを奪われた仲間たちへの思いにも泣けますし、その渾身の一撃が強力で美しくあればあるほど、<しょせん兵部も子供であり、大人たちの体制には力及ばない>という切なさが伝わります。永遠の少年でいることに我々は憧れますが、それは痛々しく、哀しいことでもあるのです。
真木が兵部を叱咤するシーンでは喉の奥から「ぐふううっ!!」って嗚咽が出たし、桃太郎が倒れるシーンでは「くぎゅううっ!!」って声が(そっちはいい)。トドメにあのED。歌っているのは兵部とヒノミヤ、あのアレンジ。歌詞を思い出すとまた泣けてきます。
この回のアフレコには立ち会ってませんが、スケジュールの都合で遊佐さんは時間をずらしての別録りだったとうかがってます。その話を聞いたとき、私はなんかこう、心に来るものがありました。座長の遊佐さんを中心にして組んでいるスケジュールがこの回に限ってそういうことになったのは、偶然ではなく兵部がそう望んだんじゃないかなって気がしたのですよ。あいつはこのエピソードは遊佐さんと二人きりでやりたかったんじゃないでしょうか。
そしてスタジオでたった一人マイクの前に立ち、気持ちを込めて今回の台詞を吹き込んでいる遊佐さんを思い浮かべると、私はそれだけでご飯三杯行けます。遊佐クラスタのみなさんはいかがでしょうね。
あとパティ、ついに喋りましたね(笑)。シナリオ会議ではこれまでみんなして「うーんセリフは削ろう」つってたパティ、この回は突然「ここだ! ここでは喋る!! 事務所にお願いして小林さんお呼びして!!」という空気に。これもパティの意思を感じるなあ。「もう我慢できないから喋らせて! 『デュフフ』とか言わないから!!」みたいな。作り手が愛情を込めてやっていると、キャラが魂を持ったのではないかと思えることは往々にしてあります。
そういえばテレビ東京で放送したとき、裏番組は『タイタニック』後編でした。それも偶然にしてはできすぎているので、これは伊・八号の仕業でしょうか。
というわけで、兵部・ヒノミヤ・ユウギリの安否、そしてカタストロフィ号を失った『UNLIMITED』の航海が向かう先は・・・・・次回をお待ちください!