花も嵐も:サンデーS 2023/7月号2023/05/26




 今回までが単行本第5巻収録分です。ここを折り返し地点にして物語前半にひと区切りつけたかったのですが、回収しきれなくて1話ぶんこぼれちゃった。


 冒頭のもろはととわの痴話喧嘩は父親兄弟の裏返し。「や、やさしく横抱きなんかするんじゃねえ!!」ってのは犬夜叉もちょっと思ったろうなと(笑)。あの兄弟の娘たちが仲良くキャッキャしてるとこを描くのは超楽しい。


 魔夜中のエピソードをメインクエストに直結した構成は気に入ってます。「豊穣の加護」はアニメの「五穀の恵み」からのアレンジですね。夜叉姫を祝福して都に花吹雪が舞い散る演出は頭で考えていたよりもロマンチックで、昏睡状態だった犬夜叉たちに変化をもたらすきっかけとしてイイ感じになったかなと。


 おはるさんは魔夜中改め真昼間の神々しさの一部として演出するために、十二単の女房姿に。原作で村長の娘だったのが、都の貴族に出世です。「身分の高いお姫さまだったのが、神様と恋をして死んで闇堕ちしてセクシー忍者装束で鬼の面かぶって妖怪を使役」・・・設定盛り過ぎでしょうか(笑)。

 街に放火したんだから死者やけが人が出てるかもで、でも自分たちの恋路をこじらせて他人を死なせちゃうのはさすがにバカップルが過ぎるんで、花吹雪で鎮火して火傷治療もしちゃうということに。犠牲者は奇跡的にいなかったのです、たぶん。


 実はネーム段階では「謎の巨大な妖怪犬が、火事の中から子供を救う」というシーンを描いてて、でもこれは高橋先生から「娘たちの仕事を待つ間の暇つぶしであっても、殺生丸にはそこまでの慈悲はないです」ってNGをいただきました。私は「りんを愛したことで、気まぐれに救うことがちょくちょくあるくらいには、人間にも多少の慈悲を抱くようになったのではないか」と考えてたんですが、そんなに甘くないようです。なんだかんだ言っても子供は助けちゃう絶チルの兵部京介と違って、誇り高い妖怪・殺生丸さまのダークヒーローっぷりは筋金入り。相変わらず人間など虫けらとしか思っていないのに、りんと娘たちだけは全力で愛して守ってる美形の大妖怪・・・なにそれエモすぎです高橋先生、ヤバい。ただまあ私としてはそれ以来、京都市西京区には今も殺生丸さまを犬神として祭っている場所がある」っていうもっともらしい嘘をつけなかったのがちょっと残念です(笑)。


 その犬形態殺生丸さまからの連想で(そういや是露さまは怪物形態がなくて、見た目でパッと妖怪とわかる場面はなかったような・・)と思いつき、蜘蛛の巣はあのようにアレンジ。手足を糸に変えただけなんですけど、デザインを壊さずにうまく妖怪感が出たように思います。


 ラストは犬夜叉が登場してヒキ。「朔」からここまでの流れはだいぶオリジナルに見えますけど、いちおうアニメの物語と構造的には相似させてます。あくまでも大きな流れはアニメ原作準拠、同じ山の同じ沢を登ってるんだけど、ルート取りをちょっといじってる・・という感じ。


 そんなこんなで次号、コミカライズ版『半妖の夜叉姫』前半クライマックスです、お楽しみに!

 

 

親の因果が:サンデーS 2023/6月号2023/04/26



高橋留美子先生、フランス芸術勲章シュヴァリエ受勲おめでとうございます! 「シュヴァリエ」って騎士のことらしいので、私も「騎士の従者」となったと言えます。サンチョ・パンサ的な・・・『ドン・キホーテ』はスペインの話ですが。今後の打ち合わせでは「卿の意見を聞こう」「御意。AにはAに、BにはBに向いた任務がございます。このオーベルシュタインにお任せください閣下」的な・・・銀英伝の帝国は宇宙なんちゃってドイツですが。



 さて、先月犬夜叉と殺生丸のお姫様抱っこを描いた時には、次はその娘たちのお姫様抱っこを描くことになるとは思ってませんでした。二世代でやることで家族のつながりを強調できたので、いい仕事したと思うんですけど・・・今回のエピソード、描きながらあちこちで「なんかめっちゃ絶チル風だな」と思いました。私が描いてるんで手クセでそれっぽくなるのはまあしょうがない。そもそも開始段階で私は(とわちゃんはおそらく、犬の大将・殺生丸から王の資質を受け継いだ<女王の雛>なのだ)と解釈してて、すでにだいぶ『戦国可憐チルドレン』です。いっそもう琥珀あたりが「夜叉姫、解禁!」って叫ぶ感じのアレンジもアリだったか(ナシだろう)。


 アニメ原作では「人間とあやかしのすれ違い」「住む世界が違うことの悲劇」が繰り返し描かれます。魔夜中・お華(はる)のエピソードはそのひとつで、殺生丸夫妻と対比させるという脚本の意図は明確ですね。魔夜中夫妻をカットするなり設定をもっと大幅に変更するなりという手もあるものの、異種婚姻譚のバリエーションとして必要だと考え、敵陣営に配置することでメインクエストに直結させたわけです。そこだけに絞った単独エピソードにした方がスッキリ描けるはずなんですが、詰め込んでいかないと完走するまで何十巻も必要になっちゃうし。おはるさんが実はもう死人だというくだりは、アニメ見たあとだとニヤリとしてもらえる・・・・気がしたんですけどどうかなあ。あ、あのなんかゴツくて半裸の息子さんはカットということで。ついでに七星の最期はぜんぜんアニメと違う流れなのに「ビーストモードのとわに袈裟斬りされたってとこだけは完全に原作通りなんだよねwww」って自分で笑ってたんですけど(笑)。


 ここ数回かなり『犬夜叉』を擦ってたんで、今回は冥加じいちゃん以外の親世代キャラは登場を控えました。『犬夜叉』に踏み込む部分はとわの妖力についての言及くらいでしょうか。実を言うと1話でとわの髪の赤いメッシュを「強敵と出会って覚醒したしるし」として演出しちゃって、あとでちょっと辻褄合わせに困ってて(;´∀`)。高橋先生によると「現代には妖怪は少ない」ということなので、「妖気」をファンタジーに出てくる「魔素」「マナ」に見立て、「現代は妖気が薄い世界なのだろう」とは考えてたんですけどね。でもとわちゃんは戦国で初めて黒髪・普通人モードになったし、犬夜叉は現代に来ても普通に活動してたよなと。で、なんとか理屈をでっちあげつつ、とわが現代で育ったことの意義も追加。「妖気を大量に呼吸して大量に消費してるから、半妖の肉体は周期的に休息が必要になる」「現代での生活が一種の高地トレーニングになってて、おかげで妖気・妖力のコントロールが鍛えられた」等は、ギリギリ納得できるかなーと。もうほんとギリギリですけど。あくまでもコミカライズ時空での設定ですけど。


 ちなみにコミカライズの冥加はかごめを敬称で呼びます。彼女は『夜叉姫』では犬夜叉と結婚して「主家の奥方」になったからです。いや『犬夜叉』ファンの担当に「これ間違いだと思うんで修正しますね」って言われて「ちがいますゥー!! ここはあえてですゥー!!」ってやりとりがあったんで(笑)。そういや某通販サイトのレビューに「神楽が消えるとき、琥珀は現場にいなかったはず」って書かれてるの見つけましたが・・・犬夜叉・かごめ・弥勒・珊瑚・琥珀はちゃんと駆けつけて最期の瞬間を遠巻きに見てますゥー!!(笑)

 まあ何度も言うようになるべく間違いはないように頑張ってますけど、しょせん私ごときが長年研究してきたファンに敵うわけないんで、こういうのはたぶんレアケース(笑)。


 



無茶しやがって・・ :サンデーS 2023/5月号2023/03/25


 2月は日数が少ないため、月刊連載だと影響が直撃します。確定申告もありますしね・・・。加えて今回はネームにものすごく時間がかかりました。大量の説明を一気にぶちこみつつ、漫画の一話として成立させるのに苦労した感じです。最終的には「ギリギリ漫画になったかなー」という感触で、高橋留美子先生の感想は「ちゃんと面白かったよ。よく捌きましたねえw」でした(笑)。わかってくれてる・・・もう一生ついていこうと思いましたね(笑)。


 もともと『半妖の夜叉姫』は、各キャラクターのバックストーリー・事件の背景が盛りだくさんな作品です。コミカライズではそれをまとめたり簡略化したりしてきましたが、漫画として構成するにはまだ情報量が多め。最終的には「悪いことはだいたい妖霊星が黒幕」「殺生丸は時間の乱流に巻き込まれている」「御母堂様も手伝ってくれてる」等でなんとか漫画で語りきれる情報量に抑え、そのアレンジに合わせる生活描写やキャラの関係性を盛り込んで形を整え、どうにか仕事は果たせたかなーと。
 殺生丸さまのタイムループはかなり大きいアレンジに見えるかもしれませんが、「バッドエンドを回避するためだった」とすれば、彼のミステリアスな行動にまとめてざっくり説明がつきます。戦国御伽草子の基本構造は異世界転移ものなんで、このギミックとの相性は良さげだし。あと私の描く殺生丸さまはやっぱ私のキャラになっちゃうわけで、読者にはそこんとこを「長いこと苦労してればまあ多少は変わるのもしょうがない」って納得していただきたい。1話を描きあげた直後あたりに高橋先生に打診して、特に問題なく許可してもらってました。

 犬の大将が『天下覇道の剣』で息子に語ったセリフ「お前に守るものはあるか?」、あれはまあ単純に考えれば「愛する者がいてこそ、男は強くなれる」的な話なんでしょうけど、コミカライズにあたってはさらに深堀りしてみました。結果「何をどう守りたいかによって、求める強さや力は変わる。オールマイティーな絶対の強さなどというものはない」という解釈はどうかなと。コミカライズのおやかた様が「強さはひとつではない」つってたのはそういう意味で、ひとつの強さを極めたからこそのアドバイス。単純に剣の勝負・妖力の勝負なら殺生丸さまはそう簡単に引けを取らないはずなんですが、「妖霊星によってこんがらかった所縁・縁・運命を解きほぐし、グッドエンドに到達する」という戦いにおいては、力づくだけではどうにもならず、ついに父の言葉の意味を理解して、娘たちの覚醒に運命を託す決断をした・・・・って構図。


「天真爛漫な若奥様りんちゃんと、クールな御母堂さまとの嫁姑関係」「御母堂さまとの関係が気まずくてドキドキするかごめちゃん」は描くのを楽しみにしてた描写です。御母堂さまは内心では十六夜さまのことを面白く思ってないはずですが、誇り高いので態度には出しません。犬夜叉はあんまりピンときてなくても、かごめちゃんはその辺りを察して胃がキリキリしちゃうという(笑)。

 新米ママのりんちゃんが夫の悪口を言う犬夜叉に反論するシーンは、例によってキャラのアドリブです。ふだんの生活・子育ての様子が垣間見える楽しい場面になって気に入ってるんですが、「殺生丸さまにおむつ替えなんか似合わないし、私がさせません!」というのは「なるほど・・・」と思いました(笑)。まあ昔の身分が高い人たちは子育ての実務はほとんど乳母や召使いに任せちゃうんですけどね。殺生丸さまはそのつもりで豪華な屋敷と使用人の無女を用意してて、でもりんちゃんがなんとなく「楓さまやもろはちゃんと一緒なのも賑やかで楽しいかも・・」って風なのを察してそのように。そしてフタを開けてみたら現代人のかごめちゃんのスタイルと価値観に(あれ? そういうものなのか・・?)みたいな。

「犬夜叉は殺生丸をかばって撃たれた」という顛末、本当は詳しいいきさつをもっと描写したかったのですが、今回はもうページがキツキツで入りませんでした。後ほど回想という形でまた改めてやれるといいな。ループの初期には「なぜこいつは危険を冒して私をかばうようなマネをする?」ってなったはずなんですよ、たぶん。「手を打っても、不思議にそれをかいくぐっていつも殺生丸をかばおうとする犬夜叉」イベントが発生して「なんなんだこいつは」ってなり、やがてそれが半妖である弟の中にどうしようもなく存在する人間性・善性なのだと気づいた結果のお姫さま抱っこです。そこに至るまではものすごく時間が必要だったろうと思うんで、タイムループ設定のおかげで描けたシーンですね。14年間を10回繰り返せばそれで140年。20回で280年。30回で・・・・この漫画における殺生丸さまがどのくらいの年月と戦っているのかは、またのちほど。


 そんなこんなで、物語の背景・過去についてはだいぶ話がスッキリしたと思うものの、こんどは現在進行中の状況を整理しなければなりません。魔夜中・華夫妻のバックストーリー、朔の行方、是露さまや理玖の動き・・・ここが物語全体の中間地点、正念場です。京都編が終われば一息つけると思うので、もうひと頑張り。

ちょ、顔近い :少年サンデーS 2023年/4月号2023/02/25

 単行本ペースを上げるため、しばらくは48Pの大盛りでがんばってみます。今回盛り込みたい情報量が多く構成に苦労しましたが、高橋留美子先生に「すごく面白いよ!」と言ってもらえたのでたぶんいい出来です。

 はじめて阿久留の名が登場。「時空を司る神」「時代樹の上司」とすることで、ゲームマスターを一元化。同時に「天照大神(あまてらすおおみかみ)の愛犬」設定で、アニメ原作の「犬一族にだけ見える」に理由付けした形です。妖霊星についても是露さまの身に起きたこととイメージを重ねました。念のために言っておきますがこれ、日本神話に北欧神話やギリシャ神話のテイストを混ぜた私のウソですからね(笑)。

 是露さまが花魁(おいらん)風の衣装なのは戦国時代としてはすでにファンタジーなんですが、そっからさらに時代をさかのぼっちゃってるのでここは奈良時代風に。理玖が誕生した場面ではいつもの着物だったし、おやかた様たちもさほど古風ではないし、考証というよりは単に「過去のシーンであることを絵面でも示す」「キャラがお着替えするとちょっと嬉しいやん?」っていうだけの遊びとご理解くださいませ。
 理玖は原作アニメ通り、生まれてしばらくは感情が希薄だったようです。「人工的に作られたレプリカントが魂を獲得していく」というのが隅沢さんが理玖に抱いていた初期イメージで、これは多くの隅沢脚本に共通するモチーフだと思うのです。コミカライズは原則として「椎名高志のフィルターを通した高橋留美子作品」という切り口に引き寄せて再構成してますが、ここは外せない。

 おやかた様が持ってる剣の設定については、以前から『犬夜叉』ファンは気になってたと聞いてます。「コミカライズで補足できるといいな」と思ってたんですが、現状では十六夜さまのことにまで触れる余裕はなさそう。でも一応「おやかた様は自らの牙を剣に変え、愛刀『鉄砕牙』とした。のちに十六夜と出会って恋に落ちたとき、鉄砕牙に守りの力を付与して『人間を守る心がなければ使えぬ妖刀』を作った」という仮説に基づいて描いてはみました。
 妖霊星の破片と戦うシーンはアニメ原作通り鉄砕牙を使用、でも刀身は犬夜叉が封印を解いたばかりのときに似た、やや細身な姿です。また、妖霊星が本気を出してないため、おやかた様も大技は使ってません。殺生丸の前で冥道残月破とか使っちゃうと『犬夜叉』と矛盾しちゃう・・・まあ、多少間違いがあっても「コミカライズ版は別時空」ってことで、おおらかに見ていただきたい。なるべくないようにはがんばってますが。
 
 それより、私が今回一番見てもらいたいのは「顔近い麒麟丸さま」ですかね(笑)。『犬夜叉』オマージュを描いてて、(からかい気味に威嚇したあと、何か言うよな・・・説教とか教訓かしら?)って思ってたら、私が考えつく前に原稿の中の麒麟丸はふっと優しい表情になって謝ったという。細谷ボイスが聞こえる・・ダミーヘッドマイク収録音声で。あとこれ、殺生丸は自分がやられて悔しかったことを後年犬夜叉にやったことになりますね。相手の揺さぶり方は麒麟丸から学んだらしい(笑)。


 後半は魔夜中さまと、名乗ってないけどお華(はる)さんが設定を変えて登場。実は華さんの衣装はもっと明確に「逆髪の結羅」に寄せるつもりだったんですが、「人妻があんな露出はいかがなものか」という担当編集者と「結羅と関係ない子だし、これ以上寄せる意味ないんじゃない?」という高橋先生のご意見に合理的に反論できなかったため、あのような形に。ここは世界中の逆髪の結羅さんファンのために抵抗するべきだったかもしれない・・・合理的に反論はできませんが(笑)。

 コミカライズ版での朔の扱いは以下の通り。
1:用語としては「朔」は「新月」の古い呼び名で、半妖が力を失う日のことは「そのとき」とか「その日」と言う。犬夜叉は朔がそのときという体質の半妖。
2:四半妖のもろはも半妖扱い。犬一族の血をひく半妖は、みんな同時に力を失うらしい。その方が説明がシンプルだから。
3:妖力を失っても髪は伸びないらしい。

「妖力を失うことは、必ずしも致命的な弱点ではない」と言い切るところは、たぶん「アニメ版と決定的に違う、私の夜叉姫」です。背景設定の違いを反映したというだけでなく、私という作家があの子たちに託す思いがこもってるというか。あの瞬間は「養女」ではなく、「私のキャラ・私の娘たち」って感じました。

次回はいよいよ、犬夜叉たちが失踪したいきさつを明かします。
今回以上に情報量が多く、このままだと「回想の回想の回想」みたいなことになっちゃいそうなんで、ネームは絶賛苦戦中。最悪の場合作画が間に合わないかもっていうとこまで追い詰められてます。まあ、なんとかなる・・・んじゃないかな。わかんないけど。

家族の肖像 :少年サンデーS 2023年/3月号2023/01/28



今回のエピソードまでが単行本第4巻収録となります。ここらで過去の出来事を一気に説明したいんですが、その間夜叉姫たちが完全に引っ込むのもどうかと思うので、ちょっと構成に悩み中。

七星は渾沌と同じく少し若返らせ、最初から是露さまの部下に。コミカライズでは「サディスティックな変態」というキャラ立てだと夜爪とかぶっちゃうため、夜爪とはじゃっかん方向性の違う「マゾヒスティックかつナルシスティックな変態」ということにしました(笑)。その結果として是露さまのキャラとも絡められたので、そこはうまくいったんじゃないでしょうかね。興奮して無自覚に是露さまの痛いとこついてくるという。ちなみに歯にグラデトーン貼ってあるのは昔のお化粧、「お歯黒」です。キャラ表には「貴族妖怪」って描いてあるのに、漫画では変態ばっか強調して貴族的なとこが減っちゃったなと思って。お歯黒はふつう既婚女性のお化粧ですけど、都の都会的おしゃれ貴族紳士もやってたのだとか。じゃあかごめちゃんや珊瑚ちゃんもお歯黒すんのかってことになるんですが、現代の美的感覚と違いすぎるので時代劇ではたいていスルーするのがお約束。「退廃的な貴族」ってキャラを表現するとき雰囲気出すために急に出てきたりします。

姫たちが旅をする設定にしたとき、「屍屋には『座』(商売する権利と資格を独占する組合みたいなもの)があって、全国チェーンにしたらどうかな」「昔のRPGゲームみたいに全国どの店にも同じ顔のオッサンがいる」というネタを思いついて、このたびそれを採用。獣兵衞さんと竹千代はストーリーを構成する部品としては省略する選択肢もあったと思うのですが、彼らがいないと『半妖の夜叉姫』らしさが半減するような気がします。ので、今後も登場してもらう予定。

おやかたさまの説明の通り、妖霊星はざっくり「天体タイプの妖怪」と定義しました。意志・悪意を演出するために目玉をつけ、迫力が出るようあれこれ悩みながら描いてたんですけどね。入稿したあとで「なんか鬼●郎のバック●アードさまに似ちゃったかな・・・」と気づいたという。「このロ●コンどもめ!!」ってネットミームでしか知らないんだけど。

おやかたさまと若殺生丸さまは劇場版犬夜叉『天下覇道の剣』準拠、でもあれよりもちょっと前です。トビラだけうっかり若殺生丸さまの帯に柄つけちゃいましたけど、帯は無地が正解ですね。<本編よりもさらに血の気が多く、まだ未熟さが残る若者>として描きましたが、親子関係や心理描写にあんまり踏み込んじゃうと、人間くさくなりすぎて妖怪としての神秘性がなくなります。かといって遠慮しちゃってもキャラが生きません。ので、芝居にはかなり神経を使いました。ご子息もなんですが、おやかたさまが奥方への気持ちの片鱗を表明するというのも迷ったポイントで、でもそこは私がずーっと「御母堂さまのことは!? ねえ十六夜さまラブもいいけどチラッとでもいいから御母堂さまのことにも触れて!?」って思ってたのでやむなし。20年越しの個人的な何かが。


アニメではおやかたさまや若殺生丸さまと絡まなかった冥加じいちゃんを出すにあたり、高橋先生に「ちょっと若く描いていいですか」と相談し、あのような仕上がりに・・・いやまあ、獣兵衞さんとか七星とか妖霊星とか冥加じいとか、ファンからすると割と重要度低いキャラだとは思うんですけどね。冥加じいに『犬夜叉』でやった毒抜きを再現してもらったとことか、もっと褒めて褒めて。