男の約束 :週刊少年サンデー11/16号2011/03/05


 <女っ気不足コメリカ編>終了です。悪くないとこに着地したエピソードだったかなと思います。毎回ネームから下書きに起こす際の微調整が多くて、描いてるより悩んでる時間の方が多かったですけど。

 今回後半から新エピソード。




 さて、「声優が他の仕事するとガタガタいう奴がいるが」みたいなことをつぶやいて一部の人に猛反発をくらいました。虫の居所が悪いまま攻撃的な口調で余計なことをつぶやいてしまい、申し訳ない。「お前はバカで無礼だ」というご意見はごもっともだと思います。

 仕事上知り合いが何人かいるのでその擁護だと思われたみたいですが、もしそうなら彼らにはかえって迷惑なはずなのですいません。ワタシは誰かを代弁していたわけでも何でもなく、いちオタクとして、たまたま見かけたネットの記事にカッとして不用意な発言をしただけです。



 ところで、趣旨であるところの「人がいろいろやってみるのは応援すればいいじゃんか。タレントだろうと誰だろうと,何をすべきで何をすべきでないと勝手に決めつけるのはおかしい」という部分に対して、善良な方までもが「攻撃する人がいても仕方ない」「悪いのは夢を壊す方」などと言うのにはワタシはやはり賛成できません。

 おそらくただ客観的に状況を分析しただけでいらっしゃるのだろうと思います。加えてワタシの物言いにイラっとされたのでしょう。しかしあそこでそれを口に出したら、「サービスするのが仕事のクセに客裏切ってんじゃねえ」などと堂々と本人に向かって言い放つ極端な人たちの力になってしまうと思うのです。この方たちはワタシの論旨を理解してくださっているのですから、それが一部の過激な反応をする人たちを指していることも分かっていて、その上で反論なさっているからです。

 ワタシの口調が、穏健な人まで刺激してしまったであろうことは分かります。が、それでもここはあえて「あいつらはやりすぎだが気持ちはわかる」ではなく「椎名は言いすぎだが一理ある」と言っていただきたい。特定の誰かに何を言ってもしてもいいという空気を作るのに、消極的にであっても荷担してはいけません

 「金を払ったのに悔しい」「こういう仕事であるべきだ」という部分に気持ち的には賛同できたとしても、声を荒げてわめく人や、毎日やってきて不満をまくしたてる客はNGです。不満を持ってもいいし、文句を言ってもいいと思いますが、そのやり方や主張の中身には程度というものがあるし、そもそも気に入らないならにっこり笑ってよそに行くのがな客というものです。

 相手がタレントの場合、きれい事でも建前でも「その子がそうしたいというなら尊重するしかないじゃないか」と凛々しく言っておくべきではあるまいか。仮に内心「俺の好きなキャラじゃなくなるかもじゃん」「ナマイキ」「いい気になってる」「性格悪い」「あと椎名ムカつく」と思ったとしても、誰かが当人に面と向かってそれを言っていたら、「そんな風に振る舞うのはやめよう」と棒読みでも気高く言っていただきたい。本音むき出しもいいけど、世の中や自分の中のネガティブな部分を変えるべく、小さなコトからコツコツ戦うべきだとワタシは自分に言い聞かせ続けたい。


 あとタレントさんってけっこう人気ある人なんかでもフツーに電車移動とかしてます。雑誌やTVやDVDで見る分には好みとかランクとかありますけど、ナマで見るとどいつもこいつもめちゃめちゃ可愛いです。昨日まで「好きじゃない」とか思ってた子でもすぐ近くで見ると印象が変わるかもしれません。その中の誰かが、明日あなたの隣に座るかもしれません。しかも酔っ払いにからまれるかもしれません。あなたが助けたらそこから何か始まるかもしれません。可能性はあります。そんな本読んだことあるし。

プレイヤー「お名前だけは存じてます。いろいろあるでしょうけどがんばってください。応援してますよ!」
ヒロイン
「・・・・!(大粒の涙)」
プレイヤー「ど、どうしました?」
ヒロイン「いえ・・ありがとうございます・・・!(アニメ声)」

プレイヤー「ちょっと休んで落ち着きましょう。お茶でもどうですか?」
ヒロイン「はい・・・優しい方ですね(にっこり)」

可能性はあります。


 そういうイベント発生に備えて、紳士パラメーターは日頃から上げておいて損はないと思います。可能性は常にあるからです。

A Whole New World :週刊少年サンデー11/17号2011/03/13

 この原稿を入稿して一眠りして、地震で叩き起こされました。その後の惨状はみなさんご存じの通り。正直、漫画描く気にならないんですけど・・・「サンデーふつーに出すの?」と聞いたら出すそうです。

 あちこちでものすごい数の方が死んだり怪我したり家を失ったりしてる状況で、しかも原発がえらいことになってて、余震もまだ続いてます。こんな時に誰が誰に勝とうが負けようが犯人が逮捕されようがチューしようがどうでもいいような気もしますが、それを言ったら元々どうでもいいっちゃいいことなわけで、まー娯楽産業に従事する者の宿命というか使命というか。

 今の漫画の土台は、戦後の焼け野原で子供たちが手に入れられる安価で夢のある娯楽でした。戦前から漫画は愛されてましたが、あの時代にかっこいい未来を描いたからこそ、その後の大発展があったのではないかと思います。そんなわけでシラフで漫画描いてられないけど描かないわけにもいかないので、飲めない酒を飲みながら描いてます。


 ただ、現時点で「絵で被災地を応援」とかっていまいちよくわからないのね。自分の無力感を癒すために描くのはわかる。災害が一段落して、復興に向かいだしたらそれは応援にもなるかもしれない。でも現状では死者の数は何割も把握できてなくて、最終的には万単位になりそうだという。早く始めた方がいいかもなのですが、せめて収容できる遺体を全部収容するまではワタシはそんな気になれません、すいません。

 ベルリンの壁崩壊のときも阪神大震災のときも911テロのときもワタシは普通に漫画描いてました。しかし今回の震災はちょっと平常心でいるのが難しいと感じてます。とにかく今は、行方不明者がひとりでも多く無事でいることを祈ってます。

漫画で人は救えないけど :週刊少年サンデー11/18号2011/03/17

勇気が世界の闇を照らし始める

 今回は18号のトビラページを一枚まるごとアップ。オリジナルはモノクロなのですが、背景を差し替えてキャラの上に適当に色をつけてみました。震災前にラフは上がってたものの、描いているうちに出動するザ・チルドレンの後ろ姿にワタシのいろんな思いが乗っかったので。あの空の向こうにある現場で今この瞬間も戦っている、たくさんの人たちへの応援の気持ちをこめて。


 都内でも物資が品薄になってます。一時はコンビニの中が半分以上からっぽでした。なんだかね-。ものすごい無力感です。

 震災に対して何もできない・・・というより、こういうとき実質世の中には必要ない漫画を描くワタシってなんなんだろうなと。夜中に余震繰り返す中漫画描いてるとこう、無力感と絶望感が。でもまあ仕事はしなきゃならないということで、売れ残っていた梅酒を飲みながら仕事してたわけですよ。酔うとかなり気分良くなるし。でも弱いんで、ちょっとペースを間違えるとだるくなるという。

 で、酔い覚ましに近所をうろつきに出てみると、飲みに行く人も少ないようで、駅前なんかもしーんとしてます。ガソリンも品薄なので走ってる車もまばら。が、節電で看板のライトは落としているものの、コンビニは変わらず営業中。前日からっぽで閑散としていた棚に、もう商品がいっぱい。

 翌日の夕方にはまた商品が根こそぎにされ、でも夜中にはまた入荷。商品搬入のトラックが到着して、菓子パンやお総菜やドリンク類を搬入、それを商品棚の隙間に黙々と補充する店員さんを眺めてて「この人たちは今、街を支えているんだな」と思いました。

 生きてくためにはそんなに要らないたくさんの商品ですが、それが当たり前にあるということは素晴らしい。きっとそれは食品や雑貨だけでなく、ワタシが関わってる雑誌や漫画も同じです。あの棚を空っぽにしてはいけません。役に立つとか立たないとかではなく、それがある日常、そこにあるいつでも買えるという豊かさと安心感が我々の平和な日常なのです。そのためにワタシも戦おう。

 ワタシは元気をもらって仕事場に戻り、力の限りこのパンチラを描きました(←オチ)。


 そんなこんなで新エピソードは葵ちゃんと影チルがメイン。震災の被害に遭った人たちが今これを読むとも読んで楽しめるとも思いませんし、今すぐ人を元気にするほどの漫画はワタシには描けません。ただ、元気になったとき楽しめるものを目指して仕事して、ワタシはそれを届け続けます。

葵の近眼は超感覚の副作用ではあるまいか :週刊少年サンデー11/19号2011/03/26

 原発は相変わらず予断を許さないし、被災地の救援や行方不明者の捜索も難航している様子。犠牲になった人たち、特に子供たちのことを考えると情緒不安定になるので、なるべく自分ができることに集中するようにしてます。

 東京都民の漫画家としては、普段と変わらず深夜余剰電力を主に使用して活動しつつ、事態の収束を待ちたいと思います。ナマ原稿とかサイン色紙とかもチャリティーに役に立てられるといいな。


 さて、漫画の方はこの状況にしてはまずまずの流れで進行中。劇中の主題も提示されたので、結末までもう一息です。可憐GUYS分が不足してるよーな気がしますけど、ティムたちがんばってますのでもうちょっとご辛抱くださいね。

 それと震災で忘れちゃってた今月のツイッターお誕生日イベント、どっかでやんないとね-。仕事の都合があるので今回は週末でなく、月末あたりに。これで一年間毎月やったことになりますので、いったん終了しようと思ってます。参加できなくて残念に思ってくださってる方がいることも存じてますが、とりあえず本編のスケジュール悪化を防ぐためと、ネタの充電期間とお考えください(;´∀`)。