TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第七話:超能部隊 前編 -Generation ZERO PARTⅠ-2013/02/23

『THE UNLIMITED 兵部京介』
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 ギャグ描写は減らしてるものの、ほぼ原作通りの展開ですね。原作では不二子の主観寄りに構成してましたが、アニメの視点はもう少し引いて、第三者目線で兵部少年を見る・・・・・っていうニュアンスでしょうか。バランスもいいし、この尺でよくこれだけの分量が入ったなと思います。それで窮屈な印象がまったくないのは演出と脚本の力量ですね。後編ではさらにそこんところがよくわかると思います。

 私としても思い入れのあるエピソードで、向こう見ずでお転婆な不二子の少女時代をゆかなさんが演じてくれるところは、執筆中も想像してこっそり楽しみにしてました。でもまさか実現するとは(*´Д`)。

 OPは・・・・・・・そうきたか、かっけええええ!! 背景の変更、フィルムの劣化やつなぎ直した跡など、芸コマすぎる(笑)。兵部のオーラだけが赤いのはもしや『天国と地獄』っ!!!



 超能部隊のアイデア自体はかなり早くからあったのですが、絶チルとしての私なりの切り口がなかなか見つからなくて攻めあぐねてました。が、「自由や個性を軽視する空気 vs 世の中の標準規格から外れた不二子たちとの戦い」の物語にすれば、絶チルそのものであることに気づいた次第です。

 戦前の日本人、特に都会の中流層のメンタリティーは今とそう大きくは変わらなかったようです。白黒の記録映像を見てると今とは違う別世界だったように思ってしまいがちなのですが、実際には色はあふれてて、若い女性はおしゃれと美味しいものが好き。一方、劇中のように巡査が若い人の服装について説教するというようなことは、この時期からすでによくあったそうです。ああいうのは戦争末期になってからだと思ってたので、ちょっと意外でした。

 ただまー今の世の中にも似たようなことはあります。手っ取り早くいいことしてる気になりたがるというか、自分がお行儀良くて善良であることをズレた方向で熱心にアピールしたいというか、他人を自分と同じ枠にはめてコントロールしたがるというか。ああいう体質は「戦争のせい」「昔の人のしたこと」では済まないのではないでしょうか。

 そんなわけで、不二子が「人と違ったっていいじゃない! 自分の値打ちや生き方を、他人に決めさせたりなんか絶対にしない!」とタンカ切って大暴れするシーンこそがエピソードの中心的主題で、描いてて実に気持ちよかったです。とはいえ、嫌らしい「空気」「同調圧力」との戦いは、誰かをぶちのめせば解決するというものではありません。騒ぎのせいで部隊はピンチに陥り、不二子は自分の短絡さを悔やむことになります。

 物語のバランスが『UNLIMITED』としてはギャグに振れ過ぎちゃうので、不二子の555キック等は割愛(アイスクリームは19世紀から一般の人も食べてたんですが、注文に応じてその場で製造する「ソフトクリーム(ソフト・サーブ・アイスクリーム)」はこの数年前にアメリカで普及し始めたばかりで、日本に伝わったのは戦後だそうです・・・・まー『絶チル世界ではすでにコメリカから伝わっていた』ってことにしておいてください(笑))

 他にもたとえば菊池と犬神は若干バカが直ってますね。原作の陸軍本部盗聴シーンでは画面の隅っこで犬神じーちゃんがこっそりハト捕まえて食ってたりするんですけど、そういうのはなし(笑)。芥の吃音は大人の事情と、あと尺を少しでも詰めるために修整。
 

 その代わり「懐中時計はクライマックスに演出上のシンボルとして使う予定だったのを入れ忘れ・・・・もとい入らなかったので、時計屋はカットしてはどうでしょう。描くのめんどくさいし」と提案したところ、「それなら逆にアニメには入れましょう」ということで原作を補完していただくことになりました。まあ、どう使うかはだいたいわかると思いますが、そこは後編で。

 EDでさりげなくちゃんと菊池がフンドシ派・夏見がモモヒキ派だったりするところにも、スタッフの原作への愛がありますね(笑)。



 兵部少年の声は、このシリーズでは平野さんにお願いしました。言うまでもなく「薫は兵部の分身である」というヒントですね。群像劇でもある絶チルですが、やはり薫は作品の中心です。<ミス・絶チル>であるところの平野さんを、アイコンとしてスピンオフ作品の心臓部に配置するというのは名案だったと思います。

 兵部は「大人になりたい」という強い思いから超能力で急激に成長するため、前作で登場したミッドウェー戦のときにはすでに遊佐ボイス。しかし終戦後はそれ以上大人になることを拒絶して、今に至るという。(´;ω;`)ウッ…

 その遊佐さんはアバンタイトルと、まさかのED主題歌での登場。EDがどーんと遊佐さんのソロというのは貴重なので、遊佐ファンは全員CDだけでなく『UNLIMITED』のブルーレイを買おうネ


 


 早乙女隊長役は、初代TVシリーズのサイボーグ009役をなさっていた森功至さん。そのオマージュである超能部隊のリーダーとして、ドンピシャな配役ですね、ありがとうございます。
 小さい頃は「サイボーグ009」や「マッハGOGOGO!」に夢中だったし、思春期には「ガッチャマン」「ガンダム」で、そして漫画家になってからは拙作『GS美神』の吸血鬼ピートの親父・ブラドー役でお世話になっております。

 早乙女は大変優れたリーダーです。ただ、「理想や理屈は目的ではなく、手段に過ぎない」と言い切っちゃうところに、彼の冷酷さと野心の片鱗が。苦学して東大に入って「カミソリ(頭がよく切れる、の意)早乙女」とか呼ばれてたタイプじゃないでしょうか(笑)。やがて戦争で歯車が狂い、悲劇に至るわけですが・・・・・その辺についてはまた来週。

 というわけで次回は兵部少年対ゼロの空中戦!! ふんどしじゃないから恥ずかしくないでごわす!!