俺たちの戦いはこれからだ :週刊少年サンデー2021/26号2021/05/08

 


最初登場させたとき、兵部のことは「物語をかきまわすトリックスター」だと思ってました。しかし描いているうち、だんだんあいつこそがこの漫画の<裏主人公>であることがわかってきて、彼が自分の過去になんらかの決着をつけることが、チルドレンの未来に希望を生むことになるんじゃないかなー的な。そしてついに、このたびめでたくなんか決着がついたような気がします。

 

早乙女隊長のことはアニメでアンリミテッド(←婉曲表現)して、漫画の方でも「あいつも人としてかわいそうなヤツだったんだなーって(←ざっくり意訳)」みたいなこと言ってましたけど、でもまだ彼の中では何かが成仏できないままだと感じてました。それが今回描いたとあるシーンで「あ、いまこいつの物語は完結した」と感じるに至った次第です。以下ちょっとだけネタバレなんで、封はしておきますね。漫画本編を読んだあとでクリックするか、いま先に読んじゃうかはお任せします。まーエヴァや進撃や鬼滅ほど最終回どうなるんだろうこれ感はないと思うので、これくらいのネタバレはいいかなって。

 

  
いちおう生存エンドです()
 
正直長いこと、兵部は最終回には死ぬとばかり思ってました。皆本をかばって死ぬとか、薫の卒業式に行く途中でトラックにはねられるとか、結婚式に行く途中でチンピラに刺されて死ぬとか、薫が飛行機で旅立つときに「未来を超えろ! あとエースをねらえ!」とか遺言書いて病院で死ぬとか。いやまあ「でもそんな漫画じゃないだろうな、どんな風に兵部はラストを迎えるのかな」とも思ってましたけどね()
 
今回、読者のみなさんがどう思うかは正直わからないものの、自分では描いててちょっと涙ぐむシーンが生まれました。もちろんまだ話数は残っててそこにも兵部は登場しますけど、彼自身の長い物語の終点はこの回と、あと次回もう一回になります。ここまでずっと兵部を可愛がってくださったみなさま、本当にありがとうございました。私の中の兵部も今はいい笑顔でみなさんに感謝を述べております・・・遊佐さんの声で。よろしかったらツイッターや手紙で読んだ感想を教えてくださいね。きっと私の中の兵部も喜ぶと思います。遊佐さんの声で。

真実はいつもひとつ!:週刊少年サンデー2021/28号2021/05/19




これが物語の事実上の終着点で、ここから先はエピローグ・・そんな回です。

チルドレンは常に「未来へ」「人生の次のステージへ」って進む、その途中にいるキャラクターです。だからあの子たちだけの物語であるなら、どこで終わっても「明日に向かってさあ行こう!」でいけます。人生にはいろんなことがありますが、あいつらならまあなんとか元気にやってくと思うんで。

しかしそこに影を落とし続けているのが兵部の過去です。「乗り越えられない試練もある」というサンプルが彼で、チルドレンが同じように挫折することがこの物語のバッド・エンド。これがあるから物語は続けられたわけですが、大学生編を描くつもりはないので、きちんと完結するにはこれをなんとかしないといけません。逆に言えば、兵部がなんらかの形で過去から救われれば、それはチルドレンのハッピーエンドでもあるんじゃないかなと。 

高校生編は「大人たちのサポートが最小限になる中、自分たちで道を拓いていくチルドレン」を軸に描きました。さらに兵部というキャラに決着をつけるべく、あれこれやってきたのですが・・・・・・人生の全てを過去のトラウマに捧げた兵部にとっての解決って何でしょうね? 人に聞いてもしょうがないので、センセイ一生懸命考えました。そしてそのヒントは 『LAST RESOLUTION』の歌詞にあったという・・人に聞いたも同然()

アニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』の主題歌、六ツ見純代さんが作詞してくださった『LAST RESOLUTION』には、「闇でしか裁けない原罪(つみ)がある」というフレーズがあります。その「罪」が何なのかってことが私は放送当時からずっと気になってて、六ツ見さんがどういう意味を込めたのかはともかく、この気になり方が妙に気になるというか、私にとっての解釈が何かあるはずだなと。

普通に考えればあれは「兵部と仲間たちから青春と未来を奪った大人たちの罪」で、復讐に燃えるダークヒーロー、中二病をこじらせた永遠の少年のナルシスティックでカッコイイ歌なわけですけど、きっと何か裏があります。真犯人は別にいる。


そんなわけでサンデー28号・611st sense『ラスト・リゾリューション<>』、「闇でしか裁けない罪」とは本当は何だったのか、それを犯した真犯人は誰なのか・・・・私の灰色の脳細胞が出した解答、そして描きながら自分で涙ぐんでたエピソード、どうかみなさんも納得して楽しんでいただけますように。

 


ちさとちゃん、たぶんオールアップです:週刊少年サンデー 2021/29号2021/05/31



エピローグがあと数話、噛みしめながら描いてます。
うまく構想通りにエピソードがまとまるなら、ちさとちゃんと東野くんの出番はここで終わりになる確率が高いです。
このあと薫がいつものようにちさとちゃんにベタベタするカットではたいへん名残惜しそうでした。「やだ、帰さない!」ってセリフと芝居が、お約束のパターンを描いているだけなのに、なんとなく薫のアドリブって感じが。漫画にアドリブなんてあるのかどうかはわかりませんが・・・私はあるような気がします。



さて、そんなわけで完結は目前なこのタイミングで、さっき私は死にかけました。

仕事場に吹き抜けの階段があるんですが、猫がそこに飛び移ろうとして失敗して、落ちそうになって前足でぶら下がってもがいていたのですよ。それを助けようとダッシュしたら、履いていた靴下が良くなかったらしく、私も足がすごい勢いで滑って転倒。もう少しで猫と一緒に奈落に落っこちるところでした。
くわしい状況を説明するのは面倒なので省きますが、踏みとどまろうとした足がさらに滑ってひじょうに危険な体勢になってしまい、その状態でもなんとか猫は助けたものの、私は仰向けで頭から落下するか踏みとどまるかという二択で数秒間もがき、まあ最終的にはなんとか無事に免れたんですけど、あの姿勢で落ちてたら頸椎を損傷してしばらく発見されずにいた可能性は高いと思われます。

死んでいた場合、私が猫をかばったとかそういうことは家族にはわからないので、「自殺ではなさそうだけど、なぜそんなとこでそんな死に方をしたのかはまったく不明」ということになったはず。(てことは十何年も描いた連載が終わるタイミングでの変死ってことで話題になって、それでけっこう単行本売れるかもな・・・まあエピローグはまだ仕上がってないけど、前回入稿した原稿でそれなりに話はまとまってるから、ブツ切れ感もさほどないのではあるまいか)などと悪い冗談を言えるのは、無事で済んだからで。

10年ほど前には、夜中にロードバイクで走ってたらすごいスピード出してるアホなバンが路地から飛び出してきて、コンマ何秒かの差で跳ねられずに済んだということがありました。車は慌てて急ブレーキをかけましたが、タイヤがロックした状態で数十メートルも滑って行ったので、住宅街なのに80キロ以上は出してたと思われます。少しでも接触してたら私はたぶん即死。車の方はあのままコントロールを失って横転するか電柱に激突したとしても自業自得だと思いますが、お互いまったく無事にすんだのは運がよかった。

そういや某大先輩の先生も、エッセイ漫画で「仕事中に飲み物が気管に入ってしまい、こっそり溺れかけた」って話をユーモラスに描いてましたけど、一歩間違ったら本当に窒息してたかもなので実はあんまり笑えない。

そんなわけで、若かろうが年とってようが、家にいても外にいても、用心してても節制してても不測の事態は起こりうるのですよ。先日私と同年配の人気漫画家の方が急逝なさいましたが、お悔やみとして「完結させて欲しかった」ってのは、読者として気持ちはよくわかるけど、あまりよくないんじゃないかなーと。ご本人にも急なことなわけだし、完結させたら死んでいいってことでもないし。さらに「絶チルは完結しそうで良かった」とかは「早く終われ」「お前も死ぬかもしれん」つってるわけで失礼では・・・いやまあさっき死にかけましたけど。完結も目前ですけど。

(これは落ちたら死ぬな。落ちるかも)と焦っていた数秒間、(でも猫は無事でよかった)とも考えていたので、どうやら私は猫のためになら死ぬ覚悟ができているようです。この猫への愛が神様に認められ、もしものときは異世界に転生して無双してモテますように。