意表をついて現代パートからのスタートです。当初はあの時代に南蛮から伝わってきたばかりの「天ぷら」を食べるシーンからと構想していたんですけど、ちょっと舞台に変化が欲しいなと思い直してこのように。天ぷらの歴史ウンチクを語れなかったのは惜しいものの(笑)、懐かしいタタリモッケを描くことで『犬夜叉』世界とのつながりをアピールできたので、まあこっちにして良かったんじゃないでしょうか。
私の切り口は「へー、ここがあの戦国御伽草子の世界かあ・・!」という、観光客的な目線です。長年の高橋留美子信者である私の目線を、現代育ちのとわちゃんのそれと重ねたわけで、いわばこのコミカライズは私の高橋留美子作品へのラブソング。それが許されたのでこの仕事やってると言っても過言ではありません。でもとわちゃんはもともとそこの住人ですから、いずれ私の手を離れ、帰っていくことになります。
何度か言ってる気がしますが、これ、昔見た『野生のエルザ』っていう映画のイメージなんですよ。まだライオンの人工授乳飼育にほとんど前例がなかった時代、イギリス人女性が赤ちゃんライオンを保護して「エルザ」と名づけ、ちゃんと育てた上に訓練して野生の群れに戻したという実話を元にした映画。ジョン・バリーの美しく雄大な名曲『ボーン・フリー』が流れるラストシーン、猫のように可愛がられていたライオンが成長し、頼もしくゆったりとサバンナに去ってく姿には泣いた・・・と思ってこないだ見返したら、いろいろ古くなっててそんなにはグッとこなかったですね(笑)。まあ小さい頃の記憶だし。公開当時は大ヒット映画だったのです。
連載が終わると我々漫画家はキャラクターとお別れするのかというと、たしかに描かなくはなるけど、彼らはずっと作者の中にいるし「うちの子」のままです。でも、他人の版権である夜叉姫たちと私の別れは、たぶんもう少しドラスティックなものになるかなと。
屍屋・博多店の呂苦兵衞さんはモノクル(片眼鏡)キャラ。オリジナル獣兵衞さんの目の傷に対応させてみました。当時ヨーロッパに眼鏡はすでに存在してて、使っている宣教師に信長は興味津々だったとか。現在のように耳で固定する方式の発明はずっとあとで、この頃は鼻に挟む「鼻眼鏡」でした。モノクルはおしゃれアイテムとして19世紀に流行して、コナンのキッドさまがモノクル使ってるのもその頃の怪盗紳士、アルセーヌ・ルパンのイメージですね。戦国時代にあったのかどうかはちょっとわからないんですけど、考証としてはギリギリ許容範囲かなと。レンズはかなり高価だったはずで、一個なら半額だし。
例によって別モノな展開にはなってますが、今回も一応アニメの部品をあちこちから集めて、新たにでっち上げた素材を接着剤にして、漫画用に再構成してます。いまやってるのはアニメ2期前半〜中盤あたりですかね。アニメとコミカライズ、お互いをよりいっそう楽しんでいただけると嬉しいです。