犬夜叉・かごめ・りんとの再会を描いたことでここで言いたいことがだいぶ成仏してしまい、3ヶ月ぶりの更新です。物語はいよいよ最後の戦いに向けて爆進中。
アニメの「せつな死亡」「折れた天生牙では救えない」「とわの妖気の刃でなら」という流れは、とわが後継者として父親と肩を並べるための通過儀礼です。が、漫画では天生牙折ってる暇がなかったため、双子が力を合わせて斬星剣を進化させるという形に置き換えました。これによって双子の両方、ひいては殺生丸の成長という物語の核心要素を一点に凝縮。翡翠と琥珀が同行してることの意味・役割もここだろうということで、二人のどちらかにせつなに代わって死んでもらうことに。
イヌヤシャーロキアンなら琥珀がもう生き返れないことは常識です。翡翠は『犬夜叉』最終話で生まれたキャラですから、ハッピーエンドの象徴でもあり「それが死ぬとかありえねえだろ!」と思います。ということはこれは翡翠の仕事ですね(論理的帰結)。『夜叉姫』はある意味『犬夜叉』のハッピーエンドを覆すところから始まる物語ですが、私はこれを「あのハッピーエンドがたとえ壊れかけたとしても、彼らはきっとそれを修復する」という主題として受け入れました。姫たちは単なる二世キャラではなく、我々読者の「『犬夜叉』の世界とキャラクターたちへの想い」を背負ってるんです。なので私の『夜叉姫』では翡翠が死にかけて、姫たちがそれを救う。
それともうひとつ、翡翠の死と復活で、琥珀がたぶんなんか吹っ切れたと思うんですよね。常に「正しい死に場所」を探してる風なのがコミカライズの琥珀でしたが、翡翠の死を目の当たりにして叫んだとき「本人は満足でもこんな思いを誰かにさせちゃあかんやろ」ってなって、ようやく執着から解放されたんじゃないかな。翡翠は確かにハッピーエンドの象徴だけど、それを言ったら琥珀だってそうなんですよ。「死ぬんじゃない、お前は義兄上と姉上の宝なんだ」という叫びは、そのまま彼自身にも向けたセリフとして書きました。
さらにここから麒麟丸とりおんのシーンにつなげると「同じ救いを得ることができなかった者」とすることができます。彼の「世界を滅ぼしてでも」という動機にも説得力が生まれました。
子供を失うのはおそろしく辛いことで、それを真剣に描くのはキツいです。なのでりおんは復活した途端元気に「お父さまはダメな人です!」と言う方向に(笑)。桔梗の復活シーンをオマージュした絵はりおんの幼い外見だとちょっと背徳的すぎる気がしないでもないんですけど、そのくらいの方が戦国御伽草子らしい禍々しさが出てるかなと。高橋先生の作風はかなり生々しくエロい絵面がしれっと入ってくるのに、なぜか「邪念を抱かず受け入れなさい」という強制力オーラがあるのが凄いです。これは私ごときには真似できないので、いちおう単(ひとえ)を羽織らせました。
アニメ版の「爆星剣」と対になる「天星剣」というヒネリはちょっと面白いと思ったのですがいかがでしょう。「“届かないものに届く刃“と“斬れないものを斬る力”の合体」っていう中ニ漫画理論は気に入ってます。これによって妖霊星へのトドメは双子の合体必殺技攻撃になることが確定。天生牙先輩の活躍がなくなったのが少し残念ですが、土壇場で「天星剣のアイデアは天生牙先輩の発案」というのを思いつきました。よく考えたらあの子たち「ドクンドクン」ってめっちゃ喋りますもんね(笑)。アニメよりも『犬夜叉』パスティーシュ寄りにしたコミカライズでは、武器はアイテムというより「懐かしいキャラ」扱いをしております。
翡翠とせつなの思い出は「根本的に妖怪である殺生丸」と「心は人間のせつな」の対比として、彼女の中にある「生き返らせたい」という強い動機を描いたものです。アニメでは淡い関係に留まっていた二人でしたが、生い立ちや展開が変わったコミカライズ世界の彼らにはそれが必要だろうと。結果は高橋先生に好評をいただいたので正解でした。
最終ページはもろはが回復してますんで、省略してますけどあの後一泊したようです。その間殺生丸さまが何して待ってたのかはよくわかりません。さりげなくせつなに寄り添って翡翠のことをなんだかずっと睨んでたんじゃないかって気はするんですが(笑)、その辺は皆さんの脳内薄い本で。いやまあ言うてもこのコミカライズ自体がほぼ(以下略)。
さて、物語の全体構成としてボス戦前にやっておくべきことはこれでほぼひと通りやった感じでしょうか。ここから一気に麒麟丸戦に突っ込みたいところなのですが、ラスボスがひとりで城にいて何もかも自分でやってるとあんま偉い人に見えません。なので冥道丸を部下役に配置して、りおんのお世話は謎のハニワ顔女官軍団がやってます。是露とのバランスを考えると、もう一人くらいは中ボスが欲しいし冥道丸への雪辱も回収しなきゃ・・ってことで、次回も前哨戦の続きです。この仕事では最初からずっと悩みつつ最適解を探してますけど、立ち上げる時って苦労も楽しいんですよ。終盤に向けて物語を収束させていく作業では、あとで悔いのないよう要素の取りこぼしに注意しつつ、でも勢いを殺さずまとめていかなきゃいけないというロジカルな戦いになります。