単行本第一巻は1/18ごろ発売 :少年サンデーS 2022年/03月号2022/01/14




 あけましておめでとうございます。『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第1巻は1/18ごろ発売です!

 「えー、高橋留美子先生が描いてるんじゃないんだー。ちゃんとるーみっく絵で見たかったなー」という方には申し上げたい。

「先生はいま『MAO』描いてはるでしょ⁉︎」

 まあ、ファンとして私も同感ではあるんですけど(笑)。


 もっと絵柄を寄せることもできたろうとは思います。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、うちの奥さんは元・るーみっくプロのアシスタントで、高橋先生が好きすぎてとうとう先生のとこに就職しちゃったという人なため、その気になれば模写もかなりできるんですよ。


 ただ、そっちに舵を切っちゃうと、絵以外の部分も高橋漫画っぽくすることが重要になっちゃって、私の得意なものや持ち味は二の次になります。「似せて描く」よりも「漫画作品として、自分にできる限り面白くなるよう死力を尽くす」が私の使命だと思うし、もともと限りのある私の才能に縛りを加えちゃうのは作品に対してかえって失礼かなと。


 それと、他人が描いた模写って、そっくりに見えても意外と本人は「あーそこを拾っちゃうの・・?」などと思うものでして、たぶん高橋先生は喜ばないんじゃないかなあ。じっさい「ちゃんと椎名さんの漫画になってるから、安心して読者になれる」って言ってもらってますし。ヘタに似せてたら、「いやそこはそうじゃねえだろ、貸しなさい、もう自分で描くから!」ってことにもなりかね・・・あ、それはそれでアリだったか(笑)。



  あの世界にはたくさんのキャラクターたちが生きていて、なら、高橋先生とは別の語り部がいるというのも本物の歴史のような趣があって面白いと思うのです。私がこのコミカライズを「異伝」「椎名史観」と呼ぶのは、私があの世界に取材に行って、よそ者の私の目で見た戦国御伽草子を描いたというテイストにしたかったからです。司馬遼太郎が取材を元に、史実と大きく矛盾しないように、でも戦国武将を高度経済成長期の企業戦士に見立てるという自分の切り口で『新史太閤記』書いた、みたいな感じ。


 で、私は「それは面白い企画だし是非やりたい」と思ってここまで突っ走ってきたのですが・・・単行本が出る段になって正気に戻って気づいちゃったんですよね・・・「それ、世間ではどのくらいニーズあんの? 売れるの?」って(遅い)。


 ただまあ、私は私が面白いと思って燃えた企画しか描けないわけですから、もうしょうがない。私のコミカライズが刺さる、感性の近い同志諸君が少なからず居られることを祈っております。


『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第1巻は1/18ごろ発売です!

 同志諸君、買ってね‼︎


ようこそジャ●リパークへ :少年サンデーS 2022年2月号2021/12/27



 姫たちの旅の第一歩は、退治屋の里が舞台です。成長した琥珀くんにスポットライトを当て、彼の目線で『犬夜叉』の物語を振り返ります。

 このコミカライズは「私と読者がとわちゃんと一緒に『犬夜叉』世界を訪問する」という入口から始め、「殺生丸という人物を、新たな登場人物の視点から解き明かす物語」としてアニメを再構築してます。なので、「『犬夜叉』で現場にいた人たちの、それぞれの目線からの証言」は、前日譚の説明であると同時に道しるべ。琥珀お頭の背負う過去もコミカライズではまるっと開示して、複雑な陰影を持つ父・殺生丸さまへの興味を深めてもらった次第です。

 私は琥珀くんを「過酷な世界を生きた、もう一人の草太くん」と解釈してたもんで、コミカライズ時空では親バカになった草太パパに引っ張られ、琥珀お頭もかなり三姫に甘々に(笑)。「成長した彼が、奈落に操られて殺めてしまった父親や仲間の墓前に手を合わせる」「いまもその過去から完全には逃れられないでいる」という描写は絶対に入れたくて、でもそれで物語が暗くなりすぎないように調整。

 原作『犬夜叉』版の雲母ちゃんはフキダシとか使わない子なのですが、アニメ版ではけっこう声出してて、漫画に逆輸入するとだいぶ喋る子な気がするんですよね。コミカライズではどうしようかなーと迷った末、「人間であるかごめから見ると無口だけど、半妖の姫たちの目線で見た雲母は割と喋る」と解釈しました。ついでに猫味を増してみたのですが、「抱き上げるとうにょーんと長い」とか「ベタベタしすぎると顔を肉球で押してつっぱる」とか、あんまり猫にしちゃうと別人(獣?)すぎることが判明したので、この辺が落としどころのように思います・・・・一応描いてはみたという(笑)。

 雲母ちゃんにはあまり大人数は乗れないので、この後の展開の都合もあってお頭には馬をご用意しました。絵にしてみたら、馬に乗ってると大人になった彼の威厳・権威を演出できたので、正解だったと思います。ちなみにあくまでも私の個人的かつ非公式な裏設定なんですが、愛馬の名前は「カグラ」だったりすんじゃないかなーと。

 神楽姐さんのラストシーンはシリーズ屈指の名場面のひとつなので、私はぜひ拾いたくて、でも印象的であるがゆえにそこに踏み込み過ぎると物語のバランスがそっちに振れ過ぎちゃうというジレンマがあり。なので高橋先生と相談の結果、回想はあのとき駆けつけて見守っていた琥珀くんの目線からの小さなカットにとどめるということになりました。逆に言えば、私としてはちらっとでもいいからどうしても、短い生涯を精一杯生きた彼女にふれておきたかったというか。彼女の生き様は、あとで登場するキャラクターたちに重なる部分がありますしね。

 新章の目玉は、アニメ原作では顔見せだけにとどまっていた鋼牙兄者の参戦です。アニメ世界線の延長なら菖蒲(あやめ)ちゃんもいるはずなんですが、残念ながらページの都合により出演は見送り。「鋼牙兄者のいないあいだ群を守っていてお留守番」ということかも。

 前にも書いた通り、凱風(やわらぎ)師匠は立ち位置を少し変更したついでに若返ってもらっての登場です。今回はまだセリフがないですが、次回からは関西弁でしゃべりますのでご期待ください(笑)。


 先月までのエピソードを収録した単行本第一巻は1/18ごろ発売予定です。初版部数は少なめに絞られちゃって、だからたぶん品切れになるんとちゃうかなー・・・なるといいな・・・いや品切れになるということは欲しいのに手に入らないという人が発生するということだから良くはないけど、「ほらあ!! もうちょっと刷るべきだったよね!? 重版急いで!!」と小学館さんにドヤ顔で言えるといいな。ま、電子版もありますので、もし店頭で買えなかった場合は注文・取り寄せに加えてそちらも選択肢としてご検討ください。買ってね。

りんちゃんなう :サンデーS 2022年2月号2021/12/14



 ここから新章です。

 脚色するにあたっては、何を軸にするかが背骨になるわけですけど、私は『夜叉姫』を「姫たちが冒険を通じて、新しい読者と一緒に『犬夜叉』世界を、殺生丸さまや犬夜叉先輩を理解していく物語」と解釈しました。

 で、その過程を「道のり」として表現するため、「西への旅」という設定を持ち込んだんですけど・・・このロードムービー的というか珍道中ものというか、いわゆる『西遊記』フォーマットというのは、キャラクターの成長や物語の進捗状況を旅の行程に重ね、ドラマのゴールに向かうプロセスがわかりやすくなるという利点があって、少年漫画では昔からよく使われる手です。

  犬の大将は西国の大妖怪だったわけですから、姫たちが自分のルーツである『犬夜叉』世界の核心に向かう旅として、目的地を西に設定するのは筋が通るように思います。でもじゃあなんでアニメはそうしてないのかというと、それをやると『犬夜叉』登場キャラクターたちのいる武蔵国から離れてっちゃうという。あと「西国」っていうのが具体的にどのあたりかもわかんないし、戦国時代の情勢や地理の考証をどの程度あの御伽草子世界に持ち込むのかとかいう問題も。

 コミカライズでは一本道を突き進んだ方が焦点も絞れていいんじゃないかってことで採用しましたが、まだ史実と御伽草子のバランスの落とし所は探ってる最中で、ご当地ネタや名物を出すのかとか、方言はどうすんだとか・・・・どうしましょうね。あ、いま「蠱毒のグルメ」ってネタを思いつきましたが。ボツですか。そうですね。

 ただ、今回のネームを描いた結果、アニメとはちょっと役どころが変わりつつも、凱風(やわらぎ)師匠の登場が確定しました。(こっちの世界線ではもろはちゃんの生い立ちが変わったので、師匠の出番はカットかなあ)と思ってたのに、意外です。で、アニメ原作で師匠の声を演じてらっしゃるのは、拙作『絶対可憐チルドレン』で関西弁の瞬間移動能力者・葵ちゃんを演じていただいた、白石涼子さん。計らずもコミカライズでの師匠は「西の妖狼族」ってことになってて、これはもう関西弁決定かなと(笑)。一人称を「ウチ」にするのはちょっとヤリスギな気がするんで避けますけど、俊敏な妖狼族なわけだから、「ヒュパッ」は不可避。

「絶チルとか知らないから意味わかんない」という皆様には、コミカライズ世界線ならではのスペシャルサプライズゲストもご用意しておりますので、25日ごろ発売のサンデーS、ぜひお読みください。サプライズなので誰なのかは秘密ですが・・・ヒントは


むかし『犬夜叉』CDドラマで「レギュラーなのに影が薄い」といじられていたという噂。

 単行本第一巻は1/18ごろ発売です。高橋留美子先生と私の対談記事も収録。高橋先生の著作であれば間違いなく売れるんですけど、なにしろアニメオリジナル作品のコミカライズ、しかも描いているのが私なもんで、どのくらい売れるのかまったく読めません。ということはおそらく部数は絞り気味になるんじゃないかなーと思うんで、いまのうち書店で予約していただけると安心ですよ。俺が。



三ノ章『戦国の絆(後編)』:少年サンデーS 2022年1月号2021/11/29




 アニメ原作で描かれていた三姫の生い立ちは、「おとぎばなし」を意識してのファンタジー風味ですね。とわちゃんとせつなちゃんの「結界で守られた森の中で二人だけで育ち、悪い魔女の手先にその楽園を襲われた」というのはたいへんロマンチックです。一方コミカライズでは、戦国武家の子供が体験しそうな悲劇のイメージに仕立ててみました。前回キャラのシーン移動を牛車を使って簡略化したのを受け、「戦」のイメージが必要だと思われたので。
『源氏物語』の六条院御殿がモデルの豪華な寝殿造りのお屋敷で「本気出した殺生丸さまの甲斐性」をさりげなく(?)描写したところ、そこから「無女をアンドロイド乳母に見立てる」というアイデアが出て、「妖怪はときに恐ろしく、人間とは異質な存在だけれど、夜叉姫たちにとっては仲間や家族でもある」という物語にまとまりました。

 無女と一緒にいる小鬼、あれはもともと殺生丸さまが犬夜叉を陥れるため、無女演じる母君をいじめる役にキャスティングした「カナシバリ」という妖怪です。私はあいつらめちゃめちゃ好きで、あの眉毛と目つきやら体型やら着物やら、なんかもう全部ツボすぎてたまりません。キモカワ。そこで今回無女さんに再出演いただくにあたり、どうしても彼らも一緒にいて欲しくてお呼びした次第です。女房装束の妖怪の周囲にああいうのがたむろしてると雰囲気盛り上がるんで、「以前殺生丸さまの座組みで仕事して以来、その後も同じ現場で組むことが多くなった」的な俺設定・・・現場あるある。

 髭を剃って目つきが変わった渾沌さんはですね、高橋留美子先生との打ち合わせで「椎名版では敵キャラの美形度を上げると面白いかも」って話が出たのでやってみたんですけど・・まあ、「椎名時空に来るとそうなんのかwww」ということで(笑)。
 ついでに「かっこいい邪見さま」を描きたいという私の個人的な欲望も炸裂させてみました。七人隊にビビりまくっていたことなどを考えると、雑魚はともかくネームドの中ボス級相手にそんなに強いようには思えませんが(笑)、ここで何があったのかは後ほどもう少し詳しい顛末が出てくる予定。今は「子供たちを守るためにがんばった」ということで、アニメで邪見さまを演じておられるチョーさんの魅力的なあのお声を、『ガンダムUC』のギルボアさん風の芝居で脳内アフレコしてくださいませ。「ティクバを・・家族を頼む・・!(ドカーン)」

 言うまでもなく、ラストのとわちゃんのナレーションには、大勢に愛された名作『犬夜叉』、そして『夜叉姫』への私の思いをこめてます。アニメOP風に走り出すところでは、一期前半の主題歌『NEW ERA』を脳内再生してもらえると盛り上がるのではないかと思います。ていうか、意識して作りました。「走りだそう 連れて行こう 約束の場所へと」という(笑)。

 エピローグで封印されているりんちゃん改めりん様のイメージは、きちんと着付けた襦袢だと江戸時代の武家奥方風な気がしたので、もう少し古風な単袴と薄衣(ただし諸事情によりスケスケではない)に変更はしたものの、他は原作を踏襲。「大枠としてはアニメと同じ物語です」という意思表明でもあるんですが、まあ何度も言いますけどどこまでを「大枠」ととらえるかは人によって違うでしょうし、キャラの立ち位置や動機を含めて各所にアレンジは加えていきますので、原作アニメとは別物っちゃ別物、でもその世界線は意外なほど近いよという。私としてはいまんとこいいバランスと距離感で構成できてると思うんで、原作の何をどう活かし、どういう意図でどうアレンジしているのかを楽しんでくださいね。

 というわけで、ここまでが序章・旅立ち編です。この三話を収録した単行本第一巻は1/18ごろ発売予定、カラーページも再現した豪華仕様となっておりますので、ぜひお買い求めください。次号、新展開が始まる第四話の舞台は、成長した琥珀くん率いる退治屋の里となります。またコミカライズ世界線ならではのサプライズをご用意しつつ現在鋭意執筆中ですので、楽しみにお待ちください。


どこの誰かは知らないけれど誰もがみんな知っている :少年サンデーS 2022年1月号2021/11/06



 第三話、完成です。

 三話目は61P、ここまでで単行本一冊分です。アニメの放送中になるはやで出せるよう、毎月大盛りのページ数で描きました。おかげで週刊連載とあまり変わらない仕事量。単行本の発売は年明けくらいですので、無理せずそれまで待っていただくというのもぜんぜんアリだと思いますが・・・週刊に馴れていると執筆してからリアクションをいただけるまでの間が長くてつらいので、お小遣いに余裕がある方はぜひ11/25ごろ発売のサンデーS/2022年1月号でも読んでくださいませ。

 いちおうここまでが序盤の1エピソードで、これでこのコミカライズのテイストがだいたいわかっていただけるかと。椎名風味にあれこれアレンジしたり省略したりしつつ、でも物語の入口と出口はアニメ原作に近いとこにとどめる・・・というスタイルです。口に合った方はぜひこの先も『半妖の夜叉姫』のバリエーションとして楽しんでいただき、合わなかった方はアニメの方をご覧くださいね。



 絶チルの終盤から鬼のように集中して仕事してきて、さすがにちょっと人間らしい生活が恋しくなってきてます。ので来月からは少しページ数を減らす予定なんですが、それでも毎回50P弱ほどのボリュームにはなります。アニメ二期は2クール・・放送が終わって、視聴者がキャラに会えなくなってちょっと寂しいとこに第二巻を投入することで売れ行きを盛りたいという思惑もあるし、私としては版権ものの仕事を何年も続けていると自分が誰だか忘れられてしまうのではないかという不安もあり(笑)、できるだけ一気に描いてしまいたい。ただ、アニメの物語を大筋でたどるとなると、急いでも一年では絶対終われないですね、これ。始めるときに薄々気づいてはいましたが。

 アニメ二期のEDっぽい現代路線を描くという手もあったんですけどね・・・『半妖の天使・プリティー夜叉姫』みたいな。「妖怪が現れたんだぞ!変身するんだぞ、とわ、せつな、もろは!」みたいな。そんでピンチになると謎のマスクをした正体不明のイケメンが助けてくれるんですよ。「殺生仮面」っていうんですけどね(笑)。こんど高橋留美子先生にそういう番外編について相談して怒られてみます。