『犬夜叉』のトビラ絵に合わせてみたら、もろはの衣には袖がなかった件:少年サンデーS 2022年/8月号2022/06/30



 もう10話目・・・早い。あと2話で一周年ですよ。さすがに開始当初の「俺がwww高橋キャラ描いてるよオイwww」というテンションは収まって、自分の仕事として手に馴染んできている感。


 四凶編の前半は『犬夜叉』メンバーのその後を盛り込みつつ描きましたが、いまやってる四凶編後半の渾沌・窮奇戦はせつなの過去等、アレンジ世界線での『夜叉姫』背景情報を拾いつつの展開です。


 コミカライズでは3人がチームになるプロセスはだいぶ簡略化してます。一話目でとわにツンだったせつなが、三話目でもうデレてましたしね(笑)。それをさらに進め、三人ともが姉妹に近い関係にしたくて(三人の重心ができるだけまとまってる方が物語を単純化できるから)、「同じ両親を持つ双子」というとわ・せつなの絆と釣り合うだけの重さをアレンジ時空でのもろは・せつなの過去に持たせました。せつなにとって大切な存在なのだから、とわにとってももろははかけがえのない存在。同様にもろはにとっての双子も大切になるという・・・ついでにせつなの「もし一緒に育たなかったとしても・・」というモノローグは、(アレンジされたコミカライズ世界線でも、アニメでの関係を感じ取っている)という描写です。ここまで連載開始時にほぼ決定していた既定路線。


 <夢の胡蝶をせつなに授けたのが御母堂様>という展開も割と早めに決まってた・・・ように思うけど、どうだったかな。いや、少し前の打ち合わせで「すげえいいアイデア出ましたよ!! 御母堂様です! 御母堂様にやってもらいたい仕事がいくつか!!」とか言ってた気がする(笑)。御母堂様をアニメからさらにもう一歩踏み込んだキーパーソンにすれば、無口な殺生丸さまに代わって状況を説明できるし、彼の過ちを説いたり導いたりもできる唯一無二の存在が加わって物語進行が楽になります。私が考えたご母堂様の動きが高橋先生のキャラ解釈と違いすぎたらこの案は使えないなと覚悟してましたが、この先の行動に関してもおおむね許可がいただけたので、今後も御母堂様を頼りにさせていただく予定。まだちょっと先ではありますが、アニメとはまたひと味違う形でのメインキャラとの絡みも目論んでますので、御母堂様ファンはこの先もお見逃しなく。ていうか私が御母堂様めっちゃ好き。


 悪役の方もだいぶ悩んで調整。姫たちの状況がアニメとは変わっているため、渾沌と窮奇はもうほぼアニメとは別人。そのあたりはこの次の回、戦いの決着を描くパートで本格的に活きてくるので、まだ「窮奇弱すぎ」とか思うのは早いぞと・・・いやまあ渾沌と共にやられ役であることは誰の目にもあきらかなわけですが(笑)。やられ役というのは、やられる際に主人公たちの心の中の何かを一段押し上げる役目を背負っていて、だから構造上は彼らも夜叉姫たちの一部なのです。現在執筆中の第11話では仕込んだことがかなりうまくいったかなと思ってますんで、戦いの決着にご期待くださいませ。


 ところで予告しておきますが、夜爪はこの戦いでは逃げて無事なものの、あと二話、第12話であっさり死にます。こいつの死に様も割と早いうちにいいネタを思いついてて、描くのを楽しみにたんですけど、なかなか死ななくて・・・でもついに二ヶ月後に死ぬ夜爪。いやまあ誰も「夜爪どうなるのかな!?」ってドキドキしてないと思うからネタばらししたけど、もし彼の無事を祈ってた人がいたらごめん。


謎の榊原ボイス美女・・いったい誰ご母堂様なのか:少年サンデーS 2022年/07月号2022/05/29



 最初に読んで楽しんでもらいたい読者は高橋留美子先生。毎月ネームをチェックする作業が、読者だけでなく先生にとっても「おお、今月はそう来たかww」っていう楽しみになるといいなって。高橋先生クラスともなると、監修はけっこう大変なのですよ。膨大な量の商品や映像作品のチェックをしつつ、あの執筆量。わたしなんか月刊一本でいま余裕ないですからね。(ククク、原作はあるんだから割と余裕のあるスケジュールで動けるはず・・・しばらくは趣味にいそしみつつ新作のネームも)などと思っていたのにどうしたことだ。

 まあそんなわけで毎月高橋先生をちょっと驚かせようといういたずら心もあったのですが、さすがに「この先のアレンジ展開予定を今のうちに共有しとこう」って話になって、今現在もくろんでいることを洗いざらい自白。私のやりたいことと先生のイメージをすりあわせ、ラストまでおおよその形は見えました。ただ、これで各話ネームで先生を驚かせるハードルが上がり・・・いや原作者を驚かせてばっかだとまずいし、かえってチェックが大変だから。ちなみに内定をもらったネタには「もうこれコミカライズというより椎名先生の薄い本なんじゃ・・」ってものもあります。「現時点でもうすでにそんな感じだろ」というのはともかく、そのときが来たらまたお話ししますね。

 さて、九ノ章はこれまでの「異世界に来ちゃったよ!」パートがだいたい終わって、物語の全体像提示に突入したという感じでしょうか。アニメはキャラが分散しているところから徐々に一本の糸に・・・という作りなのですが、コミカライズではできるだけキャラの初期配置をまとめました。なのでせつなともろはは姉妹のように楓ばーちゃんに育てられ、就学年齢になると退治屋の里に預けられ、すでにいいコンビ。理玖と殺生丸はどうやら一緒に活動中。謎の七宝仮面の正体はまだ秘密ですが(笑)、彼はすでに犬夜叉たちの消息をつかんでおり、殺生丸チームの一員のようです。そして「夢の胡蝶」をせつなに取り憑かせたのは、ハマーン様ボイスのあのお方。アニメでの彼女の役割はたいへん面白かったものの(是露との舌戦は最高でしたね(笑))、無口なご子息に代わって複雑な状況の説明・調整役をお任せできるキャラは、この方以外いないと結論。コミカライズではアニメ原作よりも踏み込んだ関係者の一人として仕事をしていただきます。この後十・十一ノ章で、そちらの事情もかなり見えてくる・・・予定です。

 アニメ原作のせつなちゃんは、独りで厳しい世界を生き抜くことを余儀なくされ、タフさを身につけました。楓や琥珀やもろはたちに囲まれたコミカライズ時空の彼女は、いわばアニメよりもぬくぬくと育ったわけですが、でも彼らに出会ったことがやはり成長を促し、我々の知るクールで強いせつなちゃんを生むという展開です。

 窮奇さんは妹キャラとして味付けを添加。翼をとっぱらったのはなんか人間形態では邪魔そうで弱点に思えたからで、戦闘妖怪モードに変化したらちゃんと生えます。渾沌は「軍師キャラ」とし、<せつなちゃんが夜叉姫チームの頭脳・要である>という私の解釈と対に。<もろはちゃんは気配りができる優しい子><とわちゃんは二人の思いを飲み込む器>という構図です。劉備とわ・関羽せつな・張飛もろは。

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この敷き布を「風呂敷」といいます :少年サンデーS 2022年/06月号2022/04/26



 もうあれ以上風呂のウンチクは入らないなと思ってカットしましたが(笑)、「風呂敷(ふろしき)」はもともと風呂で使う敷き布だったそうです。本編でも触れたように「浴衣(ゆかた)」は本来は入浴するときに身につける着物。蒸気の直撃でヤケドしないように着た「湯帷子(ゆかたびら)」を、江戸時代になってからは湯上がりに着るようになり、やがて夏のカジュアルウェアに転じていったのだとか・・・現代でいえばキャミソールみたいなもんでしょうか。建物は広島の国史跡万徳院歴史公園に再現された当時の風呂屋がモデル。実際にはもっと狭いです。

 実は風呂を自作するネタはアニメの冥王獣の子供・冥福くんのエピソードでやろうと思ってたんですよ。あの甲羅って五右衛門風呂に良さそうだなと(笑)。それが竹千代くんを出すにあたり、アニメそのままの流れだと説明にけっこう手を取られそうだったため、コミカライズ版では冥福くんの設定を一部移植することに。その影響を受け、風呂は湯船ではなく熱源を調達することにしました。いや別に風呂は出さなくてもいいはずなんですが(笑)、前に触れた食事事情同様、「異世界にいる」という実感のため、そして自分の居場所を探すとわちゃんへの問いかけとして、私のコミカライズには必要な描写に思われ。


 二つの世界の違いを生活感覚に落とし込み、「どっちで暮らしたいか」をとわちゃんと読者に考えてもらいたいというのがこのエピソードの狙いです。けして姫たちの入浴シーンが描きたかったわけではなく・・・いや描きたかったのは間違いないんですけど(笑)、どのみち各方面に遠慮してちょっと肌の露出は控えめだし・・・いやでも私はもともとそんなにお色気描写がしつこいタイプじゃないと・・・いやいやいや。


 真面目な話、たとえばあの時代、平野部の海岸線には広大な遠浅の干潟が多かったはずです。それが江戸時代以降にほぼ全部ごっそり干拓農地にされ、やがてコンクリで固められ、生態系を根こそぎにして、現在我々の知る海岸線になりました。だから『この世界の片隅に』みたいな、大潮の日には海を歩いて湾を渡れちゃうような海岸を描くと、もっとそれらしく、なぜそうしなければならなかったのか、それで失ったものと得たものは何かっていう比較もできたかも。ただ、今の感覚ではそういう海岸の方が希で見慣れないわけで、説明を端折るために今回は省略。

 さて、今回は他にも女性の座り方や七つ玉ソロバン等どうでもいい考証を頑張ったわけですが、そんなことよりイヌヤシャーロキアンの皆様が気になるのは弥勒夫妻の家族計画ではないでしょうか。

 珊瑚ママの懐妊は私なりに『犬夜叉』と『夜叉姫』の隙間を埋めようとした描写で、あくまでもコミカライズ世界線での出来事ではあるんですが、もし作中の時間経過で赤子が生まれるようなら命名は高橋留美子先生にお願いしてみますね。

 まあ弥勒夫妻の第四子が、翡翠くんから十数年経ってからっていうのもちょっと強引かなとは思うものの、「『あれから』のあとも弥勒夫妻は子供はたくさん作ったはずではなかろうか」という犬夜叉史研究者たちの説を、私という歴史作家がそれっぽく自作フィクションに盛り込んだ・・・くらいに思っていただければ。ちなみに「翡翠くんのあと死産や早世が続いた」という説は時代考証としてはそれなりに説得力はありますが、悲しすぎるので私の時空では却下。

 群れるのも他人を使うのも嫌いだと思われる殺生丸さまが、いまんとこ理玖くん・りおんちゃんと組んでいるもよう。なるはやでラストシーンにたどりつくため、コミカライズ時空ではキャラの立ち位置はある程度まとめる方向で。アニメ見た人にも、ていうかアニメ見た人ほど「おっ、そう来たか!?」って新鮮に思ってもらえるような仕掛けを考えてますんで、ひきつづきよろしくです。


S/2202/05追記2022/03/28

 えー、鋼牙兄者は『犬夜叉』劇中で抜刀してることが判明しました(笑)。
自分で「飾りだ」とも言ってますね。記憶から抜けていても何度も読んでいるわけですから、潜在意識にこのシーンのことが無かったはずはない・・・というかこのちょっと前に「分が悪いな。ここはいったんずらかるか」というコミカライズ6話で意識してたセリフがあるので、まああれだ、
記憶から抜け落ちててもちゃんとオマージュしてるって、俺すごくねえ?
(ポジティブ)



アニメ『半妖の夜叉姫』関係者のみなさま、完走お疲れ様でした:少年サンデーS 2022年/05月号2022/03/27



 現場はいろいろと大変だったと聞いてますが、いろんなハードルをひとつずつクリアして名作『犬夜叉』の世界をまた描いてくださったこと、チャーミングな姫たちを産み出してくれたこと、るーみっくファンとして感謝しております。


 アニメで姫たちを好きになってくれた視聴者のみなさまには、夜叉姫ロスをコミカライズで癒やしていただけると嬉しいです。



 で、そのコミカライズ、今月号までが単行本第2巻収録ぶんとなります。構成が違うものの、ざっくり物語進行としてはまだアニメ一期の半ばにも行ってない感じですかね。前倒ししてアニメの放送中にもうちょっと描けると良かったのですが、絶チルの都合があったので是非も無し。


 さて、このエピソードでやりたかったことは


●三姫それぞれの覚醒・通過儀礼

●心の奥底に巣くう風穴への依存心を、同じように過去にとらわれた義弟の助けで笑い飛ばす弥勒さま

●珊瑚ママを支える飛来骨と子供たち

●『犬夜叉』と『夜叉姫』の橋渡しをする鋼牙兄者・凱風姐さん


 これを全部詰め込みつつ四凶の半分を片付けたものの、まだ屍屋さんも竹千代くんも是露さまも出てきませんね(笑)。せめて最後のダメ押しにと、理玖くんと一緒にりおんちゃんに登場してもらいました。


 りおんちゃんは例によってかなりアレンジを加えております。「父の間違いを説く」というのがアニメでの重要な仕事でしたが、コミカライズでは「家族の悲劇」に焦点を絞り、アニメとかなり違う、あんまり喋らない子に。

 理玖くんもアニメとはちょっとテイストが変わります。まだ彼が登場して間もない頃、打ち合わせで隅沢さんからお話をうかがった際、コミカライズ版ではぜひ盛り込みたいと思った主題がありまして、麒麟丸さまや是露さまとの関係もそちらに重心を置いて再構成してみます。

 鋼牙兄者の五雷指はサプライズとしてここで出すと決めてましたが、逆に「なんで使わへんの?」って思われてたかもですね。実は『犬夜叉』での鋼牙兄者は、私の記憶では腰の物を抜いたことがない・・・んじゃないかな、たぶん。なので「この刀はただのアクセサリーなんだぜ!」って言わせたかったのです(笑)。そして「出せないわ」つってた菖蒲(あやめ)さん、ちらっとカメオ出演していただけました。コミカライズでの彼女が兄者の嫁なのか、銀太たちと同格なのかは、読者の選択オプションとさせていただきます。

 あ、あとエピローグですやすや眠ってるせつなちゃんについて。もともと設定変更の理由は「眠れないということを描くためには、姫たちが眠るシーンを描く必要があるけど、漫画ではあまり多くは出せないだろう」「もし眠るシーンを出すときには、おそらく<安息>を表現する必要があるときなので、三人とも寝かせたい」ということでした。今回のような状況で「もろは・とわの二人が力尽きて眠ってる横で、同じように疲れているのにひとりだけ眠れないせつなちゃん」というのも悪くないとは思いますが、設定変更したことで「力を出し切って眠ってる子供たちを見る親世代」を演出することができました。絶チルでよくやってたやつですね。


 キャラクターたちの設定や道筋をアレンジするとき、私は「アニメ原作と違う時空を生きてるんだけど、縁は不変」みたいなことを意識してます。たとえば「もろはちゃんが初めて凱風師匠や鋼牙兄者と出会ったとき、アニメ時空での関係の記憶が彼らの魂の中にあって、初対面でも何か暖かいものを感じてるんじゃなかろうか」的な。逆にアニメ版でもろはちゃんがせつなちゃんや退治屋の人々と出会ったとき、コミカライズ版での関係を感じてるように見えたりすると素敵だなあ。コミカライズ読んでからアニメ見返すと、そんな風に見えませんか・・・ほら見えるようになってきた・・・(催眠攻撃)。


 ちな、アニメではたぶん「奈落」の名は一度も出てない・・・んじゃないですかね。コミカライズでも彼のことを指す発言はいくつかあるものの、やはり名前は出してない・・・はず。出した方が説明が簡単な気はするんですが、どうもキャラクターたちがそれを拒絶しているように感じます。共に戦った仲間たちとの思い出は大切だけれど、「奈落」という名前は口に出すのも不浄、彼の存在自体を消し去りたい・・・そんな風に彼らは思っているんじゃないでしょうか。なのでおそらく、回想という形でも彼がこの漫画に登場することはなさそうです。私は彼のいやらしさと切なさが大好きだし一度くらい自分の絵で描いてみたいので、今後もキャラクターたちと相談はしてみますが。


 とまあそんなわけで、次回はいよいよ、満を持して、お風呂ネタをぶち込みたいと思います。今回の原稿を執筆中に「時が来た。次回だ」という啓示を受けました。入浴シーンは日本の漫画・アニメの華なのです。お約束なのです。仕方がないのです。はたして権利者様の許可が出るのかどうか、お楽しみにッ!!!!(裏声)