ちょ、顔近い :少年サンデーS 2023年/4月号2023/02/25

 単行本ペースを上げるため、しばらくは48Pの大盛りでがんばってみます。今回盛り込みたい情報量が多く構成に苦労しましたが、高橋留美子先生に「すごく面白いよ!」と言ってもらえたのでたぶんいい出来です。

 はじめて阿久留の名が登場。「時空を司る神」「時代樹の上司」とすることで、ゲームマスターを一元化。同時に「天照大神(あまてらすおおみかみ)の愛犬」設定で、アニメ原作の「犬一族にだけ見える」に理由付けした形です。妖霊星についても是露さまの身に起きたこととイメージを重ねました。念のために言っておきますがこれ、日本神話に北欧神話やギリシャ神話のテイストを混ぜた私のウソですからね(笑)。

 是露さまが花魁(おいらん)風の衣装なのは戦国時代としてはすでにファンタジーなんですが、そっからさらに時代をさかのぼっちゃってるのでここは奈良時代風に。理玖が誕生した場面ではいつもの着物だったし、おやかた様たちもさほど古風ではないし、考証というよりは単に「過去のシーンであることを絵面でも示す」「キャラがお着替えするとちょっと嬉しいやん?」っていうだけの遊びとご理解くださいませ。
 理玖は原作アニメ通り、生まれてしばらくは感情が希薄だったようです。「人工的に作られたレプリカントが魂を獲得していく」というのが隅沢さんが理玖に抱いていた初期イメージで、これは多くの隅沢脚本に共通するモチーフだと思うのです。コミカライズは原則として「椎名高志のフィルターを通した高橋留美子作品」という切り口に引き寄せて再構成してますが、ここは外せない。

 おやかた様が持ってる剣の設定については、以前から『犬夜叉』ファンは気になってたと聞いてます。「コミカライズで補足できるといいな」と思ってたんですが、現状では十六夜さまのことにまで触れる余裕はなさそう。でも一応「おやかた様は自らの牙を剣に変え、愛刀『鉄砕牙』とした。のちに十六夜と出会って恋に落ちたとき、鉄砕牙に守りの力を付与して『人間を守る心がなければ使えぬ妖刀』を作った」という仮説に基づいて描いてはみました。
 妖霊星の破片と戦うシーンはアニメ原作通り鉄砕牙を使用、でも刀身は犬夜叉が封印を解いたばかりのときに似た、やや細身な姿です。また、妖霊星が本気を出してないため、おやかた様も大技は使ってません。殺生丸の前で冥道残月破とか使っちゃうと『犬夜叉』と矛盾しちゃう・・・まあ、多少間違いがあっても「コミカライズ版は別時空」ってことで、おおらかに見ていただきたい。なるべくないようにはがんばってますが。
 
 それより、私が今回一番見てもらいたいのは「顔近い麒麟丸さま」ですかね(笑)。『犬夜叉』オマージュを描いてて、(からかい気味に威嚇したあと、何か言うよな・・・説教とか教訓かしら?)って思ってたら、私が考えつく前に原稿の中の麒麟丸はふっと優しい表情になって謝ったという。細谷ボイスが聞こえる・・ダミーヘッドマイク収録音声で。あとこれ、殺生丸は自分がやられて悔しかったことを後年犬夜叉にやったことになりますね。相手の揺さぶり方は麒麟丸から学んだらしい(笑)。


 後半は魔夜中さまと、名乗ってないけどお華(はる)さんが設定を変えて登場。実は華さんの衣装はもっと明確に「逆髪の結羅」に寄せるつもりだったんですが、「人妻があんな露出はいかがなものか」という担当編集者と「結羅と関係ない子だし、これ以上寄せる意味ないんじゃない?」という高橋先生のご意見に合理的に反論できなかったため、あのような形に。ここは世界中の逆髪の結羅さんファンのために抵抗するべきだったかもしれない・・・合理的に反論はできませんが(笑)。

 コミカライズ版での朔の扱いは以下の通り。
1:用語としては「朔」は「新月」の古い呼び名で、半妖が力を失う日のことは「そのとき」とか「その日」と言う。犬夜叉は朔がそのときという体質の半妖。
2:四半妖のもろはも半妖扱い。犬一族の血をひく半妖は、みんな同時に力を失うらしい。その方が説明がシンプルだから。
3:妖力を失っても髪は伸びないらしい。

「妖力を失うことは、必ずしも致命的な弱点ではない」と言い切るところは、たぶん「アニメ版と決定的に違う、私の夜叉姫」です。背景設定の違いを反映したというだけでなく、私という作家があの子たちに託す思いがこもってるというか。あの瞬間は「養女」ではなく、「私のキャラ・私の娘たち」って感じました。

次回はいよいよ、犬夜叉たちが失踪したいきさつを明かします。
今回以上に情報量が多く、このままだと「回想の回想の回想」みたいなことになっちゃいそうなんで、ネームは絶賛苦戦中。最悪の場合作画が間に合わないかもっていうとこまで追い詰められてます。まあ、なんとかなる・・・んじゃないかな。わかんないけど。

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