TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第七話:超能部隊 前編 -Generation ZERO PARTⅠ-2013/02/23

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 ギャグ描写は減らしてるものの、ほぼ原作通りの展開ですね。原作では不二子の主観寄りに構成してましたが、アニメの視点はもう少し引いて、第三者目線で兵部少年を見る・・・・・っていうニュアンスでしょうか。バランスもいいし、この尺でよくこれだけの分量が入ったなと思います。それで窮屈な印象がまったくないのは演出と脚本の力量ですね。後編ではさらにそこんところがよくわかると思います。

 私としても思い入れのあるエピソードで、向こう見ずでお転婆な不二子の少女時代をゆかなさんが演じてくれるところは、執筆中も想像してこっそり楽しみにしてました。でもまさか実現するとは(*´Д`)。

 OPは・・・・・・・そうきたか、かっけええええ!! 背景の変更、フィルムの劣化やつなぎ直した跡など、芸コマすぎる(笑)。兵部のオーラだけが赤いのはもしや『天国と地獄』っ!!!



 超能部隊のアイデア自体はかなり早くからあったのですが、絶チルとしての私なりの切り口がなかなか見つからなくて攻めあぐねてました。が、「自由や個性を軽視する空気 vs 世の中の標準規格から外れた不二子たちとの戦い」の物語にすれば、絶チルそのものであることに気づいた次第です。

 戦前の日本人、特に都会の中流層のメンタリティーは今とそう大きくは変わらなかったようです。白黒の記録映像を見てると今とは違う別世界だったように思ってしまいがちなのですが、実際には色はあふれてて、若い女性はおしゃれと美味しいものが好き。一方、劇中のように巡査が若い人の服装について説教するというようなことは、この時期からすでによくあったそうです。ああいうのは戦争末期になってからだと思ってたので、ちょっと意外でした。

 ただまー今の世の中にも似たようなことはあります。手っ取り早くいいことしてる気になりたがるというか、自分がお行儀良くて善良であることをズレた方向で熱心にアピールしたいというか、他人を自分と同じ枠にはめてコントロールしたがるというか。ああいう体質は「戦争のせい」「昔の人のしたこと」では済まないのではないでしょうか。

 そんなわけで、不二子が「人と違ったっていいじゃない! 自分の値打ちや生き方を、他人に決めさせたりなんか絶対にしない!」とタンカ切って大暴れするシーンこそがエピソードの中心的主題で、描いてて実に気持ちよかったです。とはいえ、嫌らしい「空気」「同調圧力」との戦いは、誰かをぶちのめせば解決するというものではありません。騒ぎのせいで部隊はピンチに陥り、不二子は自分の短絡さを悔やむことになります。

 物語のバランスが『UNLIMITED』としてはギャグに振れ過ぎちゃうので、不二子の555キック等は割愛(アイスクリームは19世紀から一般の人も食べてたんですが、注文に応じてその場で製造する「ソフトクリーム(ソフト・サーブ・アイスクリーム)」はこの数年前にアメリカで普及し始めたばかりで、日本に伝わったのは戦後だそうです・・・・まー『絶チル世界ではすでにコメリカから伝わっていた』ってことにしておいてください(笑))

 他にもたとえば菊池と犬神は若干バカが直ってますね。原作の陸軍本部盗聴シーンでは画面の隅っこで犬神じーちゃんがこっそりハト捕まえて食ってたりするんですけど、そういうのはなし(笑)。芥の吃音は大人の事情と、あと尺を少しでも詰めるために修整。
 

 その代わり「懐中時計はクライマックスに演出上のシンボルとして使う予定だったのを入れ忘れ・・・・もとい入らなかったので、時計屋はカットしてはどうでしょう。描くのめんどくさいし」と提案したところ、「それなら逆にアニメには入れましょう」ということで原作を補完していただくことになりました。まあ、どう使うかはだいたいわかると思いますが、そこは後編で。

 EDでさりげなくちゃんと菊池がフンドシ派・夏見がモモヒキ派だったりするところにも、スタッフの原作への愛がありますね(笑)。



 兵部少年の声は、このシリーズでは平野さんにお願いしました。言うまでもなく「薫は兵部の分身である」というヒントですね。群像劇でもある絶チルですが、やはり薫は作品の中心です。<ミス・絶チル>であるところの平野さんを、アイコンとしてスピンオフ作品の心臓部に配置するというのは名案だったと思います。

 兵部は「大人になりたい」という強い思いから超能力で急激に成長するため、前作で登場したミッドウェー戦のときにはすでに遊佐ボイス。しかし終戦後はそれ以上大人になることを拒絶して、今に至るという。(´;ω;`)ウッ…

 その遊佐さんはアバンタイトルと、まさかのED主題歌での登場。EDがどーんと遊佐さんのソロというのは貴重なので、遊佐ファンは全員CDだけでなく『UNLIMITED』のブルーレイを買おうネ


 


 早乙女隊長役は、初代TVシリーズのサイボーグ009役をなさっていた森功至さん。そのオマージュである超能部隊のリーダーとして、ドンピシャな配役ですね、ありがとうございます。
 小さい頃は「サイボーグ009」や「マッハGOGOGO!」に夢中だったし、思春期には「ガッチャマン」「ガンダム」で、そして漫画家になってからは拙作『GS美神』の吸血鬼ピートの親父・ブラドー役でお世話になっております。

 早乙女は大変優れたリーダーです。ただ、「理想や理屈は目的ではなく、手段に過ぎない」と言い切っちゃうところに、彼の冷酷さと野心の片鱗が。苦学して東大に入って「カミソリ(頭がよく切れる、の意)早乙女」とか呼ばれてたタイプじゃないでしょうか(笑)。やがて戦争で歯車が狂い、悲劇に至るわけですが・・・・・その辺についてはまた来週。

 というわけで次回は兵部少年対ゼロの空中戦!! ふんどしじゃないから恥ずかしくないでごわす!!


TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第六話: 闇、走る -As true as a lie-2013/02/17


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 いよいよ物語は核心に。社会からはみ出した不良少年たちの王国・カタストロフィ号に迫る危機。兵部とヒノミヤの決定的な対立。



 今回、兵部は薫の無邪気な甘さについ「いつまでたっても幼い頃と同じく、皆本、皆本だ! ノーマル共はなぜこうも忌々しく、そしてやすやすとエスパーの心を乱すのだろう・・!」とか言っちゃうわけですが、私はあそこがもう切なくて切なくて、元は自分のキャラだということを忘れて萌え。

 薫は兵部とよく似た道を歩む運命を背負っている、いわば彼の分身です。自分の全てを託せる「女王」との出会いを、兵部は彼女の生まれる何十年も前から待ち続けてたのですよ。そしてその薫はようやく目の前にいるのだけれど、まだ<やがて現れる彼の「女王」の器>にすぎないのです。

 目の前の薫の中の「女王」に手が届かないもどかしさ、かつての自分に対する甘美な痛ましさ、信じてやるにはあまりにも非力で未熟な上に「あの男」を思い出させる皆本への不信、それでも捨てきれない希望。そういうこれまで我慢してた万感がこみあげてきて、今の薫には通じるわけがないのに、気取っていたポーカーフェイスが崩れるのも構わず本音を言わないではいられない
 ていうかなんで私、あんな可哀想なキャラ作っちゃたんだろう(笑)。

 体に限界が来ている痛みと、心の痛みが同時に来ちゃうという脚本・演出がまたクるものがありますね。さらに遊佐さんの芝居が絶妙。必死で自制しつつ、でも抑えきれずにあふれちゃう感情っていう。
 その後のバトルでのサディスティックな態度にも、歪んだ形で思いの一部をぶつける快感があったりなんかして、演出にも音響にも脚本にも作画にも「やられた・・!」感が。私が動かすとあそこまでボロは出さなかったと思うのですよ。私の中の兵部がブレーキをかけますんで。

 あとで遊佐さんとお話ししたとき「あの兵部は、台本読んで私の中に見えてた兵部より、もっと兵部でした!」と一生懸命お伝えしたのですが・・・・まあこのセンセイは遊佐さんの兵部が好きでたまんねえらしいという気持ちだけは伝わったんじゃないでしょうか(笑)。



 ところで、五十嵐監督は繊細な感性とバランス感覚の持ち主で、アンリミにアニメ的につきぬける快感と、映画的な美意識やエロティシズムが絶妙にブレンドされて入ってるのは監督の手腕ですね。
 男性の描写に「エロティシズム」とか言うと「BLかああっ!!Σ(; ゚Д゚)ガタッ」って言う人多いですけど(笑)、実際にはそれは大人の鑑賞に耐えるドラマの中には当たり前にあるもので、そっち方面に大げさに解釈するのが最近のファンの流行りというだけです。

 監督ご本人も「そういうのちょっとわかんないんで・・・」っておっしゃってますし、私も猪爪さんも「いや同感ですよ」と。
 むしろ我々みんなガンダム好きなんで、打ち合わせでは「ガンダムにたとえると」とか「ガンダムならこうなる」みたいな男らしい話が多いです(男らしいのかそれは)。

 だからたとえば2話でヒノミヤがリミッターを受け取るシーンの演出では「あそこは最初芝居が淡泊だったんで、リテイクしたんですよ。『もっとねちっこく、吐息がかかるカンジで!』って」「ですよねええええ!」みたいなことはやってますが、そこは別に、特に女性向けだとかそういうことでは全然ありません。敵同士であることを偽り、互いに化かし合っている二人の間に、虚実が混じりながらも絆が発生するというシーンですから、映像言語として当然そうあるべきだということです。

 というわけで(?)EDは男祭りパート2、兵部・ヒノミヤ編。こっちは若干女性ファンを意識してると思うんですけど、まあ曲も歌詞も映像もカッコイイからいいでしょう、デュフフフフwwww。CD買ってね!



 さて、今回はひじょうに気になるヒキで終わっているわけですが、あのラストに関しては当然キャラの内面の解説とか一切しないしできません。そしてあの続きにはものすごい展開が待っております。いや、大げさでなく、かなりキてます。で、その状態でいったん物語は過去に戻るじらしプレイ

 漫画を描いた身としては、「一回やったことをもう一度やるよりは何か新しいことをやりたい」という気持ちと、「自分の描いたものがそのまま巧みに映像化されるところを見たい」という気持ちの両方があります。超能部隊編は思い入れのあるエピソードで、それをひじょうにいいフィルムにしていただきましたんで、原作ファンも未読の方もぜひぜひ楽しみにしててください。前後編で2話分です。今回の続きはそのあとってことで・・・・ものすごいことになるんですけどね!



TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第五話 :ストレンジャーズ -Portrait of the family-2013/02/09

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 すっかりパンドラに打ち解けつつあるヒノミヤ。無法者たちのひとときの休日・・・・・・・お察しの通り、これから何かが起こるフラグです。


 まさかのマッスルから始まったこのエピソードですが、当然のことながら彼は本作では脱ぎません(笑)。のちに駐日ロビエト大使として辣腕をふるう、有能なサポートメンバーとして登場。三宅さんは「あ、じゃああの股間からビーム出してたのとはちょっと違う感じですね? ちょっとシリアス・・・・シリカマ・・・・」とおっしゃりつつ声をアテてくださってました、ありがとうございます。シリカマて(笑)。
 ちなみに三宅さんは『マイティ・ソー』じゃないですか。んで中村さんは『キャプテン・アメリカ』。モブを演じるときお二人で仲良く楽しそうに芝居してくれてて、「おおっ、ソーとキャプテンが花屋敷でキャッキャウフフしているwww」と個人的にこっそり喜んでましたがアンリミとは関係ないですね、すいません。


 東山さん演じるユウギリの可愛さが今回の背骨。マジかわいい。リアル幼女のような芝居ですがリアル幼女よりはるかに可愛いという。まさに幼女・オブ・ドリーム。毎回「ん・・!」とか、台詞になってない発声の芝居が多い彼女ですが、それだけでもすごい存在感ですよね。
 私はキャラクター、特にヒロインや子供は<他人になびかないエゴ>があった方がキャラの生命を感じます。だもんで世話を焼く紅葉に「ひとりできめられる!!」と逆らうところなんかは大変ツボです。シナリオ段階で「あ、いいな」と思ってましたが、実際に芝居が入るとさらにキュンとしました。

 「エスパー×ノーマルの対立」というのは、本作では時には大人と子供の対立であり、時には持つ者と持たざる者の対立であり、個性と秩序の対立であり。私はどっちかが理不尽な悪であるとわかりきった対立は、単純すぎてつまらない。わかりやすくてやっつけると気持ちいいけれど、現実のそれはもっとモヤモヤしたものだからです。主義主張のどちらが正しいかではなく、対立によって生まれる断絶こそが、絶チル世界の中では最大の敵。今回のエピソードは私が書いたものではありませんが、描かれているのはやはりそういった類のものですね。

 遊園地の群衆は誰もユウギリに石を投げたりはしません。むしろ彼女の超能力の危険さを考えれば、冷たい態度になってしまうのは当然と言えます。しかし兵部は、誰の中にもある、それで納得してしまう心が嫌いです。

 世の中には「正・誤」「勝ち・負け」以外にも「美しい・醜い」「優しい・残酷」という価値観があります。「自分は正しい。相手は間違っている。だから相手の心に無頓着になっていい」と思うとき、ときに人間は醜く、残酷です。そういう行いをしているにもかかわらず、「正しい」がゆえに自分のことを善良だと思っている人は多い。また、「積極的に石を投げなければ荷担したことにならない」という考えも「寛容」とはほど遠いのではないでしょうか。そういった「マジョリティによる<正しい>残酷さ」への復讐のため手を汚すことも、兵部の生きる目的の一部です。迎えに来たのが三幹部でなく兵部だったら、たぶん大人げなくアンリミテッド(ひどすぎる)。

 まあでも、そーゆームツカシイことはともかく、とりあえずは「いい悪いはともかくユウギリちゃんぺろぺろ(*´Д`)」と思っていただければいいんじゃないでしょうかね。絶チルは<規格から外れた人間><社会の異物>を美少女として描くことから出発しました。萌えは断絶を超え、他者にコミットする突破口のひとつなのです。



 紅葉の回想は、『UNLIMITED』では初めての、原作をそのまま使用したシーンですね。ああいうことが実際に起きていることを考えると胸が痛みますが、パンドラのエピソードとして素晴らしい出来映えです。松田プロデューサーが「ここは原作そのままで! 真木は超カッコ良く!!」とこだわってくれました。

 真木・紅葉・葉の三人は日本人ではありません。名前はひきとってから兵部がつけたもので、でも本名は何なのかとかどこの国の出身で人種・民族は何系なのかなどについては漫画的にボカしてますんで、追求しない方針でよろしくです。都合の良いときだけ人種や国籍がキャラ付けになり、青い髪とか赤い眼の人間もいる・・・それがアニメ・漫画時空。
 兵部は真木のことを「司郎」と呼んでて、ここはシナリオ会議でも私がそうお願いした部分です。のちに兵部が彼を一人前と認める事件があり、そのときから名字で呼ばれることになります。鼻っ柱の強い真木が苦労人のナンバー2になるきっかけでもあるのですが、まあそれはいずれ描く・・・・かもしれない。葉のつけている羽の首飾りについても、いずれ機会があれば。悪夢を防ぐネイティブ・アメリカンのお守り「ドリームキャッチャー」の欠片なんですけどね。



 パティは今回も無口に活躍。少佐の痛ケーキはおそらく彼女の作ですね。あと同人誌頼んだのもたぶん彼女。思うに、ソッチ方面に目覚めてそういうものが存在することを知ったばかりで、やや人目をはばかりつつ楽しむ趣味であるという認識がイマイチなのではないでしょうか(あるある)。
 私は小林沙苗さんのパティ大好きなのですが、いまんとこ喋らないで小芝居してる方が面白いので、台詞はありません。パティは初登場は殺し屋だったのに、なぜか次のOVAとCDドラマでは腐っていたというキャラ。なのでその節は小林さんを混乱させたのではないでしょうか、すいません(笑)。アンリミでは毎回「今回こそは中の人をお呼びしてパティを喋らせるかどうか」を話し合ってまして、ここでも「いや・・・まだでしょう」という結論です(笑)。まーキャラは必要な時が来たらこっちが黙らせようと思っても自分から喋りますので、タイミングはパティ本人に任せましょう。


 完成してから気がついたのですが、少佐の靴下は白(笑)! でも事前にスタッフから問い合わせがあったら何と答えたかと言われるとよくわかりません。喪服だから黒? それじゃオッサンくさい? かといってカラフルなのもどうなんだろう・・・・やっぱ学生服には白かなあ。とりあえず裸足はないな。ご意見あれば受け付けます(丸投げ)。

 お忘れかと思いますが、前作・小学生編のラストの兵部は、残り少ない寿命をあることに使って命を捨てようとしてました。それは思いとどまったものの、このシリーズでは大暴れしちゃってて、アンリミテッド・モードでガンガン寿命削ってます。結果として彼の余命はこのままだとせいぜいあと数ヶ月。この世界が本編に収束するのか、完全に分岐した世界へ行くのか、我々が『UNLIMITED』の彼をどこに着地させるつもりなのか、その辺については曇り無き眼で見届けてくださいませ。


 ここまでのエピソードは「序」、次回からは「破」。終盤の「急」に向けての怒濤の展開になります。お見逃しなく!!

TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第四話: 絶対領域 -Children Territory-2013/02/02

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<『OVER THE FUTURE』を歌いながら待ち伏せする少女>
<日本の管轄区域に入ったその瞬間、恐ろしい能力で攻撃してくる3人の敵エスパーチーム>
というイメージは早い段階から猪爪さんの中にあり、満を持してのザ・チルドレン解禁です。そしてOPが日本語に! 青い! シルエットの少女の姿も解禁!! あれは薫だったのかああ!!(知ってた)

 ザ・チルドレン・アンリミテッド・バージョンいかがでしたでしょうか。彼らはこのシリーズでは<最強の宿敵>です。なので残念ながら(?)、アンリミテッド・モードで本気出した兵部にはトリプル・ブーストしても勝てません(笑)。兵部さん最強。<最強のエスパー犯罪者の謎を見極めるヒノミヤの物語>という構成だしね。そしてそんな無敵の兵部の心の中の弱く柔らかい部分に、ヒノミヤは惹かれ、受け入れられ、踏み込んで行くという。

 ヒノミヤのまだ知らない兵部を知っていて、敵でありながら深い絆を持っているらしいバベルチームは、兵部の救いとなる可能性を秘めています。よそ者のヒノミヤが彼らとどう関わり、兵部をどう理解していくのか・・・・というのもこのドラマの重要なポイントで、兵部はなぜチルドレンに、とりわけ薫にあれほど執着するのか、そのあたりの本編に関わる謎を解くこともまたヒノミヤに課せられた使命なのです。
 ちなみに真木・紅葉・葉の三人は、チルドレンにかすり傷ひとつでもつけちゃったら、兵部の態度が2週間くらい冷たくなることを知ってます(笑)。なのであいつら相手では本来の実力の半分も出せなくてかわいそう。あんな連中に手加減しろとか無茶ですよ少佐(;´Д`)。



 というわけで無印絶チルとつながってきましたね! ドラクエⅢやってたらⅠのマップが登場したときのような感動です。
 私としては登場時にヒノミヤ目線の<見知らぬ人物>だったキャラクターたちが、だんだんその声や言動でもって、原作や前作とイメージが統合されてくプロセスがたまんない。それが今回のシリーズでスタッフが作ろうとした味わいのひとつです。無印ファンには、見知ったキャラや世界を違う切り口・視点から発見していく快感があるはずなので、それを楽しんでくれたみなさんは訓練された絶チルファンですね、ありがとうございます!

 仕事が終わるとみなさんのよく知ってるノリのチルドレンに戻るあのエピローグ、あそこは私が書いたのを猪爪さんが採用してくれたものです。「皆本と賢木の前では安心してクソガキでいられる」っていう、ギャグであると同時にちょっと甘いシーンで、なかなかイイ感じにふたつの作品の間を埋められたのではないかなと。面倒見のいい賢木はクソガキの悪ふざけにつきあってやって、皆本と不二子が話し合う間の子守をしているのです。どさくさまぎれの「京介ヒキョーなんだよ! あんなピンバッジ知らねーよ!!」は反則かなーと思いつつも、かなり気に入ってますすいません(笑)。

「『UNLIMITED』で初めてチルドレンを知った」というみなさんは逆に、兵部さんを困らせる生意気で憎たらしい小娘たちが背負っているものにも興味を持っていただけると嬉しいです。『絶対可憐チルドレン』単行本好評発売中♪



 作画はかなり超絶。兵部と薫のドッグファイトなんか、ものすごいですよね。ラフ撮りの段階から「うおおおお、すっげえええ!」つってましたけど、音響が入るとまたすごくて、仕上がってみたらさらにすごかった。

 被さってくるヘリのローター音や超能力の風切り音、中川さんのチルドレン襲撃のテーマ曲、夜の東京湾での壮絶なバトル、物理法則とそれを超越するパワーの両方を感じさせる超能力の描写、ギリギリの攻防の中で交錯するキャラクターたちそれぞれの思惑。ハードな空気で始まり、最後は漫画的につきぬけて船が空を飛んじゃうという、アニメならではの流れも素晴らしかったです。自分の作品が映像化され、あんなフィルムにしていただけるというのは漫画家冥利です。桃太郎の耳の動きの小芝居とかね、細かいとこまでアニメファンとして堪能させていただきました。



 声優さんの魅力や印象を語り出すとキリがないので、いつも最小限、そのエピソードの核心に関わる部分にだけ絞り込むようにしております。まーいちいち名前を挙げずとも、私が出演者全員それぞれの持ち味にウットリしていることはもうみなさんご存じでしょうけど(笑)・・・今回も素晴らしいですね。

 たとえば皆本の「本領発揮で自信満々」→「出し抜かれる」→「チルドレンの愛らしさに救われる」の流れとか。皆本はチルドレンには甘いけれど、敵に回すとあれでなかなか手強くて食えない奴なわけで、中村さんの演じるその辺の多面性の彩りがグッときます。
 中村さんには予告も担当していただいてますが、シナリオ会議では「<ナレーター中村悠一>と<皆本>の中間くらいがいいな」って話をしてたのですよ。中村さんは台本読んでサクッとそれを察してくださって、一発でその味を出してくれたんで、関係者一同「さすがわかってくれてる!!」ってどよめいてました。

 兵部は薫や皆本や仲間の手前カッコつけて余裕ぶってますけど、実は今回、チルドレンとの再会に浮かれて油断してたせいでかなり追い込まれて、内心では冷や汗をかいてました(笑)。で、遊佐さんはヒノミヤにかける「よくやった」のひと言の中に、借りを作った弱みや安堵なんかのいろんな感情を凝縮してくれてて、キュンってしますねキュンって(*´ω`*)。

 兵部が自分の弱さを明かして感謝を示してくれたことに対して、本来の任務を忘れて喜んでしまうヒノミヤってのがまたイイですよねえ。老獪さと愛らしさを併せ持つゆかなさんの不二子、頼りになる誠実さと三枚目を演じてもサマになる包容力がある谷山さんの賢木、生意気で甘えん坊の末っ子不良少年をバッチリ演じてくれてる羽多野さんとか・・・ほらキリがない(笑)。

 ザ・チルドレンの収録は一人ずつバラバラになるかもと覚悟してたのですが、ちゃんと三人一緒にマイクの前に並んでもらえて、以前のままの息ぴったりの演技を披露してくださいました。平野さん白石さん戸松さんの三人が並んでる姿ってもうホント美しくて可愛くてやべえ。あんまりアフレコには立ち会えていない私もこのシーンの収録にはスタジオに駆けつけ、美女三人がきゃっきゃしながら「お・よ・げ!」と合唱してるのをガラス越しに見つつ、「うわこいつらホント腹立つwww」と、ウットリ目を細めてました



 新EDは皆本・賢木の中の人が歌う「BRIGHTEST LIGHT」。いやもう曲もいいし、歌っているお二人とも素晴らしい。
 そこにあの映像・・・・・・・ごめん初見では噴いたwwwそして放送までに30回は見たわwww。

 最初は「さじ加減おかしくねえかこれwwww!?」と思ったのですが、5回を超えたあたりから爆笑が「デュフフフ」という笑い声に変わってたので、何かが解き放たれたように思います、ありがとうございます。

 EDは数パターンあって、エピソードの内容に合わせてちょくちょく変えるそうですよ。「OUTLAWS」はまた何度か流れますが、「BRIGHTEST LIGHT」はシリーズ中、おそらく一回だけの限定レア物になりそうで、これと対になっている兵部・ヒノミヤの「DARKNESS NIGHT」のEDも準備中。2曲が収録されたCDは来週発売ですね。合わせて聴くと破壊力がまたすごいので、ぜひお買い求めくださいませ♪


 次回はまさかのマッスル登場。ちゃんと三宅さんお呼びしましたw。
 エンディングとモブにはずっといたけど、マッスルを話に絡ませて大丈夫か『UNLMITED』! そしてユウギリの能力がついに・・! あと柏木さんもちょっと出るよ!! 見てね♪

BRIGHTEST LIGHT♪ :週刊少年サンデー13/10号2013/01/31

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今日は漫画関係の更新です。でもアニメに関連して、各話解説に入りきらない話を。

 これまで原作を知らなかったけどTVアニメで興味を持った・・・・というみなさまありがとうございます。「うっすら名前くらいは知ってた」という方は、アンリミを見るとチルドレンが育っているので「あれ?」と思うみたいですね。そうなんです、あの子たちいま漫画では中学生なんです。前のアニメも最終回は小学校の卒業式で終わってます。

 キャラはずっと子供のままにしてた方がイメージアイコンとしてはいいだろうとは思うのですが、私にとって子供というのは「いずれいなくなってしまうからこそ愛おしい存在」なので、前回のアニメが終わるタイミングで中学生編に突入しました。絶チルは私の『赤毛のアン』なのです(笑)。
 『UNLIMITED』は前作『絶対可憐チルドレン』の続き、原作の卒業式~兵部の帰還までの間のお話です。細かいとこでいくつかパラレルワールドになってますけど、それはあんまり気にしないように。


 さて、今回のアニメシリーズは外伝作品なので、「作風が違う」と言われまくってるのはまあいいです。ていうかもうめんどくさくなってきたので、今後は「そおかなー? センセイ前のアニメもアンリミも原作も見分けつかないけどなあ?」とボケようかなと。

 ただですね、「設定のセンスが古い」っていうご意見に関しては、それはたいへんごもっともで的を射ているとは思うのですが、なんかこう、釈然としないというか(笑)。
 だって絶チルの作品世界は、横山光輝、石ノ森章太郎、藤子・F・不二雄、萩尾望都、竹宮恵子などの作品群へのオマージュでして、それは私にとってもアニメスタッフにとっても懐かしいものなのですよ。だから「べべべ別に最先端の設定を一生懸命考えたとかじゃないんだからねっっ!?」って思っちゃうという(笑)。
 いやもちろん、そういう作品を知らない世代のフィールドにも、絶チルが踏み込んでいるからこそ言っていただける感想だとは思ってます。あと私の世代はギリギリ、戦後の漫画・アニメの歴史を俯瞰できましたが、今の子にはそれは難しいですしね。

 漫画やアニメでは多くの場合、「こんな超能力がある世界」を描きます。でも私の場合「漫画やアニメのような超能力は現実には存在しない」というのが前提。その上で「じゃあもし漫画やアニメのような超能力が本当に存在したら」という話を描いてて、それは似たようなもんなんですけど、やっぱりちょっと違うのですよ。その結果、<僕の考えたカッコイイ超能力>ではなく、<昔懐かしい、超能力もののクラシックなスタイル>をモチーフとしました。

 味つけがどうあれ、思春期の少年の中二的な全能感と自意識の葛藤が、「超能力モノ」の根っこにある共通の主題だと私は思います。そして、設定の部分をシンプルでクラシカルにすることで、主題がより普遍的なものとしてアピールできるんじゃないかなー・・・・みたいな。アニメにしていただけた今、ちょっと後悔しないでもないんですが(笑)、私が元々そういうスタイルの方が好きだし得意なのでしょうがない。そういや芥川龍之介も作品発表当時、古典を題材にしたら「新しさがない」みたいなことを言われてたそうですよ。あ、一緒にしちゃいけませんか、そうですか。


 ちなみに連載開始当時にもお話ししたんですが、ザ・チルドレン自体が<超能力がないバビル2世>と、<言うことをちっともきかないみっつのしもべ>という見立て。そのライバルキャラである兵部はもうちょっとストレートに<ダークサイドに堕ちたバビル2世>で、部下の真木・葉・紅葉はそれぞれロデム・ロプロス・ポセイドンのパロディです。黒づくめの真木、音波使いの葉は鳥の羽とトサカのような髪型がトレードマーク。紅葉は長身で、テレポート応用能力で空間を操作して馬鹿力を発揮します。兵部にはバビル2世以外に東丈、エドガー、ソルジャー・ブルーも入ってますが、なぜかジルベールが混じってますね(笑)。

 あとキャラの名前の多くは源氏物語の登場人物や帳の名前にちなんでます。これはまあ、「美少女エスパー育成漫画」ということで、源氏の君が紫の上を育てて嫁にしたこととひっかけてはいるんですが、特にそれ以上の符丁はありません。キャラの名前考えるのって結構大変なんですけど、絶チルは登場キャラが多いじゃないですか。最初の読み切り版ですでにメインキャラが6人。だもんで、源氏物語から名前を借りてくることで統一感を出してみたら、これが予想以上にいい案配だったもんで。

 偉大な作品を生み出してくれた大先輩たち、特に横山光輝先生、石ノ森章太郎先生、藤子・F・不二雄先生、萩尾望都先生、竹宮恵子先生、そして紫式部先生たちに感謝します。私の中では同じくらい偉大です。