物語はいよいよ終盤ですが、城に到着してすぐ麒麟丸が出てきちゃうと「それ城というより一般庶民の家だろう」という自分ツッコミが発生するため、配下たちが出迎えることにしました。その流れにより、この期に及んで中ボス戦です。
金禍銀禍は本来『犬夜叉』のネタで、アニメ完結編に収録しきれなかった他いくつかのエピソードと共に『夜叉姫』に挿入されたようです。放送時から「もし登場した場合、紙媒体においては二度目の登場となるわけだから、コミカライズではちょっとヒネりたいな」と考えてて、当初は「一族の中では変わり者でケンカする気がなく、でも母ちゃんに怒られるので人前でだけ仲悪いフリをしてる。それが夜叉姫たちには八百長だとバレちゃう」というのを構想してたんですよ。
「・・なんかお前ら本気で戦ってなくね?」「何を言うか、わしらめっちゃ仲悪いぞ!なあ兄者!」「弟の言う通りじゃ!もうマジ殺し合っとる!のでお前ら早くどっか行ってくれ!これ以上戦うとわしらどっちかが死んでしまうではないか」という(笑)。
最終的にはアニメ版の女禍をベースにした若い女性の双子とし、前述の仲良し設定だけは活かして、中ボスに落とし込むことにしました。蒼禍紅禍という名前はすぐに出てきて、ということは口調は「そうかしら」「こうかしら」しかない(笑)。あとで家族に「『少女革命ウテナ』ってアニメにそんな口調のモブキャラがいる」と指摘されたんですが、私は見てないのでよく知りませんでした。まあでももし読者が「ウテナじゃん!」と思ったとしても、『犬夜叉』当時、90~2000年代アニメの雰囲気が出ていいんじゃないでしょうか・・・いやウテナ見てないので実際はよくわかんないんですけど。いさぎよくてかっこいい主題歌だけは知ってますけど。
冒頭に登場した河童は『犬夜叉』にモブとして出てたのをベースにデザイン。私としてはさっさと話を進めたいので、あそこでああいうキャラを出すつもりはありませんでした。なのになんだかしらないけど「いったんリズムに変化をつけないと先に進めない」という警告が無意識から来て、仕方なく従ったというか。いまも「いやこのくだり省いてすぐに冥道丸出した方が話早いよな?」と頭では思ってて、でも経験上こういうときは直感に従った方がだいたい正しいんですよね。なんだろう、麒麟丸の組織に層の厚みを感じさせる描写だから・・・でしょうか。日本の妖怪というのは怖いやつや強いやつばかりではなく「ヘンテコな隣人」でもあるわけで。あと型どおりのバトルが続くよりは、この方がるーみっく風味かも。
今回は琥珀の動きも予想外でした。本来の構想では「蒼禍紅禍vs夜叉姫」「冥道丸vs退治屋・雲母」となる予定だったのに、河童のせいで琥珀以外のメンバーが全員蒼禍紅禍の方に行っちゃって、「どうすんのこれ」と戸惑いながらキャラに任せて描き進めてみたところ、どうやらこれは琥珀が過去を克服するエピソードであるらしい。まあたしかに『犬夜叉』のラストで命は救われたものの、あのあとあっさり彼の心の傷が癒えるはずはありません。コミカライズではその部分に注目してキャラクターを描いてきてました。視聴者の想像に任されていた「アニメ版お頭パーソナリティーに至るまでのプロセス」を補完するのは、この漫画らしいかもしれませんね。とはいえ「今日ここで私の中の奈落を殺す」というセリフはかなり原作の琥珀というキャラに踏み込むもので、私自身も驚きました。おそるおそる高橋留美子先生に見せたら「面白い」と言ってもらったので、これはもう腹をくくって描くしかないなと(笑)。というわけで、次号は増ページでそれに挑みます。