OVAアフレコレポート(5/5) ― 2010/05/11
この日一番印象に残っているのは「チルドレンと交代した影武者ロボットが、英語長文をスラスラと読み上げてみんなを驚かせる」という、川口監督の『もえたん』をオマージュしたシーン。
セリフを英語で、しかも長文でというのはどう考えても難しいので、ふつうはまあなるべく避けたいシチュですね。なのになぜ強行したかというと・・・・・ワタシが「ククク・・・ここ、和訳でなく英文にしましょう、それも思っきし長文の。三人は苦労なさるでしょうけど、その分ファンへの見せ場になりますぜ」つったからなのですが(ひどい)。
で、<ネイティブスピーカーがセリフを読んだ音声を用意><役者さんはそれにリピーティングする形で、演技を乗っけながらセリフを言う><長文なのである程度の長さごとに刻んでテイクを重ね、最終的にデジタル編集して完成>という段取りで収録開始。
「では、最初は薫、お願いします。まずは通して最後まで演ってみてもらえますか」
「はい。お願いします」
と、始めたそのとたん・・・・・薫役の平野綾さん、一発OK出してしまいました。
まったくトチらず、発音にも演技にも問題なく、尺もぴったり。文句の付けようもないので、編集の必要もなくそのまま音源として採用。スタジオの全員が呆気にとられて息をのみ、次に歓声と拍手とため息。三人とも前日までに演技プランと共にじっくり準備して、ほぼ完璧に仕上げてきてくださっているのですが、本番で最初のテイク一発OKというのはさすがに誰も要求も予想もしてません。綾・・・・おそろしい子!! ((((((((
;゚Д゚))))))))
平野さんご本人だって、そこまでやってやろうなんて考えてなかったはずなのですよ。ただ、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、彼女はこの少し前に体調を崩されて、そのために今年予定していたスケジュールの一部変更を余儀なくされ、たいへん悔しい思いをしてらっしゃいました。その後気持ちを切り替えて「とにかく仕事に全力を尽くします。まずは薫、一生懸命やります!」とおっしゃってくださってて、そのエネルギーと集中力を爆発させてくれたのだと思われ。いわゆる「ゾーン・フロー状態」というやつですね。
お会いするたびにたくさんのパワーと魅力でワタシを虜にしてしまう平野さんですが、またも彼女に圧倒・魅了されてしまいました。
もちろん葵役の白石涼子さんも紫穂役の戸松遥さんも、ものすごい練習をしてきてくださってて、結果もバッチリでした。が、一発目の平野さんがそれだったもので、直後には目を丸くして固まってらして(笑)、それがまた可愛いのなんの(*^_^*)。
プレッシャーの中、超気合いを入れて葵を演じてくださった白石さん。アスリートのように気持ちを切り替えて、ご自分の紫穂に集中してくださった戸松さん。この日の三人三様の魅力的なお姿は、きっとこの先も何度も思い返すと思います。
・・・・ああ、イジワルして本当によかった(ひどい)。
そしてこの三人が一緒という奇跡のユニット<ザ・チルドレン>の歌う主題歌『☆Seventh★Heaven☆』は可憐GUY’Sの挿入歌『…Out
of control…』と両A面で、7月28日リリース。中学生になったチルドレンの愛らしい乙女心に、ワタシは一足お先に萌えまくってヘビーローテーションで聴きまくってます。
あとは・・・・複数の人格を持つ難しいユーリ役を演じていただいた井上麻里奈さんは演技も素敵だったけど、あのロングヘアーからのぞく耳がセンセイ個人的にツボでたまんなかったとか、桃太郎と澪の二役を演じていただいた釘宮理恵さんには、センセイTVシリーズで言わせたいくつかのセリフが申し訳なくて相変わらずビビってたとか・・・・・・個人的すぎる感想ですね、すいません。ちなみに作家仲間としてお友達になっていただいた浅野真澄さんとはツイッターの話で盛り上がってしまいましたが、あの場では俳優さんとしてこうお伝えすべきでした。「畑先生、ワタシ、川口監督の三人で話をしたとき、『浅野さんは作家・タレントとして本当にスゴイ。そして、俳優としてやっぱりスゴイと思う』という共通認識でした」
そうだ、<パティが教室でジャン●読んでる>というシーンで「そこ、『銀●』読んでますのでそういうリアクションを」と無茶ぶりされ、お美しく颯爽とした小林沙苗さんが、「え・・・・?」と途方にくれてらしたのが可愛かったです(笑)。TVシリーズで役を引き受けていただいた時には、まさかこんなキャラになるとは予想してらっしゃらなかったと思います、すいません(笑)。最終的にどんなリアクションになったのかはDVDでご確認ください。
とまあ、だらだらと書いてしまいましたが、ワタシが心から「この人たちとずっと仕事をしたい」と思っていることはおわかりいただけるかと。何度でも言いますが、あなたがたに演じていただけて、ウチの子は本当に幸せです。ありがとうございました。<(_
_)>
OVAアフレコレポート(4/5) ― 2010/05/10
さて、そんなわけで当日のワタシは、ただでさえ仮映像と今録れた音を脳内合成して仕上がりを想像するのに忙しいのに、自分のことでテンパっておりました。・・・・が、それでもやはり、ワタシはこの日も出演者の皆さんの演技には聞きほれてましたね。
たとえば今回皆本はあんなことやこんなとこになるわけですが、そうすると中村悠一さんのヒキダシの多彩さはホント凄いなとか思うわけですよ。
我々はシナリオ読めば「ダメ絶対音感」が起動して、だいたいの役者さんの声と芝居が頭に浮かんだりするじゃないですか。でも実際に演じていただくと、どの方もかならずこっちの予想を上回りますからね。「おお、そうくるのですか!」っていう。キャラの感情変化があるときなんかは特にそうで、ウチの子は裏があったりすることが多いせいもあって、彼らの俳優としてのハイスペックがかなりよく見える作品なんじゃないかと自負してます(まーそのぶんご苦労をおかけするわけですが)。したがって、中の人ファンにもかなりアピール強い作品だと思うのですが、どうか。
OVAはスペシャルな一話として、兵部や賢木もチルドレンと同じくらい活躍する仕様になっております。でまあ、何がどうなるかは申せませんけど、<キャラがふだん心に秘めている部分を露わにする瞬間>が、遊佐浩二さん谷山紀章さんの声でお楽しみいただけるという。・・・・・センセイ生で聞いててたまんなかったですぜ(乙女回路作動中)。
ほか具体的に女性ファンに喜んでいただけそうな話は・・・・・・・うーん、この日は初めてお目にかかる方も何人かいらしたのですが、時間的にもバタバタで、ご挨拶やお礼もそこそこだったもので・・・・・・。まーでも可憐GUY'Sネタだけは何か書いておかないわけにはいきませんね。
休憩時間に武道館ライブにお誘いいただいてありがとうございました、谷山さん! ライブを控えてワクワクとテンションが上がってきてらっしゃるタイミングだったせいもあり、いつにもまして演技にも普段の表情にも魅力的なオーラがありましたよ。というわけでOVAは武道館にいらした一万人のGRANRODEOファン全員にぜひ買っていただきたい(←「きわどい商売」)。
遊佐さんとお話しはできませんでしたが、ラジオなどでチルドレンの話を時折してくださってるとうかがっておりましたので、収録後「兵部を可愛がってくださって光栄です。そして歌も素敵です」という気持ちをこめてアイコンタクト&ご挨拶したところ、最高の笑顔を返してくださいました。だからたぶん気持ちは通じてる・・・・・・・ 後半はちょっと自信ないけど(笑)。
あとツイッターでフォローしあっている中村さんに
「ヒマなときはからんでくださいねー」とお願いしたところ、照れた様子で目をそらし「いやでも最近ゲームするヒマもないんですよね・・・・・・」
結果、翌日早速リプライいただき、その後もちょこちょこかまっていただいております(笑)。どうみてもファンの間では有名な、いわゆるアレです、ありがとうございます(笑)。
挿入歌『・・・Out of control・・・』はこの三人です。完成データをフルバージョンで聴いた時には、センセイまたもや悲鳴が出ました(笑)。『BREAK+YOUR+DESTINY』でハマっていただいたファンのみなさまは待望の、そして初めて聴く方も「カッコイイ!」と思っていただける曲です。いやホント、曲にも詞にも歌にもしびれました。さすがに中村さんも今回はグッときていただけたようですんで、まだインタビューで「歌はちょっと・・・」とおっしゃっている遊佐さんも時間の問題ですね(何が)。
OVA『絶対可憐チルドレン』挿入歌『・・・Out of control・・・』、シングルは<ザ・チルドレン>の歌う主題歌『☆Seventh★Heaven☆』と両A面、7月28日リリースです!
(つづく)
OVAアフレコレポート(3/5) ― 2010/05/09
で、ほんの二言ほどですが、声の出演をさせていただきました。
ちなみに通常、アニメの録音はまず全体を通して録音し、その流れで録りにくい部分はあとで抜き録りします。全体通しての録音作業を「本線」と言いまして、これがまあみなさん一般的に思い浮かべるアフレコ風景ですね。大勢の役者さんの芝居のセッションは楽しいのですが、狭いスタジオで大勢がいっぺんに演じるにはいろいろ技術が要りますんで、新人の方なんかはキツいのではないかと想像します。自分の出番でどのマイクを誰と使うかとか、移動の際他の役者さんにぶつからないよう動くとか、諸先輩に遠慮しつつスタジオの席の位置を考えるとか(笑)。なにより恐ろしいのは、トチると全員の演技が一時ストップするということですね。
ワタシは素人ですので、当然抜き録りです。が、それはそれで、他の役者さん全員手が空いているということでもあります。基本そういうときは休憩しに外に行かれるのですが、残った方はくつろいでその演技を見てたりするのです。事前に軽く練習をして、『絶望先生』の畑先生出演シーンをチェックして(笑)、「おそらくは暖かくワタシの芝居を見守ってくださるだろう役者さんたちの視線に耐えつつ、ビビらずにセリフを言えてる自分」を必死にイメージ。チビらずにいる自己イメージがだいたい出来上がったと思われたので、腹をくくって当日現場に行ったところ・・・・・・・その場でセリフが変更に。
台本にボールペンで指示を書き込みます。
「なにこれ!? なんかめっちゃ『プロの現場でよくあること』っぽい流れじゃね!? 役者っぽい!! これ今すごく本物の役者さんっぽいよ!!」
冷や汗をかきつつ、ワタシの心の奥の中二がちょっと面白がって喜んでます・・・・・・くっ! 邪気眼が疼く・・・!!
そして松岡音響監督、容赦ありません。ディレクションがマジなの(笑)。
「んー、そこ、キャラクターがいる場所は**でしょう。そういうときは****な感じに声出しますよね。もう一回行きましょう」
「はい、すみません、お願いします」
「演技のとき、身振りもしてみましょうか。その方が感情が出ますから」
「はい、ありがとうございます、お願いします」
邪気眼が・・・・さすがにもう疼かない!!(笑)
OK出るまでスタンリー・キューブリック映画並みにリテイクいただきました(笑)。みなさん笑ってらしたとは思うんですけど、こっちは振り返って調整室見る余裕なんかありませんから、リテイクのたびにビビりまくってましたよ。セリフ二言なんだからもう覚えたろうに、最後まで汗でしわしわになった台本構えて熱演(笑)。緊張で記憶が定かでないため、思い出せないのですが・・・・たしか平野綾さん、白石涼子さん、浅野真澄さん、中村悠一さんは間違いなくいらしたはず。「センセイ、がんばれー♡」という声援もいただいたような気がするのですが、もったいないことにそれが事実なのか妄想なのかも判然としないという。
まあ、手をかけていただいただけのことはあるというか、あとで聴かせていただいたら、ワタシにしてはかなりマシだったように思います。あくまでもワタシにしては、なのですが(^_^;)。OKいただいて、スタジオに残ってらした役者さんたちに拍手いただいた時は、恥ずかしながら最高の瞬間でした(笑)。またしてもいい思い出をありがとうございました、川口監督、松岡音響監督、そして共演者のみなさん(←ツッコミ待ち)。
あとで中村さんに「いやー、良かったですよ。あんな演技アプローチで来るとはさすがです」、平野さんに「ディレクションにちゃんとついて行ってましたよ! 先生すごい!!」」と褒めていただいたワタシの演技がどれなのかは、DVDでお確かめください。あきらかにそこだけアレな感じでので、すぐわかりますけどね(笑)。
(つづく)
OVAアフレコレポート(2/5) ― 2010/05/07
ところで、センセイはとうとう声優デビューしてしまいました。
13話の時にはモブでしたが、今回はセリフのある役です。
そりゃね、嬉しい気持ちはありましたよ? アニメファンなら一度はアフレコに憧れたりしません?
でもさあ、センセイもう中年で、自分が得意なことと不得意なことはすっかりわかっているわけですよ。しかもワタシは死ぬほどこのOVAが売れて欲しいと思ってるのね。そこに自ら品質を落とすようなマネをしてどうするという。そして、にもかかわらずちょっと嬉しい中二な自分への嫌悪もあったりなんかするわけですよ(笑)。
だいたい、あのときモブシーンでマイクの前に立っただけで、ワタシはもう気が済んだというか。楽しかったけど、予想をはるかにうわまわるガクブルっぷりだったもんで。
あのすごいメンバーに混じって「おおお!」とか演技してですね、あのシーンは男性だけでしたから、後ろでは女性のみなさんが座って、面白そうにこっち見てる・・・・・ような気がするわけですよ(笑)。しかもそれ、普段好きで見てる作品のヒロインたちなんですよ? 加えてあの日は鶴さんと國府田さんまでいらっしゃいましたからね。想像するだけでもキツくねえ? もし、万が一、好きなヒロインたちの声でよってたかって「死ね、三流漫画家♡」とか野次られたりしたらワタシはいったいどうすれば・・・いえ、もちろんそんな人はワタシの病んだ心の中にしかいないわけですが。あと、それはそれでちょっと気持ち良さそうだな(笑)。
とにかくワタシとしては今回、強硬にこう主張したわけです。
「いや、それでセールスが一枚でも増えるなら恥のひとつやふたつはかきますよ? かきますけど、原作者が出演したからって、ユーザーはなんにも嬉しくないです。素人の演技や発声は気持ちいいものじゃないですし。そーいやもう30年以上も昔『●●●●●●』に●●●先生が出演されたときのこと、今でも覚えてますよ。先生のことは大ファンだったけど、子供心に(差し障りがある上に長いので以下略)」
・・・・というわけで、晴れて役をいただきました、ありがとうございます。
最終的には担当に「携帯コンテンツで『原作者を捜せ』という懸賞プレゼントをやります。宣伝にはご協力いただけますね?」と詰め寄られ、さらに絵コンテに「このキャラ、椎名センセイに似せて」というト書きを発見。よその監督に「固辞すると何かマズイでしょうか」とたずねたら、「アニメスタッフの士気に関わりますよ。視聴者に対し、原作者がアニメに納得して仲良くやっていることをアピールする意味もあるのです」と言われ。
わ・・わかったわよ! 川口監督がやれって言うなら・・・や、やってあげるわよ! 言っておくけど、す、好きでやるんじゃないんだからねっ!? そりゃ、ちょっとはうれ・・・何言ってんのよ、このばかっ!!!
まーね、やりゃあここでこうやってネタにもできるわけだし、13話でいい歳をしてあんなに緊張してしまった小心者の自分とその敗北感にリベンジするのもアリかなと。ただひとつ、最後まで納得できなかったのは・・・・『絶望先生』では久米田康治役を神谷浩史さんが演じたのに、なぜ椎名高志役は中村悠一さんではないのかと(笑)。
(つづく)
OVAアフレコレポート(1/5) ― 2010/05/06
某月某日、某所でOVAのアフレコが行われ、もちろんワタシは見学に行かせていただきました。
みなさんお忙しいので、スケジュール的に一度に収録するのは難しいだろうと思っていたのですが、一人も欠けずに集まっていただけました。そうそうたる役者さんがずらりと揃っていらっしゃるのを見たときには「ああ、本当にまた演じていただけるんだなあ」と、かなりグッときましたね。
今はもう、自分の漫画から聞こえてくるのは全部この人たちの声と芝居です。でも中学生編のそれはワタシの頭の中の妄想だったわけで、それが現実になったという変な感覚。
収録はみなさん一年間つきあったなじみのキャラだけあって、サクサクっと・・・・・・・・・・というわけにはいかないのがこの作品。例によって30分番組としてはかなり時間をかけて、TVシリーズからのキャラの微妙な成長を表現してくださいました。
今回に限ったことではもちろんないのですが、みなさん前もって驚くほど入念にプランを立ててきてくださってて、それを現場でのセッションでガシガシ修正・調整してくださるのね。ワタシ自身がキャラの陰影をネチネチと考えるタイプなので、役者さんたちがそこを誠実に分析・読解してアウトプット、フィードバック修正していく様子は、なんかもうたまんない。「ああ、わかってもらえた!」っていう。職種はまったく違うけど、単に「演じていただいた」というカンジではなく、「一緒に作っている」という手応えが味わえるというか。
だから声が載っかっていくのは、目の前で自分のモノクロ原稿に、熟練したアーチストの手でていねいに美しい色がついていくような快感です。「そんな色、自分では思いつかなかった。でもたしかにそこはその色です、ありがとうございます!」みたいな。
そして音響監督さんはひじょうにきめ細かい演出をする方で、ワタシはTVの第一話のときから、この方のバランス感覚とか場面をイメージする力、キャラ読解力がものすごいのに感服していたのですよ。演技指導がもうね、いちいち全部メモしておきたい。リアリティーとアニメ的ファンタジーの狭間で、重視すべきところはどこで、それはどんな手触りなのか。端で見てるとすんごい作劇の勉強になるんで、ワタシがスタジオに行くのはまあ、役者さんたちの仕事を見たいというアレももちろん大いにあるわけですが、松岡音響監督に学びに行ってるというのが本当のところだったりもします。
で、ちょこちょこと鋭い演技指導が入り、試行錯誤しながらテイクを重ね、OK出たときにはみなさんほっとして満足そうないい顔をなさるという・・・・・これが実にイイ(笑)。
そんなわけで、劇中の子供たちが少し成長し、大人たちもそれに合わせて変化している様子がお楽しみいただける芝居が収録できたと思います。
(つづく)