決着:サンデーS増刊 2025/06月号2025/04/25



 ようやく描けた麒麟丸と殺生丸の戦いの終わり、いかがだったでしょうか。

 アニメはあくまでも夜叉姫の物語に主眼をおき、『犬夜叉』後日譚であることを最小限に抑えた作りでしたが、コミカライズは『犬夜叉』外伝二次創作として殺生丸を背骨に据えて再構成。主人公として娘たちの成長を描きつつも、実は殺生丸の成長の物語でもあったという仕掛けです。なので最後は殺生丸と麒麟丸の一騎討ちで締めました。「一撃で勝負が決まり、一瞬敵が勝ったかと見せて実は主人公勝利」の演出は、子供の頃から何度も見てきたベタすぎる流れやなあとは思いつつ、でもここはそれしかない・・というか他にもっといいのを思いつかないのでベタにやらせてもらいました。


 りおんと麒麟丸の関係等はだいぶ端折ってシンプルに。単純に「正気をなくしてワルモノになってた」としたことでページ数はだいぶ省けた一方、悪役としては薄味になっちゃったかもですね。アニメの終盤とは麒麟・殺生の力関係がいろいろ逆転しちゃったりもしてますが、でもまあ「麒麟丸もまた、殺生丸が救いたい家族のひとりだった」「少年の日の憧れで、亡き父と重ねていた」という別方向の厚みが入ったし、アニメオリジナルの名作『天下覇道の剣』続編っていう趣も増したので、これはこれでヨシ。あと「<麒麟丸が希林先生をぶん殴る>が<殺生丸が麒麟丸をぶん殴る>に変わってる」という細かすぎるネタに自分でウケてたんですけど・・細かすぎてどうでもいいか(笑)。


 今回の私のお気に入りシーンは実は決闘よりもエンディングよりも、「殺生丸への思いを語る邪見」です。あの二人の出会いはTVアニメ版『犬夜叉』のオリジナルエピソードで描かれていて、滝で人頭杖を授かってる回想はそこを拾ったものですね。アニメではちょっとコミカルに描かれて邪見さまは「キレー・・!!」とか言ってますけど、「戦場で出会った殺戮の天使・殺生丸の強さと美しさに一目ぼれして、すべてを投げうって生涯を捧げる」とか何それエモくてたまんねえ。その心情を語る年老いた邪見さまにそっと寄り添う琥珀ってのを追加できたのは、邪見ファン&琥珀ファン冥利でした。小さいシーンではありますが、高橋留美子先生の戦国御伽草子世界を巧みに掘り下げた隅沢先生への敬意と、私からのキャラクターたちへの愛を込めて。劇中の殺生丸さま同様、私も高橋先生や隅沢先生の背中を追いかけているのです。


 さて、これで物語の戦いはすべて決着です。次回はページ数を増量してのエピローグその1、現代編。思った以上にいいネームが出来上がって高橋留美子先生と担当編集者に褒めてもらいましたので、楽しみにお待ちください。