S/2202/05追記2022/03/28

 えー、鋼牙兄者は『犬夜叉』劇中で抜刀してることが判明しました(笑)。
自分で「飾りだ」とも言ってますね。記憶から抜けていても何度も読んでいるわけですから、潜在意識にこのシーンのことが無かったはずはない・・・というかこのちょっと前に「分が悪いな。ここはいったんずらかるか」というコミカライズ6話で意識してたセリフがあるので、まああれだ、
記憶から抜け落ちててもちゃんとオマージュしてるって、俺すごくねえ?
(ポジティブ)



アニメ『半妖の夜叉姫』関係者のみなさま、完走お疲れ様でした:少年サンデーS 2022年/05月号2022/03/27



 現場はいろいろと大変だったと聞いてますが、いろんなハードルをひとつずつクリアして名作『犬夜叉』の世界をまた描いてくださったこと、チャーミングな姫たちを産み出してくれたこと、るーみっくファンとして感謝しております。


 アニメで姫たちを好きになってくれた視聴者のみなさまには、夜叉姫ロスをコミカライズで癒やしていただけると嬉しいです。



 で、そのコミカライズ、今月号までが単行本第2巻収録ぶんとなります。構成が違うものの、ざっくり物語進行としてはまだアニメ一期の半ばにも行ってない感じですかね。前倒ししてアニメの放送中にもうちょっと描けると良かったのですが、絶チルの都合があったので是非も無し。


 さて、このエピソードでやりたかったことは


●三姫それぞれの覚醒・通過儀礼

●心の奥底に巣くう風穴への依存心を、同じように過去にとらわれた義弟の助けで笑い飛ばす弥勒さま

●珊瑚ママを支える飛来骨と子供たち

●『犬夜叉』と『夜叉姫』の橋渡しをする鋼牙兄者・凱風姐さん


 これを全部詰め込みつつ四凶の半分を片付けたものの、まだ屍屋さんも竹千代くんも是露さまも出てきませんね(笑)。せめて最後のダメ押しにと、理玖くんと一緒にりおんちゃんに登場してもらいました。


 りおんちゃんは例によってかなりアレンジを加えております。「父の間違いを説く」というのがアニメでの重要な仕事でしたが、コミカライズでは「家族の悲劇」に焦点を絞り、アニメとかなり違う、あんまり喋らない子に。

 理玖くんもアニメとはちょっとテイストが変わります。まだ彼が登場して間もない頃、打ち合わせで隅沢さんからお話をうかがった際、コミカライズ版ではぜひ盛り込みたいと思った主題がありまして、麒麟丸さまや是露さまとの関係もそちらに重心を置いて再構成してみます。

 鋼牙兄者の五雷指はサプライズとしてここで出すと決めてましたが、逆に「なんで使わへんの?」って思われてたかもですね。実は『犬夜叉』での鋼牙兄者は、私の記憶では腰の物を抜いたことがない・・・んじゃないかな、たぶん。なので「この刀はただのアクセサリーなんだぜ!」って言わせたかったのです(笑)。そして「出せないわ」つってた菖蒲(あやめ)さん、ちらっとカメオ出演していただけました。コミカライズでの彼女が兄者の嫁なのか、銀太たちと同格なのかは、読者の選択オプションとさせていただきます。

 あ、あとエピローグですやすや眠ってるせつなちゃんについて。もともと設定変更の理由は「眠れないということを描くためには、姫たちが眠るシーンを描く必要があるけど、漫画ではあまり多くは出せないだろう」「もし眠るシーンを出すときには、おそらく<安息>を表現する必要があるときなので、三人とも寝かせたい」ということでした。今回のような状況で「もろは・とわの二人が力尽きて眠ってる横で、同じように疲れているのにひとりだけ眠れないせつなちゃん」というのも悪くないとは思いますが、設定変更したことで「力を出し切って眠ってる子供たちを見る親世代」を演出することができました。絶チルでよくやってたやつですね。


 キャラクターたちの設定や道筋をアレンジするとき、私は「アニメ原作と違う時空を生きてるんだけど、縁は不変」みたいなことを意識してます。たとえば「もろはちゃんが初めて凱風師匠や鋼牙兄者と出会ったとき、アニメ時空での関係の記憶が彼らの魂の中にあって、初対面でも何か暖かいものを感じてるんじゃなかろうか」的な。逆にアニメ版でもろはちゃんがせつなちゃんや退治屋の人々と出会ったとき、コミカライズ版での関係を感じてるように見えたりすると素敵だなあ。コミカライズ読んでからアニメ見返すと、そんな風に見えませんか・・・ほら見えるようになってきた・・・(催眠攻撃)。


 ちな、アニメではたぶん「奈落」の名は一度も出てない・・・んじゃないですかね。コミカライズでも彼のことを指す発言はいくつかあるものの、やはり名前は出してない・・・はず。出した方が説明が簡単な気はするんですが、どうもキャラクターたちがそれを拒絶しているように感じます。共に戦った仲間たちとの思い出は大切だけれど、「奈落」という名前は口に出すのも不浄、彼の存在自体を消し去りたい・・・そんな風に彼らは思っているんじゃないでしょうか。なのでおそらく、回想という形でも彼がこの漫画に登場することはなさそうです。私は彼のいやらしさと切なさが大好きだし一度くらい自分の絵で描いてみたいので、今後もキャラクターたちと相談はしてみますが。


 とまあそんなわけで、次回はいよいよ、満を持して、お風呂ネタをぶち込みたいと思います。今回の原稿を執筆中に「時が来た。次回だ」という啓示を受けました。入浴シーンは日本の漫画・アニメの華なのです。お約束なのです。仕方がないのです。はたして権利者様の許可が出るのかどうか、お楽しみにッ!!!!(裏声)


鋼牙くん大活躍中です :少年サンデーS 2022年/04月号2022/02/25



 連載開始から半年で、ようやくもろはちゃんの「紅夜叉」フォームが登場です。漫画は白黒だし動きや音の情報がないので、変化がわかりやすいように、でももろはちゃんらしさを損なわないようなアレンジを試み、高橋先生の意見もうかがった結果あのような仕上がりに。

 変身アイテムの紅についても悩みまして、最終的に名前は「不知夜(いざよい)の紅」、デザインも京貝紅風の蛤としました。真珠はコミカライズではもろはちゃんの体内にあるという設定ですので、紅には付属してません。

 もともと「十六夜(いざよい)さまの紅」は、原作漫画にはないTVシリーズ『犬夜叉』のオリジナルエピソードに登場した、犬夜叉のお母さんの形見です。全シリーズの中でも屈指の傑作回なので、ご存じない方はぜひ配信等で見てほしい。そのアイテムをもろはちゃんの変身アイテムにするというのは素敵すぎる設定ですね。

 ただ、実はその紅、件のエピソードではとある事情で失われた・・・ということになってまして、『犬夜叉』との連携度を高めにしているコミカライズ時空では、それが再登場するのがちょっと気になります。あれこれ理屈を考えてはみたものの、もう別物にするのが手っ取り早いなと。だもんで、コミカライズ時空でのもろはちゃんの紅は「不知夜の紅」というアーティファクトであって、お祖母さまの形見「十六夜さまの紅」ではない・・とご了承ください。

 ちなみに「十六夜」も「不知夜」も読みは「いざよい」です。「いざよう」とは「躊躇う」という意味で、だから「十六夜の月」とは「なかなか出てこない月」のこと。「不知夜」は「いざよい」の古い当て字らしく、「いざ」というのは「知らず」とセットで「いざ知らず」と使う語なので、「不知」を当てたのだと思われます。昔の人の言葉遊びなんですね。

 凱風師匠はもろはちゃんの育ての親でこそなくなりましたが、コミカライズ時空でもちゃんと師匠ポジション。このあとまだもうひと働きしてもらう予定で、コミカライズ用にアレンジした設定を調整する仕事で大活躍してもらってる感があります。さすが中の人がウチの葵ちゃんと同じなだけあり、キャラに助けられたような手応えです。

 蛾ヶ御前さまも、アレンジ展開にぴたりとはまる形で出てきたんで私もびっくりしたというか。半妖の里をオミットしたんなら出てこないと思うじゃないですか。作品に魂が入るとこういうことがよくあるので、いい仕事できてるんじゃないでしょうか。デザインは「御前(レディー)」と「蛾」を強調するためにちょっとだけ変更、台詞もガガさま寄りに(笑)。


 今回はもろはちゃんのウェイトが高めですが、このエピソードは戦いを通じて登場人物全員が一歩前に進む姿を描くのが狙いです。とわちゃんとせつなちゃんの詳細は次回に持ち越しとしたものの、とりあえずとわちゃんの夜叉スイッチが入るシーンは高橋留美子先生に喜んでもらえましたよ( ´∀`)bグッ!


 三姫だけでなく鋼牙アニキや弥勒夫妻にも見せ場をご用意していて、なのでヒキは「風穴」を持った敵との対峙としました。アニメ原作でも「まるで風穴だ」つってたし、いっそ風穴そのものにした方が、弥勒さまの心に巣くう迷いと正面対決できるだろうと。ページの都合でどこまで入るかわかんないけど、可能な限り全力で私のキャラ解釈をぶち込んでいく所存ですので、次回もご期待ください。


重版出来! :少年サンデーS 2022年/03月号2022/01/27



  単行本第一巻、売れ行きがたいへん好調だそうで、ありがとうございます! 初版が少なくていろいろと心配してましたが、緊急重版が決定しました。とりあえずはいい滑り出しということでホッとしました・・・高橋留美子先生には「やーりーたーいー!」ってダダこねて、サンライズさんでは隅沢さんはじめスタッフのみなさんに「喜んでもらえるような仕上がりになるよう頑張りますので!」って言って始めた仕事なんで、絞った初版部数がぜんぜんハケなかったらどうしようかと。今後もアニメともども一緒に楽しんでいただけたらと思います。

 発売中の週刊少年サンデー本誌・9号には、第一話が出張掲載中です。

 



 さて、第五話からは弥勒さま・珊瑚ママ・鋼牙アニキが本格参戦です。

 ガンダムファンにはおなじみ「通常の三倍!!」というセリフ・・・・すいません、入れちゃいました我慢できませんでした(笑)。

『犬夜叉』での鋼牙アニキは四魂のかけらを脚に仕込んでいたわけですが、それを失っても仲間をぶっちぎる速さを誇ります。その状態で「通常の妖怪の三倍」ですので、かけらを装備すると6~7倍説。ていうか通常の妖怪って何。

 若者の物語であった『犬夜叉』での彼は、「不良少年グループを率いる可愛いワル』でした。しかし『夜叉姫』は親子の物語でもあり、鋼牙アニキは親世代に属するキャラです。コミカライズではどう解釈するか考えた結果、「お堅い仕事についてなくていつまでも子供っぽく、大人たちにはあまり良く思われてないけど、親類の子供には慕われる叔父さん」といったイメージに(笑)。

「もろはちゃんの散魂鉄爪を軽くあしらいつつ懐かしがる」という登場シーンを描きたくて、ずっと楽しみにしてました。漫画にそういうのがあるのかはわかりませんが、「こんな可愛い仔犬を」「腹いっぱい生肉食わせてやる」はたぶん彼のアドリブです。

 弥勒法師さまはアニメ準拠の長髪で登場し、戦いに備えて珊瑚ちゃんに散髪してもらって『犬夜叉』の頃の姿に戻るということにさせてもらいました。夫婦としての二人の暮らしも演出できて、ファンに喜んでもらえるいいアイデアだと思うんですけど、いかがでしょう。ちなみに当時の剃刀を調べて珊瑚ちゃんに使ってもらったものの、あまり見えない構図と芝居になっちゃったのが惜しい。


 今回は『MAO』の式神・乙弥くんがカメオ出演。衣装は彼の本体の人形に合わせました。あれ、たぶん博多人形だと思うんですが、実は博多人形のスタイルができあがったのは『夜叉姫』の時代の30年ほどあとになります。なので本当はちょっとフライング。

 「邪見さまにいつになく妙に行き届いた指示を出す殺生丸さま」は、原作とちょっと違う『異伝』時空キャラとして攻める最初の一手です。ビビって中途半端になるのが一番良くないと思うので、物語が進むにつれてかなり踏み込んだ描写もしていくつもり・・・もちろん高橋先生に相談しながらですけどね。もうめっちゃ相談しますけど(笑)。

 シャーロキアンとしていろんな人の描くホームズを楽しんでる私としては、このコミカライズ版を『犬夜叉』のパスティーシュ作品として描いているし、そのように読んで欲しいと思ってます。高橋留美子先生に「ちゃんと殺生丸っぽいよw」って言ってもらってもそれは「許容範囲」ってことであって、「先生がご自分で描くとしたらどうなるか」は別の話ですしね。私は高橋先生のオーケーが出る範囲で私の殺生丸さまを描くしかないので、読者のみなさんは「自分にとってもかなりちゃんと殺生丸さまです!」「椎名殺生丸は自分の殺生丸とはぜんぜん違う」などと楽しんでくださいませ。イヌヤシャーロキアンとして。

 

 虹色真珠は「とある原因によって妖怪の体内に<核>が生じ、時間をかけて妖力で磨かれてできる」としました。真珠だし。ついでにアニメよりちょっと数を減らすかも・・・ほら、虹色っていまの日本では七色ですけど、国や地域によって違うじゃないですか。昔の中国では五色ないし六色だったそうだし。まあ現時点では「姫たちの体内に3個、殺生丸さまが邪見さまに手渡した出所不明のものが1個、計4個登場してる」ことだけ把握しておいてください。

 麒麟丸の部下「四凶」はここで一気に二人を投入。若骨丸くんは「お父さんが武器」ってキャラにアレンジ。アニメでコミカルな悪役だった饕餮(とうてつ)どんは人間体での登場、そこから変身するという設定。アニメほどじっくり尺をとって描く余裕がないので、ダークファンタジー的な味付けで登場場面の少なさを補うという作戦です。ダークったって人間に化けてたってだけなんですが、あんなのが人に紛れてるかもしれないって私はちょっと怖いから。


そしてコミカライズ世界線における凱風師匠の役どころについては次回いよいよ明らかに。アニメ原作見た人はいろいろニヤリとしてもらえるアレンジだと思いますので、次回もお楽しみに!

 

 



単行本第一巻は1/18ごろ発売 :少年サンデーS 2022年/03月号2022/01/14




 あけましておめでとうございます。『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第1巻は1/18ごろ発売です!

 「えー、高橋留美子先生が描いてるんじゃないんだー。ちゃんとるーみっく絵で見たかったなー」という方には申し上げたい。

「先生はいま『MAO』描いてはるでしょ⁉︎」

 まあ、ファンとして私も同感ではあるんですけど(笑)。


 もっと絵柄を寄せることもできたろうとは思います。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、うちの奥さんは元・るーみっくプロのアシスタントで、高橋先生が好きすぎてとうとう先生のとこに就職しちゃったという人なため、その気になれば模写もかなりできるんですよ。


 ただ、そっちに舵を切っちゃうと、絵以外の部分も高橋漫画っぽくすることが重要になっちゃって、私の得意なものや持ち味は二の次になります。「似せて描く」よりも「漫画作品として、自分にできる限り面白くなるよう死力を尽くす」が私の使命だと思うし、もともと限りのある私の才能に縛りを加えちゃうのは作品に対してかえって失礼かなと。


 それと、他人が描いた模写って、そっくりに見えても意外と本人は「あーそこを拾っちゃうの・・?」などと思うものでして、たぶん高橋先生は喜ばないんじゃないかなあ。じっさい「ちゃんと椎名さんの漫画になってるから、安心して読者になれる」って言ってもらってますし。ヘタに似せてたら、「いやそこはそうじゃねえだろ、貸しなさい、もう自分で描くから!」ってことにもなりかね・・・あ、それはそれでアリだったか(笑)。



  あの世界にはたくさんのキャラクターたちが生きていて、なら、高橋先生とは別の語り部がいるというのも本物の歴史のような趣があって面白いと思うのです。私がこのコミカライズを「異伝」「椎名史観」と呼ぶのは、私があの世界に取材に行って、よそ者の私の目で見た戦国御伽草子を描いたというテイストにしたかったからです。司馬遼太郎が取材を元に、史実と大きく矛盾しないように、でも戦国武将を高度経済成長期の企業戦士に見立てるという自分の切り口で『新史太閤記』書いた、みたいな感じ。


 で、私は「それは面白い企画だし是非やりたい」と思ってここまで突っ走ってきたのですが・・・単行本が出る段になって正気に戻って気づいちゃったんですよね・・・「それ、世間ではどのくらいニーズあんの? 売れるの?」って(遅い)。


 ただまあ、私は私が面白いと思って燃えた企画しか描けないわけですから、もうしょうがない。私のコミカライズが刺さる、感性の近い同志諸君が少なからず居られることを祈っております。


『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第1巻は1/18ごろ発売です!

 同志諸君、買ってね‼︎