戦国のメリー・クリスマス :サンデーS 2023/12月号2023/10/28




 打ち合わせで「大人バージョン琥珀と少年翡翠は実質『夜叉姫』オリジナルキャラなんだし、コミカライズでももう少し活躍してもいいんじゃないか」ってことになり、二人を助っ人キャラに追加することに。


 アニメの琥珀お頭は過去を乗り越えた、安定したパーソナリティーを持つ大人でした。他の旧作レギュラーは当時とあまり変わらないのに対し、彼はほぼ別キャラですね。ただし、鼻のそばかすが傷痕に置き換わっているというのがシンボリックに彼の人生を語ってます。コミカライズではそこにスポットを当て、琥珀お頭を「表面は大人として振る舞っているけれど、胸の内では傷を負った少年が凍り付いたまま」なキャラにしたのでした。ちびっこにはちょっと難しい話かもですが、二十数年前から彼らを知ってるおおきなおともだちとしてはそういうのも見たくて(笑)。


 今回は琥珀がもう一度「あのときの小僧」に戻る姿を描くことができました。当初雲母は参加する予定ではなく、琥珀も独楽に乗って登場する予定だったのに、絵を入れる段階で「この場面には雲母も必要だ」という心の声が。表向き「雲母は翡翠を心配してついて来た」ってことになってますが、本当の理由はたぶん、琥珀が少年の心を取り戻したからですね。雲母の背に乗る資格があるのは、少年・少女の心を持った者だけなのです。村長(ムラオサ)としての責任を負い、馬に乗ることを選んだコミカライズの琥珀は、少年時代を封じ込めて置き去りにしていたのでしょう。


 自分が「少年」としてやり直すために、弥勒義兄上に大人の責任を全部押しつけるくだりも気に入ってます。原作には特にそういう描写はなかったはずなのに、私はなぜか、この義兄弟が互いの傷を分かち合っている描写が大好きみたい。センセイあんまり詳しくないんですが、ひょっとして、これがいわゆる推しカプというやつでしょうか。義兄上は己の無力を感じるたびに蘇る、風穴への渇望と憎悪に苦しんでます。出口は「全てを自分で解決しようとせずに仲間を頼る」ではないかと思うので、これは義兄上のためでもあるんじゃなかろうか。


 孤高の大妖怪だったはずの御母堂さまが親切でマメな人になりすぎるのはどうかということで、味方陣営のゲームマスター・阿久留がここで登場。セリフがヒエログリフなのは、存在が高次すぎて人間とは直接コミュニケーションができないという演出ですけど・・よく考えたら古代エジプト人とは普通に会話できますね(笑)。まあとにかく、そんなわけで普段は時代樹さまがエージェントとして活動しているんですが、上司ご本人が現場に来たというのはかなり切迫した状況。御母堂さま的には「阿久留が『黙認してたタイムループ、さすがにそろそろ終わらせるわ』と言うので、殺されずに殺生丸を手伝えそうな奴が欲しかっただけなんだからね!」ってことで。


 コミカライズの翡翠はだいぶ私の芸風のぽんこつキャラになっちゃって、アニメの凜々しい翡翠のファンには申し訳ない。その代わり、せつなは翡翠を「不器用なところがあるけど、けっこう頼れて優しくて可愛いやつ」と思ってて好感触。がんばれ翡翠。


 七宝ちゃんをたくさん描けたのも楽しかったです。「長年犬夜叉の横暴に耐えたおらをなめるな」はあれ、私が考えた台詞という気がしません。例によってキャラのアドリブじゃないですかね。


 アニメでは御母堂さまのところにいた冥道丸は、麒麟丸さま陣営に転属してもらいました。CVは羽多野渉さんで、拙作『絶対可憐チルドレン』では葉とケンの二役を演じていただいてます。ので「当時の宣教師のイメージを混ぜて、ケンみたくインチキな感じでポルトガル語やスペイン語をチャンポンで喋る」とか考えたんですが・・・いまんとこ保留。


 そうそう、紫織さんが長崎まで一緒に行けない理由として、ちょうどこの時期に毛利が九州に侵攻するという史実をからめたのは、ちょこざいな考証だと思うのです。が、「門司が大きな港になったのは近代になってから」「この少し前に北九州はほぼ大友が掌握したのだけど、門司だけポツンと毛利のナワバリになってる理由は」とかめっちゃ説明入れようとして担当に止められました。まあ、担当が止めなかったら高橋留美子先生に止められてたと思うのでいいんですけど(笑)。


 次回の舞台は博多、物語はいよいよ是露さまとの決戦に突入します。お楽しみに!


アコレード(叙勲式) :サンデーS 2023/11月号2023/09/26




 コミカライズの理玖は「とわの騎士」となりました。殺生丸さまには邪見、とわには理玖・・という解釈ですかね(笑)先日高橋留美子先生が受勲なさったシュバリエ勲章とひっかけたというか。シュバリエ(chevalier)はフランス語で「騎士」という意味なので。でもイギリスのナイトとは別物で、肩に剣を当ててもらう儀式はなかったし「高橋留美子卿」にもなってないとのこと。


 で、その叙勲の儀式を、とわとの絆だけではなく、理玖の再生・自立の通過儀礼として挿入。ロマンチックだし、日本の戦国時代とのギャップや相性のバランス等、悪くない演出だと自分では思います。ただ、担当には「読者はこの儀式知らないかも。ていうか私も知りませんでした」って言われて(笑)。ま、あとで何かのおりに「あっ、夜叉姫の漫画で見たやつだ!」ってなるのもええんとちゃいますか。わしら世代のフランス革命に関する知識は、ほぼ『ベルばら』がソースやで。


 理玖の妖怪モードはいかがだったでしょうか。妖怪というのはただ異能を持つだけでなく、根本的に人外のバケモノな部分があるはずで、でもアニメの理玖はお行儀よくそれをあまり表に出さないようにしているのだと思います。大事な人のために隠しておきたかった本性をさらけ出すというのはエロくないですかどうですかセンセイは好物です追い詰められた女性の人外キャラが「見ないで・・!」とか言いながら好きな人の目の前で変身したりするシチュはいいですね(早口)。そして演出記号としては「着物を脱ぐ」というのがすでに「心を開く」「無防備になる」「自分を解放する」などのメタファーなんで、本当ならあのシーンはふんどしが(まだ言ってる)。


 今回もう一つの見せ場は紫織さんの「出ていけ」アンコール。紫織さんが登場すると決まったときからこれをやりたくて、見開きで描けて満足です。いちおうアニメ版での関係を意識して、せつなと連携する流れは作っておきました。そして訓練された『犬夜叉』ファンは「うちのかあちゃんは面食い」で笑ってくれた・・と思うのですがどうか。とうちゃんイケメン妖怪でしたもんね(笑)。


 ワダツミヅチに取り憑いてた亡霊の中には、大獄丸じいちゃんっぽい妖怪の姿も。あれがご老体本人なのか、同族の別個体なのかはご想像にお任せします。ただまあ、仮にご本人だったとしても、もはや生前の自分が何者だったかもさだかでないくらい虚ろな抜け殻で、怨念だけの存在でしょうね。「爺さんの怨霊がまだしつこく紫織をつけ狙っていた」って案もあったのですが、それだと『犬夜叉』で2回もトドメを刺されたのに元気すぎて、百鬼蝙蝠編のラストの余韻に水をさしちゃう。でも「紫織が積み重ねた『犬夜叉』以降の人生」を演出するためには混じってた方がいいだろうということで、モブ妖怪にしれっと混じってカメオ出演してるくらいが丁度いいバランスかなと。


 昔の漫画では「犬笛」がよくネタになってました。調べてみたらコウモリが使う周波数は犬の可聴域よりもさらに高いそうです。指向性の強い音波を当てて泡を発生させたり骨伝導で会話したりとか・・・  まあ、七人隊の銀骨さんがいた世界だし「コウモリは犬に聞こえない音を使うんですゥー」含めて漫画超科学ってことで。


 紫織さんを大胆にアレンジしたしわ寄せが全部海蛇女さんの方に行っちゃって、ひたすら悪役かませ犬に徹してもらった彼女にはなんかすごく申し訳ない。いちおう「海蛇女は地中海がルーツの妖怪で、3姉妹。一匹は退治されて有名な神話の元ネタに。残りの二匹は地元にいづらくなって外洋へ」「アニメ版のワタツノタマヒはだいぶ温厚で、コミカライズのワダツミズチとは姉妹の別個体。インド洋経由で極東まで来たのがどっちかという世界線分岐」って裏設定。



 次回から舞台は九州です。ここで、描いてる私自身も意外なアレンジ・・・琥珀と翡翠が参戦。物語後半の再構成は彼らにも手伝ってもらうことになりました。詳しいことはまたのちほど。次回もお楽しみに!


誤解じゃねえだろw :サンデーS 2023/10月号2023/08/26



 アニメ版の海蛇女には「人間との誤解とすれ違い」というバックストーリーがあったわけですが、先を急ぐコミカライズではレギュラー陣の描写に全振り。海蛇女さんは単なるワルモノとし、「海の怪物との決闘」シーハントものにまとめました。

 私は爬虫類大好きで、あんまり気持ち悪いと思ったことないんですよ。あいつらのキョロッとした目とか超かわいくないですか。しかもウミヘビは丸くて首が太く、危険性はともかく見た目は愛嬌ひとしおです。だもんで、ワダツミズチの髪は海蛇女さんのウミヘビ風から深海魚風に変更しました。深海魚だって見ようによってはかわいいんですけど、シーハントもののモンスターとするなら、ひと目でわかる「獰猛」「人間とは異質な世界に棲息してる」って記号が欲しかったので。おっぱいは丸出しの方が中世の妖怪らしいと思うものの、百足上臈といろいろ被っちゃうのを避けて水着風に。ちなみにとわがオペラグラス使ってたのは、実はアニメのサングラスに対応させた細かすぎる小ネタです。


 高橋留美子先生によると「冥加は犬の大将の一族以外には慈悲も敬意もない」とのことです。原作では鉄砕牙強化のために小さな女の子を斬ることには全く躊躇なかったですもんね。百鬼蝙蝠編を読み返してて(ひでえな、このじーさんww)と思ったので、冒頭シーンは私からのお仕置き(笑)。

 アニメ版の紫織姐さんは「強力な結界で半妖の里を守ってる」という設定でした。けど『犬夜叉』では結界増幅装置の血玉珊瑚を破壊して終わってましたから、例によって調整が要るかなと。新世代に幅広く戦国御伽草子を紹介するのが主眼のアニメに対し、コミカライズ版は「犬夜叉パスティーシュ」というコンセプトです。なので、描いてる漫画家が別人というギャップを埋めるためにも、連続性の強化が必要なのです。
 で、血玉珊瑚を失ったことに言及しつつ、「強力だけど瞬間的なフォースフィールド」ということに。地獄耳と超音波はアニメ設定に準拠、コウモリを使い魔にしている描写は舞台を海上にしたこともあって省略。その代わりと言ってはなんですけど、帯の模様に気づいてくれました?

 出演はかないませんでしたが、紫織のかあちゃんはコミカライズ時空では今も元気にしてます。紫織が退治屋としてバリバリ働く強くて逞しい女性に育ったのは、かあちゃんの教育の賜物なんでしょうね。


 理玖は本当はふんどし姿を描きたかったのです。いや私の趣味ということではなく、戦国時代で海なんだから、考証として正しい衣装はふんどしだろうと。黒澤時代劇で三船敏郎のふんどし姿何度も見たし。しかし担当編集者と嫁に断固拒否され(笑)、上半身だけのもろ肌脱ぎに妥協。ふんどし姿なら「荒くれ者たちに溶け込んでる」感がもっと強調できたのではないかなとは思うんですけど・・・ま、、「シリアスなシーンでしまらないかもな」とも思ったので、やっぱふんどし理玖は見送り(笑)。

 ラストはとわが大ピンチです。物語としては助かるに決まってるんですが、誰がどう助けてどう決着するのか、そこが大事。次回もお楽しみに。


 ところで・・・単行本第5巻の発売に合わせ、ボイスコミック作ってもらいました! コミカライズ世界線のお芝居をしてくださってる三人が超素敵なので、みんな見てね!

https://youtu.be/lHw-KciZ6EA?si=SFpmIdpjJUBFF9FK
https://youtu.be/ygKvDwhUmWA?si=kIvIdJQ8SRveU0kt
https://youtu.be/PUkWrMMN4HA?si=jZSgILFMDJ5c_pUr

 

 


 

西日本編スタート:サンデーS 2023/9月号2023/07/27




 ついに私も新型コロナ陽性になってしまい、高熱で数日寝込んでました。さいわい他の症状は軽くて済んだのですが、ずーっとアトリエに引き籠もってて普通の人よりもぜんぜん感染の機会は少ないはずなので、納得がいかない。まあそんだけ感染力が強いってことなんで、みなさんもできるだけ感染確率を下げるようお気をつけください。


 さて、夜叉姫一行はついに堺に到着、ここからは瀬戸内海を船で旅します。画面に変化が生まれるし、展開も早まるだろうという判断です。じゃあどんな船旅にするのか具体的に考えるうち、「ここで紫織さん出したらどうかな」と。アニメでは半妖の孤児たちを保護する活動をしてましたが、もしお母さんがいまも元気で彼女を勇気づけてて、もし人間社会と折り合いのつく生き方を見つけていたとしたら・・・海辺の村にいたキャラクターだったので、成長後は船で退治屋をしているというのはありそうな話に思えます。というわけで、コミカライズでは半妖の里がなくなった代わりに、新たに〈海の妖怪退治屋・紫織姐さん〉が爆誕。


  紫織は高橋留美子先生的にも思い入れの強いキャラクターだそうで、「この設定は面白いですね」「彼女は犬夜叉との出会いをすごく大事に思ってるので、もろはとどんな会話をするのか楽しみです」等、先生のイメージを刺激することに成功したと思われるリアクションをいただきました・・・嬉しいけどプレッシャーがすごい(笑)。今回のネーム見た高橋先生の中には「海の退治屋になった紫織」がかなりはっきりと浮かんだようで、まだ2ページしか出てないのにセリフや芝居やデザインにめっちゃチェック入りました。「うちは紫織。半妖だよ」は先生の提案してくれたセリフそのままなので、今回も絵は別物ですけど中身は本物であると言えます(笑)。


 アニメ『半妖の夜叉姫』における紫織さんはせつなと関わるキャラクターだったのですが、高橋先生のお言葉通り『犬夜叉』の設定に重きを置くともろはが「恩人の娘」になっちゃうのがちょっと悩ましいところ。それと私の「異伝・絵本草子」時空では、半妖への差別や苦労をあまり描いてません。主人公の3人は両親のことでは寂しい思いをしてきているものの、周囲に愛され受け入れられて育ったという前提から出発しているため、「人外」というよりは「異能力者」の扱いです。そのあたりのバランスをとりながら、アニメ版とはまた違った「先輩お姉さん」像を作ってあげたいと思ってます。



 今回は状況の整理と次回からの展開のための仕込みが中心で、ドラマ的には「船に乗ることになりました」だけですが、その分小ネタもがんばりました。「邪見さまどうして緑なの⁉︎」とか(笑)。紫織の部下は『闘魚の里』の悪役、逆髪の親分にゲスト出演していただきました。発表当時(高橋先生は良家のお嬢様なのに、なぜこんな野蛮なロクデナシも存在感つよつよで描けるのだろう)と舌を巻いた、私の大好きなキャラです。ただまあ本作では「強面だけど根は気のいい人」という役どころなので、このキャラの本当の魅力はぜひ『人魚シリーズ』原作で味わってください。今回のエピソード、表面上は紫織と夜叉姫を中心に展開しますが・・・まあ、そのあたりはまたのちほど。



 ところで、ひと目でピンときた日本史マニアの方もいらっしゃると思いますが、堺の町として描いた風景、あれ実は江戸時代の両国付近を再現した国立歴史民俗博物館のジオラマ がモデルです。なので冒頭の「ここ、本当に戦国時代⁉︎」っていうのは自分ツッコミ。「戦国時代の堺は、江戸時代と見紛うほど栄えてた」ということでご了承ください。船もモデルはお台場・船の科学館に展示されてる江戸時代末期の北前船。ただ、和船は中世にほぼ完成していて、その後大きなイノベーションはなかったそうなので、実際とぜんぜん違うってことはない・・・と思います、たぶん。

 この仕事することになってから取材であちこちの博物館に行ってますけど、「タイムトリップしたかごめちゃんやとわちゃんが見た景色は」などと思いを馳せながらだとホント楽しいので、夏休みのお出かけ先として戦国御伽草子ファンにはおすすめ。このタイミングで江戸東京博物館が休館中なのがちょっと残念ですね。



家族の肖像2:サンデーS 2023/8月号2023/06/25




 コミカライズはここが折り返し地点、前半終了です。夜叉姫たちと両親の再会シーンは高橋留美子先生にも隅沢先生にも好評でした。


 姫たちは両親を探して旅をしているので、普通に考えたら再会するのは終盤なんですが、両親のことを人づての話でしか知らないままでは「何としても会いたい、助けたい」という動機がちょっと弱いように思います。なのでまず面会だけさせて、両親の愛情を知るというのを前半の山場に。対面した感情の昂ぶりを先に描いておけば、救出後には達成感の描写に絞り込むことができますしね。

 それと、是露さまの真の動機を詳らかに言語化するお仕事は、是非ともかごめちゃんにお願いしたく。少女のようなナイーブさで、一歩踏み出すことがかなわなかった犬の大将への恋心を拗らせている・・・それを中学生に指摘されたんじゃ、悪役とはいえさすがに立つ瀬がないと思うのですよ(笑)。そして「抑圧して目を逸らしている感情が、行動の矛盾や暴走を生む」という具体例を、かごめちゃんは見たことがあります。

 ちなみにその奈落は今回めでたくひとコマ描けました。最初はセリフで暗示するだけのつもりだったんですけど、担当に「ここは絵にしないと!」って言われて「あれっ、いいの・・か?」って(笑)。別に誰からも禁止されてないのに、なんとなく自分の中では禁じ手になってたわ。

 

 ママりんちゃんの芝居については連載開始時から「『お母さん』でもあり、『あの少女の未来』でもある」感が欲しくて悩んでました。漫画には能登麻美子さんの声もなければ絵も別物です。なので『犬夜叉』との連続性をアニメよりも強調しないといかんなと思ってて。

 でまあ、例によって高橋留美子先生と犬夜叉マニアの担当編集者に相談し、出た結論が以前描いた「子供っぽさの残る女性」「お姑ご母堂さまと仲良くできる天然嫁」と、今回の「食いしん坊ママ」(笑)。『犬夜叉』では特にそれを強調する描写はなかったと思うんですけど、戦国時代をたくましく生きた女の子っていう雰囲気が出るし、「とにかくしっかり食べなさい」って言うのは昔のお母さんっぽいから。1巻でも食事を絆のシンボルに使ったので、主題としても機能しますね。ただ、ネームでも原稿でも「とわの持ってた『らめーん』とか!」って書いたのに、タイプミスと思われたらしく雑誌では「らーめん」に直されてて、これはだいぶ悔しい。執筆しながら能登さんボイスで「らめーん」って脳内再生してこっそり萌えてたのに(笑)。


 殺生丸さまの「たかが千年」は、ループ設定を決めたときから言わせるつもりだったセリフ。これも妖怪らしさと妻子への愛情を同時に表現できたかなと。彼の心情を描写するときはあんまり人間くさくても良くないし、かといってエキセントリックすぎてもなんか違う。納得できる芝居の落とし所を見つけるのが難しいキャラです。ただ、参加した以上、ビビって踏み込みが浅くなることだけは絶対にやっちゃいけないと私は思ってて、だからNGは覚悟の上で、頭を絞って自分なりの最適解を出し、高橋先生の判断を仰ぎます。つまり最後は丸投げってことなんですが(笑)、さいわい今回もOKいただけました。たったひと言「お前たちのためなら、苦労など何でもない」って言わせようとするだけで、かなりのカロリー。でもだからこそ、そのひと言を発するだけでドラマになるというキャラクターなのだと思います。


 まあどのキャラにも基本的にアニメスタッフと私の解釈のバイアスがかかってて、高橋先生の生み出したオリジナルとは風味が違っちゃうのはもうしょうがないんですけど・・・前回と今回、犬夜叉が是露に向かって切る啖呵の一部は先生の案をそのまま使いました。したがってあそこは、絵は違うけど中身は本家本元、正真正銘の犬夜叉ご本人と言えます(笑)。



 というわけで、来月も普通に執筆するし、まだやっと半分ではありますが、とりあえずは前半パート完走お疲れ様でした。次回からの西日本編、お楽しみに!