コミカライズ『ウルトラマンネクサス』、解禁!!2015/05/18


 コミカライズ『ウルトラマンネクサス』単行本、連載から10年ぶりに発売です!


 ワタシは「絵を描く」ことよりも「シナリオを構成する」ことの方が得意で、アクションやスペクタクル画面の構築には力不足を感じてます。ただその分、見ようと思ってもなかなか全話通して視聴するのはハードルが高いであろう番組の、物語としての最重要ポイントを、可能な限り詰め込んで構成することには全力を尽くしました。大勢のネクサスファンにそこを評価してもらえて、この10年「単行本はまだですか」という声を寄せ続けていただけたことはとても嬉しくて有り難かったです。この本が出せたのは、まずなによりもみなさんの応援のおかげです。10年前の絵は修正を加え出すと全ページ直したくなりますし(笑)、当時の作品を復刻するという意味で、手を加えずにほぼそのまま収録しました。


 連載当時、「四話分の内容を11ページに、物語のツボは押さえて好きなようにまとめる」というのを毎回楽しくやらせていただき、円谷プロからのチェックというのはほとんどありませんでした。届いたシナリオを何度も読み込んで「ここ! ここが大事!」って部分を絞り込み、俳句を作るのに近いノリでページの中にはめ込んでいくと、渋谷プロデューサーからは「そうです! そこ大事です!」って反応をいただけるという、心が通じ合っている感(笑)。

 当時私はいろいろと悩んでて、ちょっと漫画を描く楽しさを見失いかけてたのですよ。そこにこの仕事やらせていただいて、しかも自由にさせてもらえたのは本当に有り難かったです。小学生の頃、好きな映画を勝手にコミカライズしてノートに描いてたことがあったんですが、そんな楽しさ。しかも題材がウルトラマンですからね。「そういやラクガキ帳に何度もウルトラメカや怪獣を描いたっけなあ」的な。いやもちろんマ●ンガーZや仮面ラ●ダーも描いてましたが、ここはウルトラ中心に話をまとめたい

 そんなわけで、話を持って来てくれて、しかも異例のやりたい放題を許してくださった『てれびくん』編集部と円谷プロ、特に渋谷プロデューサーと担当編集者の中門さんに心からお礼を申し上げます。



 書き下ろし部分では連載時よりも多いページ数で、主に最終話Bパートをシリーズ全体の総括として組み立てることになりまして、その際原作にはない部分を多数追加してます。<吉良沢にはそれまでの100ページで拾いきれなかった部分の解説とまとめを徹底的にやってもらい、結果的に他のどのキャラよりも台詞が多い>とか(笑)。最後の「銀色の星のように・・」なんかは主題をはっきり言葉にしちゃってて、本当ならセリフであそこまでストレートに語るべきでないとは思ってます。とはいえ、漫画では言葉を超える分量でドラマを積み重ねられなかったのと、あれは私の『ウルトラマンネクサス』とウルトラシリーズへの万感をこめた言葉でもあり。

 たいていの男の子はヒーローに憧れ、自分も正しく強く優しくありたいと思いながら番組を見ると思うのですよ。でも大人になるとそれを忘れて、現実に負け、幼い頃の理想を裏切る生き方をしてしまうこともあります。でもね、あの頃の少年は今も我々の心の奥にいます。ヒーローというのはただの荒唐無稽なファンタジー、ただのキャラクター商品ではなく、未来に憧れる子供たちの理想なのです。これからも続いていくであろうウルトラマンを見かけたとき、どうかそれを思いだしてほしい。「今の自分は、幼い頃の自分に喜んでもらえる存在だろうか」「弱い者を踏みにじったり、卑怯な行いをしていないだろうか」って考えるきっかけにしてもらいたい。自分が悪や災いではなく、それに立ち向かって優しく力強く善を為そうする存在の側であると信じて疑わなかったことを思い出すための目印。遠く小さいけれど、暗い海を航海する船を導く、夜空の一角に輝く不動の光―――それがワタシの<銀色の星>なのです。


 <変身した孤門が姫矢と憐の思いを受け継いでノアの姿になる>という流れはほぼ原作通り。台詞もそのままですね。が、このあとワタシは溝呂木もちょろっと出して、<二人のウルトラマンの思いに加え、彼の贖罪も引き受ける>という改変を加えました。もちろん原作のダークメフィスト・ツヴァイのエピソードを意識して、そのエッセンスを拾うためです。あれはシリーズ構成中のいわば「島編」的寄り道、独立したエピソードなわけで、ダイジェストには入れようがなかったんですよ。でも溝呂木を通して人間の弱さや葛藤がうまく描かれた名エピソードだとワタシは思うのです。「人間は弱い。だから間違いもおかす。でも苦悩の果てにセカンド・チャンスは必ずある」っていう。あとツヴァイかっこいい
 そこに渋谷プロデューサーが巻末記事のコメントできちんと反応してくださってるのがもうね、嬉しくて(笑)。「ああヤダもう、相変わらずわかってくださってる・・・!!」って思いました(笑)。


 連載パート同様、セラちゃんには「光の意志」を言葉にする巫女的な仕事をしてもらいました。彼女は姫矢の心に棲む幼い亡霊で、そのイノセントさゆえに光の代弁者としてふさわしいかなと。けしてセラちゃん役の田中舞ちゃんが可愛いから個人的に出番を増やしたとかいうことではなく。いや可愛いけれど。最後の見返しページが彼女の写真ってのが編集部もわかってますよね(笑)

 孤門の恋人・リコはこの作品の方向性を代表するキャラだと思います。彼女のエピソードをコミカライズでカットしなかったことは、この仕事の重要な分岐点・・・・いまさらネタバレがどうこうってのもヤボなんですけど、まあ具体的な話は控えましょう(笑)。で、彼女のセリフも追加して、番組が描いていた主題を提示しつつ、ページの都合でワンパンでザギを吹っ飛ばすための最終的な起爆剤に。

 ナイトレイダー隊が事実上壊滅し、隊長がたったひとり出動するというシーンはもう絶対に入れたかったんですが、連載時にはページの都合で詩織隊員が撃たれたのは路上になってたこともあり、やむなくカット。代わりにチェスターδでの登場シーン、「ナイトレイダーはまだここに一人残っているぞ!!にそのエッセンスをこめました。まあ当然なんですけどページの都合多くて、でもそこを構成で調整するのがこの仕事の醍醐味です。

 セリフだけに出てきた「レッドトルーパー」というのは、わかる方にはニヤリとしていただけたかと。番組で準備してたけど出せなかったという、TLT別動ユニットの名前です。本当なら設定画を元にしたメンバーや機体を出したいところでしたが、さすがにそこまでは余裕なくて残念です。
 そしてチラっとですけど、コミカライズでは出せずじまいだった根来さん佐久田さん瑞生ちゃんにも登場してもらえました。三人とも味のあるキャラクターで、しかも瑞生役の宮下ともみさん超可愛くて、出せないのが残念で仕方がなかったのです。
 連載時のレギュラーキャラはほぼ全員、描き下ろしにも登場させることができました。流れの都合上、詩織隊員は一コマだし、石掘隊員は出ませんが、その分この二人はピンナップで力を入れて描かせていただきました。

 キャラクターは役者さんに似せることよりも、漫画キャラであることを優先してデザインしてて、「漫画が先にあって、そのキャラに似た役者さんをキャスティングしたという俺設定」ってのがコンセプト。なのでたとえば吉良沢は劇中の田中伸彦さんとは全然違うスネ夫ヘアーで目つき悪い(笑)。あと10年前のデザインでは副隊長がキツい顔になりすぎてるように思ったので、描き下ろしではお美しい佐藤康恵さんに若干寄せて、表情を微調整してます(笑)。


 ・・・さて、どうもネクサスファンは語り出すと熱くなる傾向があるらしく(笑)、ワタシも放っておくと全コマ解説しかねない勢いなので、この辺にしておきましょう。そういえば当時『宇宙船』という雑誌でもインタビューを受けて、物凄い字数で語りまくってましたっけ。そっちは主にウルトラマンの演出についてだったと記憶してますが。

 あ、そうだ、巻末に唐突に載っている四コマ漫画、あれは出るはずだったけど企画がポシャった某企画本に掲載予定だったもので、10年間お蔵入りしてたのがこのたびやっと日の目をみた原稿・・・・なのに誤植があります(笑)。ここに修正画像を貼っておきますね。場所がどこかはおわかりになると思いますので、当面はセルフで修正よろしくお願いします。増刷かかって直りますように。