ようこそジャ●リパークへ :少年サンデーS 2022年2月号2021/12/27



 姫たちの旅の第一歩は、退治屋の里が舞台です。成長した琥珀くんにスポットライトを当て、彼の目線で『犬夜叉』の物語を振り返ります。

 このコミカライズは「私と読者がとわちゃんと一緒に『犬夜叉』世界を訪問する」という入口から始め、「殺生丸という人物を、新たな登場人物の視点から解き明かす物語」としてアニメを再構築してます。なので、「『犬夜叉』で現場にいた人たちの、それぞれの目線からの証言」は、前日譚の説明であると同時に道しるべ。琥珀お頭の背負う過去もコミカライズではまるっと開示して、複雑な陰影を持つ父・殺生丸さまへの興味を深めてもらった次第です。

 私は琥珀くんを「過酷な世界を生きた、もう一人の草太くん」と解釈してたもんで、コミカライズ時空では親バカになった草太パパに引っ張られ、琥珀お頭もかなり三姫に甘々に(笑)。「成長した彼が、奈落に操られて殺めてしまった父親や仲間の墓前に手を合わせる」「いまもその過去から完全には逃れられないでいる」という描写は絶対に入れたくて、でもそれで物語が暗くなりすぎないように調整。

 原作『犬夜叉』版の雲母ちゃんはフキダシとか使わない子なのですが、アニメ版ではけっこう声出してて、漫画に逆輸入するとだいぶ喋る子な気がするんですよね。コミカライズではどうしようかなーと迷った末、「人間であるかごめから見ると無口だけど、半妖の姫たちの目線で見た雲母は割と喋る」と解釈しました。ついでに猫味を増してみたのですが、「抱き上げるとうにょーんと長い」とか「ベタベタしすぎると顔を肉球で押してつっぱる」とか、あんまり猫にしちゃうと別人(獣?)すぎることが判明したので、この辺が落としどころのように思います・・・・一応描いてはみたという(笑)。

 雲母ちゃんにはあまり大人数は乗れないので、この後の展開の都合もあってお頭には馬をご用意しました。絵にしてみたら、馬に乗ってると大人になった彼の威厳・権威を演出できたので、正解だったと思います。ちなみにあくまでも私の個人的かつ非公式な裏設定なんですが、愛馬の名前は「カグラ」だったりすんじゃないかなーと。

 神楽姐さんのラストシーンはシリーズ屈指の名場面のひとつなので、私はぜひ拾いたくて、でも印象的であるがゆえにそこに踏み込み過ぎると物語のバランスがそっちに振れ過ぎちゃうというジレンマがあり。なので高橋先生と相談の結果、回想はあのとき駆けつけて見守っていた琥珀くんの目線からの小さなカットにとどめるということになりました。逆に言えば、私としてはちらっとでもいいからどうしても、短い生涯を精一杯生きた彼女にふれておきたかったというか。彼女の生き様は、あとで登場するキャラクターたちに重なる部分がありますしね。

 新章の目玉は、アニメ原作では顔見せだけにとどまっていた鋼牙兄者の参戦です。アニメ世界線の延長なら菖蒲(あやめ)ちゃんもいるはずなんですが、残念ながらページの都合により出演は見送り。「鋼牙兄者のいないあいだ群を守っていてお留守番」ということかも。

 前にも書いた通り、凱風(やわらぎ)師匠は立ち位置を少し変更したついでに若返ってもらっての登場です。今回はまだセリフがないですが、次回からは関西弁でしゃべりますのでご期待ください(笑)。


 先月までのエピソードを収録した単行本第一巻は1/18ごろ発売予定です。初版部数は少なめに絞られちゃって、だからたぶん品切れになるんとちゃうかなー・・・なるといいな・・・いや品切れになるということは欲しいのに手に入らないという人が発生するということだから良くはないけど、「ほらあ!! もうちょっと刷るべきだったよね!? 重版急いで!!」と小学館さんにドヤ顔で言えるといいな。ま、電子版もありますので、もし店頭で買えなかった場合は注文・取り寄せに加えてそちらも選択肢としてご検討ください。買ってね。