ついに私も新型コロナ陽性になってしまい、高熱で数日寝込んでました。さいわい他の症状は軽くて済んだのですが、ずーっとアトリエに引き籠もってて普通の人よりもぜんぜん感染の機会は少ないはずなので、納得がいかない。まあそんだけ感染力が強いってことなんで、みなさんもできるだけ感染確率を下げるようお気をつけください。
さて、夜叉姫一行はついに堺に到着、ここからは瀬戸内海を船で旅します。画面に変化が生まれるし、展開も早まるだろうという判断です。じゃあどんな船旅にするのか具体的に考えるうち、「ここで紫織さん出したらどうかな」と。アニメでは半妖の孤児たちを保護する活動をしてましたが、もしお母さんがいまも元気で彼女を勇気づけてて、もし人間社会と折り合いのつく生き方を見つけていたとしたら・・・海辺の村にいたキャラクターだったので、成長後は船で退治屋をしているというのはありそうな話に思えます。というわけで、コミカライズでは半妖の里がなくなった代わりに、新たに〈海の妖怪退治屋・紫織姐さん〉が爆誕。
紫織は高橋留美子先生的にも思い入れの強いキャラクターだそうで、「この設定は面白いですね」「彼女は犬夜叉との出会いをすごく大事に思ってるので、もろはとどんな会話をするのか楽しみです」等、先生のイメージを刺激することに成功したと思われるリアクションをいただきました・・・嬉しいけどプレッシャーがすごい(笑)。今回のネーム見た高橋先生の中には「海の退治屋になった紫織」がかなりはっきりと浮かんだようで、まだ2ページしか出てないのにセリフや芝居やデザインにめっちゃチェック入りました。「うちは紫織。半妖だよ」は先生の提案してくれたセリフそのままなので、今回も絵は別物ですけど中身は本物であると言えます(笑)。
アニメ『半妖の夜叉姫』における紫織さんはせつなと関わるキャラクターだったのですが、高橋先生のお言葉通り『犬夜叉』の設定に重きを置くともろはが「恩人の娘」になっちゃうのがちょっと悩ましいところ。それと私の「異伝・絵本草子」時空では、半妖への差別や苦労をあまり描いてません。主人公の3人は両親のことでは寂しい思いをしてきているものの、周囲に愛され受け入れられて育ったという前提から出発しているため、「人外」というよりは「異能力者」の扱いです。そのあたりのバランスをとりながら、アニメ版とはまた違った「先輩お姉さん」像を作ってあげたいと思ってます。
今回は状況の整理と次回からの展開のための仕込みが中心で、ドラマ的には「船に乗ることになりました」だけですが、その分小ネタもがんばりました。「邪見さまどうして緑なの⁉︎」とか(笑)。紫織の部下は『闘魚の里』の悪役、逆髪の親分にゲスト出演していただきました。発表当時(高橋先生は良家のお嬢様なのに、なぜこんな野蛮なロクデナシも存在感つよつよで描けるのだろう)と舌を巻いた、私の大好きなキャラです。ただまあ本作では「強面だけど根は気のいい人」という役どころなので、このキャラの本当の魅力はぜひ『人魚シリーズ』原作で味わってください。今回のエピソード、表面上は紫織と夜叉姫を中心に展開しますが・・・まあ、そのあたりはまたのちほど。
ところで、ひと目でピンときた日本史マニアの方もいらっしゃると思いますが、堺の町として描いた風景、あれ実は江戸時代の両国付近を再現した国立歴史民俗博物館のジオラマ がモデルです。なので冒頭の「ここ、本当に戦国時代⁉︎」っていうのは自分ツッコミ。「戦国時代の堺は、江戸時代と見紛うほど栄えてた」ということでご了承ください。船もモデルはお台場・船の科学館に展示されてる江戸時代末期の北前船。ただ、和船は中世にほぼ完成していて、その後大きなイノベーションはなかったそうなので、実際とぜんぜん違うってことはない・・・と思います、たぶん。
この仕事することになってから取材であちこちの博物館に行ってますけど、「タイムトリップしたかごめちゃんやとわちゃんが見た景色は」などと思いを馳せながらだとホント楽しいので、夏休みのお出かけ先として戦国御伽草子ファンにはおすすめ。このタイミングで江戸東京博物館が休館中なのがちょっと残念ですね。