コミカライズはここが折り返し地点、前半終了です。夜叉姫たちと両親の再会シーンは高橋留美子先生にも隅沢先生にも好評でした。
姫たちは両親を探して旅をしているので、普通に考えたら再会するのは終盤なんですが、両親のことを人づての話でしか知らないままでは「何としても会いたい、助けたい」という動機がちょっと弱いように思います。なのでまず面会だけさせて、両親の愛情を知るというのを前半の山場に。対面した感情の昂ぶりを先に描いておけば、救出後には達成感の描写に絞り込むことができますしね。
それと、是露さまの真の動機を詳らかに言語化するお仕事は、是非ともかごめちゃんにお願いしたく。少女のようなナイーブさで、一歩踏み出すことがかなわなかった犬の大将への恋心を拗らせている・・・それを中学生に指摘されたんじゃ、悪役とはいえさすがに立つ瀬がないと思うのですよ(笑)。そして「抑圧して目を逸らしている感情が、行動の矛盾や暴走を生む」という具体例を、かごめちゃんは見たことがあります。
ちなみにその奈落は今回めでたくひとコマ描けました。最初はセリフで暗示するだけのつもりだったんですけど、担当に「ここは絵にしないと!」って言われて「あれっ、いいの・・か?」って(笑)。別に誰からも禁止されてないのに、なんとなく自分の中では禁じ手になってたわ。
ママりんちゃんの芝居については連載開始時から「『お母さん』でもあり、『あの少女の未来』でもある」感が欲しくて悩んでました。漫画には能登麻美子さんの声もなければ絵も別物です。なので『犬夜叉』との連続性をアニメよりも強調しないといかんなと思ってて。
でまあ、例によって高橋留美子先生と犬夜叉マニアの担当編集者に相談し、出た結論が以前描いた「子供っぽさの残る女性」「お姑ご母堂さまと仲良くできる天然嫁」と、今回の「食いしん坊ママ」(笑)。『犬夜叉』では特にそれを強調する描写はなかったと思うんですけど、戦国時代をたくましく生きた女の子っていう雰囲気が出るし、「とにかくしっかり食べなさい」って言うのは昔のお母さんっぽいから。1巻でも食事を絆のシンボルに使ったので、主題としても機能しますね。ただ、ネームでも原稿でも「とわの持ってた『らめーん』とか!」って書いたのに、タイプミスと思われたらしく雑誌では「らーめん」に直されてて、これはだいぶ悔しい。執筆しながら能登さんボイスで「らめーん」って脳内再生してこっそり萌えてたのに(笑)。
殺生丸さまの「たかが千年」は、ループ設定を決めたときから言わせるつもりだったセリフ。これも妖怪らしさと妻子への愛情を同時に表現できたかなと。彼の心情を描写するときはあんまり人間くさくても良くないし、かといってエキセントリックすぎてもなんか違う。納得できる芝居の落とし所を見つけるのが難しいキャラです。ただ、参加した以上、ビビって踏み込みが浅くなることだけは絶対にやっちゃいけないと私は思ってて、だからNGは覚悟の上で、頭を絞って自分なりの最適解を出し、高橋先生の判断を仰ぎます。つまり最後は丸投げってことなんですが(笑)、さいわい今回もOKいただけました。たったひと言「お前たちのためなら、苦労など何でもない」って言わせようとするだけで、かなりのカロリー。でもだからこそ、そのひと言を発するだけでドラマになるというキャラクターなのだと思います。
まあどのキャラにも基本的にアニメスタッフと私の解釈のバイアスがかかってて、高橋先生の生み出したオリジナルとは風味が違っちゃうのはもうしょうがないんですけど・・・前回と今回、犬夜叉が是露に向かって切る啖呵の一部は先生の案をそのまま使いました。したがってあそこは、絵は違うけど中身は本家本元、正真正銘の犬夜叉ご本人と言えます(笑)。
というわけで、来月も普通に執筆するし、まだやっと半分ではありますが、とりあえずは前半パート完走お疲れ様でした。次回からの西日本編、お楽しみに!