シャーロッキアンとただのファンとの境界線はどこだろう :週刊少年サンデー11/41号 ― 2011/08/30
NHKで放送したBBC制作『シャーロック』に激ハマリ。シャーロック・ホームズの物語を現代に置き換えたドラマで、「そんな無茶な」と思ってたらこれがもー素敵。
驚いたことにキャラクター像はほぼ原作のまま。ワトソン博士は国連軍に参加してアフガニスタンで負傷した元軍医で、ホームズとは友人の紹介で病院の法医学研究室で出会う。ホームズの第一声は「アフガニスタン? イラク?」
現代のホームズはインターネットやモバイルを駆使しますが、ワトソンに送るメールの内容が原作の電報文そのままだったり、「僕は自分の頭のハードディスクに余計な情報は入れない」とうそぶいたり、喫煙への風当たりが強いので思索の際にはパイプの代わりにニコチンパッチを使ったり。 女性嫌いのホームズがルームシェアするということで彼の知り合いに片っ端から恋人扱いされて閉口するワトソンとか、その負傷が実は肩なのにPTSDのせいで足が麻痺しているとか、ベイカー街221Bが作りは原作そのまんまだけど場所は今のロンドンのベイカー街を意識して都心部だったりとか、原作ファンがニヤニヤする描写の連続。
「ワトソンはただの狂言回し・引き立て役ではなく、その暖かい人柄がホームズにとっての救いになっている」というのが最近の解釈なのですが、それに加えて「ワトソンの心の中にも闇がある。ホームズと一緒に犯罪に惹かれ、戦うことで自分の闇と戦っている」「そのワトソンといることでホームズもまた闇にとらわれずにいられる」というところまで踏み込んでいるシナリオはマジ素晴らしいと感服しました。
謎解きはリライトされているものの、事件も原作を土台にしてあちこちに仕掛けがあって「うまい!」と思わせる作りになってます。そして現代に移植したことで、ワトソンが体験した、危険な世界のエキスパートでありエキセントリックな天才であるホームズとの冒険を、我々もかつてない臨場感で体験できるという。どの事件もどこかユーモラスで非現実的でありながら、大都市に潜む殺人や暴力という禍々しさには妙な迫力と説得力がある・・・・・これはもう、19世紀末から20世紀初頭に読者が味わったテイストに近いのではないでしょうか。
ただひとつ不満は・・・・第1シーズンは三話あるのですが、最終話のラストがものすごいヒキで終わってます。第2シーズンの放送はまだずっと先です。生殺しですよBBCさん(
;∀;)。
さて、『絶対可憐チルドレン』本編は複数のドラマが同時進行中。キャラ多いわー。
ワタシ的にはどの子もそれぞれに陰影や味わいがあるキャラとして愛情を注いで作ってますが、物語の責任者としてはライトを当てるべきときと引っ込める時を冷徹に選ばないといけません。キャラにはドラマの中で果たすべき機能というものがあるので、全員を掘り下げるわけにはいかないのが当然です。元々短編が好きなワタシはプロット至上主義で、その辺は非情にバッサリやってきました。しかしアニメになったとき、脇役にもいい役者さんが大量にキャスティングされて、キャラに対してちょっと甘くなっちゃったというか。そして読者はプロットよりもキャラクターが好きなんですよね。
だからまあ構成もキャラ描写もどっちもがんばります。