もうあれ以上風呂のウンチクは入らないなと思ってカットしましたが(笑)、「風呂敷(ふろしき)」はもともと風呂で使う敷き布だったそうです。本編でも触れたように「浴衣(ゆかた)」は本来は入浴するときに身につける着物。蒸気の直撃でヤケドしないように着た「湯帷子(ゆかたびら)」を、江戸時代になってからは湯上がりに着るようになり、やがて夏のカジュアルウェアに転じていったのだとか・・・現代でいえばキャミソールみたいなもんでしょうか。建物は広島の国史跡万徳院歴史公園に再現された当時の風呂屋がモデル。実際にはもっと狭いです。
実は風呂を自作するネタはアニメの冥王獣の子供・冥福くんのエピソードでやろうと思ってたんですよ。あの甲羅って五右衛門風呂に良さそうだなと(笑)。それが竹千代くんを出すにあたり、アニメそのままの流れだと説明にけっこう手を取られそうだったため、コミカライズ版では冥福くんの設定を一部移植することに。その影響を受け、風呂は湯船ではなく熱源を調達することにしました。いや別に風呂は出さなくてもいいはずなんですが(笑)、前に触れた食事事情同様、「異世界にいる」という実感のため、そして自分の居場所を探すとわちゃんへの問いかけとして、私のコミカライズには必要な描写に思われ。
二つの世界の違いを生活感覚に落とし込み、「どっちで暮らしたいか」をとわちゃんと読者に考えてもらいたいというのがこのエピソードの狙いです。けして姫たちの入浴シーンが描きたかったわけではなく・・・いや描きたかったのは間違いないんですけど(笑)、どのみち各方面に遠慮してちょっと肌の露出は控えめだし・・・いやでも私はもともとそんなにお色気描写がしつこいタイプじゃないと・・・いやいやいや。
真面目な話、たとえばあの時代、平野部の海岸線には広大な遠浅の干潟が多かったはずです。それが江戸時代以降にほぼ全部ごっそり干拓農地にされ、やがてコンクリで固められ、生態系を根こそぎにして、現在我々の知る海岸線になりました。だから『この世界の片隅に』みたいな、大潮の日には海を歩いて湾を渡れちゃうような海岸を描くと、もっとそれらしく、なぜそうしなければならなかったのか、それで失ったものと得たものは何かっていう比較もできたかも。ただ、今の感覚ではそういう海岸の方が希で見慣れないわけで、説明を端折るために今回は省略。
さて、今回は他にも女性の座り方や七つ玉ソロバン等どうでもいい考証を頑張ったわけですが、そんなことよりイヌヤシャーロキアンの皆様が気になるのは弥勒夫妻の家族計画ではないでしょうか。
珊瑚ママの懐妊は私なりに『犬夜叉』と『夜叉姫』の隙間を埋めようとした描写で、あくまでもコミカライズ世界線での出来事ではあるんですが、もし作中の時間経過で赤子が生まれるようなら命名は高橋留美子先生にお願いしてみますね。
まあ弥勒夫妻の第四子が、翡翠くんから十数年経ってからっていうのもちょっと強引かなとは思うものの、「『あれから』のあとも弥勒夫妻は子供はたくさん作ったはずではなかろうか」という犬夜叉史研究者たちの説を、私という歴史作家がそれっぽく自作フィクションに盛り込んだ・・・くらいに思っていただければ。ちなみに「翡翠くんのあと死産や早世が続いた」という説は時代考証としてはそれなりに説得力はありますが、悲しすぎるので私の時空では却下。
群れるのも他人を使うのも嫌いだと思われる殺生丸さまが、いまんとこ理玖くん・りおんちゃんと組んでいるもよう。なるはやでラストシーンにたどりつくため、コミカライズ時空ではキャラの立ち位置はある程度まとめる方向で。アニメ見た人にも、ていうかアニメ見た人ほど「おっ、そう来たか!?」って新鮮に思ってもらえるような仕掛けを考えてますんで、ひきつづきよろしくです。