TVアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』 第八話:超能部隊 後編 -Generation ZERO PARTⅡ-2013/03/02


『THE UNLIMITED 兵部京介』
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 いやあ、すごい回です。原作もかなり自信のあるエピソードなのですが、アニメの出来が本当に素晴らしい。これはもうブルーレイ買うしかないでしょう・・・・ほら欲しくなってきた!! 買ってね!! 

 漫画描いただけの私としては、あのシナリオ・作画・演出・音響には、みなさんと一緒に「おおおおおおおお!!」って言うしかありません。力のあるアニメーターさんの時間・空間把握能力ってあれもう超能力ですよね。素晴らしい仕事、本当にありがとうございました。そしてあんだけ盛り上げといて、ラストでどん底につき落とすというものすごい構成。傑作です。


 父親の形見の懐中時計は、兵部の気持ちが自由になったときに鎖が切れて海に落下。原作でやりそこなったのを補完していただきました。

 ゼロ戦は悪役ではなく、乗り越えるための壁として描いてます。だからパイロットには宣戦布告のあと「翼もエンジンもなしに飛べるだと・・!?」と言わせました。いきさつ上エスパーに腹を立ててはいますけど、根は純真な空の男で、本心では不二子たちが羨ましいんですね。彼もまた、高みを自由に飛び回りたいと願う青年なのです。土壇場で兵部を援護に来るってのは、なかなか愛のある使い方ができたんじゃないでしょうか。


 平野さんの幸福な笑い声のあと、終盤の兵部は遊佐ボイス。十代と今の差がすげえ。来週がまた、そりゃもー素晴らしい芝居を披露してくれるんですが、ホントにキャラクターを可愛がって寄り添ってくれてるなあと思います。もちろんどの役者さんもキャラを読み解いて思い入れてくれてるんですが、その優先度がめっちゃ高いというか、そこに向かって技術を集中してるのがビンビン伝わるというか・・・・・・・・・好き





 さて、早乙女が兵部を撃つ動機は、表層的には「予知を食い止めるため」そして「保身のため」なわけですが、それだけではないだろうなとはずっと思ってました。だってあんな凶行に対して、整然と説明つきすぎるじゃないですか。ざっと説明する分にはそれでいいとしても、当時のエピソードを実際に執筆して肉付けした今となってはもっと掘り下げるべきです。

 で、彼の立場に立ってよーく考えてみたところ、出てきた結論はかなり業が深くて興味深かったんで、執筆用に準備してたんですが・・・・今回『UNLIMITED』でそこを描く必要が出てきたので、原作漫画に先行して投入、使っていただくことに。


 前回も書いたように、早乙女は野心家ではあるけれども悪人ではありません。おそらく貧しいか複雑な家庭環境の出で、飛び抜けて優秀であるにも関わらず、不遇な思いをしてきたのでしょう。「自分の能力はもっと認められるべきだ」と考えていて、社会に理解されない超能力者たちに自分を重ねてもいたはずです。兵部を励まし、力づけた言葉も、本心からだったと思います。

 まだゲテモノ扱いだった超能力に目をつけた先進性と、軍という組織をしたたかに利用する手腕はまさにカミソリ。野心こそが本音であることも自分できちんと把握してますが、それを追求することは国のためでもあり、超能力者たちのためでもあるため、後ろめたいところはありません。

 ところが、敗戦によって彼の人生設計は完全に挫折。これまで積み上げてきた全てが崩れ去ります。軍に取り入ったことが裏目に出て、戦後は良くて公職追放、超能力に関する実績は根こそぎ占領軍に奪われるでしょう。プライドの高い早乙女は、保身よりも自決を考えたのではないでしょうか。そのとき彼自身にも意外なことに、たったひとつ、あきらめきれないものがあることに気づいたのです。

 自分が育てた最高の作品が、手の届かないところへ行ってしまう。誰かのものになってしまう。それを思うときの身を切られるような、焼かれるような、狂おしい痛み。さらに伊・八号の予知では、彼のいなくなった世界でも、「それ」はブイブイ言わせてます。方向はちょっとアレだけど、めっちゃ輝いているわけです。夢破れ、無様に退場する自分とは違い、いつまでも若く美しいまま―――
「あれは…私だけのものだ…!!」


 そんなわけで、射殺シーンは漫画にさきがけてこれまでより踏み込み、ああいう描写になりました。ひじょうに『UNLIMITED』にふさわしい、禍々しくも切ないモチーフではないでしょうか。引き金を引く直前の早乙女の狂気の表情とかたまんねえ、ゾクゾクします。あそこはいずれ自分でも描くわけですが、あれを超えられる自信がないので、あのままやるかどうかはまだ未定(笑)。

 でもまあ、出し惜しみせずこのアイデアを突っ込んだのは、正しい判断だったと思ってます。超能部隊編をここに入れた猪爪さんの意図、原作を活かしつつ新しい物語に昇華していくシリーズ構成の妙についてはまたのちほど。


 次回はいよいよヒノミヤと兵部の対決の続きです。マジでえらいことになってるんで、絶対に見逃さないでくださいね!!